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『シン・エヴァンゲリオン劇場版』について(所感)


公開日から大分経ってしまいましたが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』をようやく観ることが叶いましたので、所感を述べさせていただきます。

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『Q』の上映から一切見直さずに映画館へ足を運びましたが、正直一度でも『序』『破』『Q』を観た人はあえて見直す必要はないと思います。

何故なら、これまでのあらすじを冒頭に放映してくれるからです。細かい設定はさておき、シナリオを思い返すには十分なものでした。

今回の『エヴァンゲリオン』でも、これまでのシリーズ同様、難解だったというレビューが多いようにお見受けしました。

確かに、世界観は相変わらず庵野秀明監督の精神/脳内世界や思想と体現したような世界観や演出や、キリスト教をモチーフにした舞台設定があったりと難解に感じるかもしれません。

しかし、私の所感としては、これまでの『エヴァンゲリオン』の中でもシナリオ自体は最もシンプルな印象を受けました。もっと言えば、シャープでより研ぎ澄まされた感覚でしょうか。エヴァの結末に向けて、より洗練されたシナリオだったと思います。

碇シンジは、第三次アニメブームを象徴するかのような人間像であり、精神的に脆弱で未成熟な存在としてこれまでのシリーズで描かれていました。
アスカに「ガキ」「ガキシンジ」と散々罵られる訳ですが、いつまで経っても子どものままなんですよね。


そんなシンジも28歳になり、社会一般的には当然「大人」として扱われる年齢です。
幾度となく絶望を味わい、罪の意識に苛まれたシンジがようやく「ガキ」から「大人」へと変貌していく──その姿を見ているとカタルシスを得られるのですが、それと同時にある種の「親離れ」を描いていたようにも思います。

これは、『エヴァンゲリオン』として、また「碇シンジ」という主人公にとっての1つの答えだったのではないでしょうか。それをマリというヒロインを用いて表現していたのは見事だったと思います。これ以上はネタバレですね。


メインのシナリオ以外の部分でも素晴らしい点は多々ありました。

一流のアニメスタッフが手掛ける背景美術が大変美しく、山々や田畑といった自然溢れる風景はより一層『エヴァンゲリオン』の世界観に没入させる要素として働いていました。

また、各キャラクターが発する台詞回しも印象的で、『エヴァンゲリオン』が定義する「男性像」「女性像」といったものを感じ取ることができる抜かりない脚本だったと思います。
さらには、旧シリーズを彷彿とさせる台詞もあったりと、本当に『エヴァンゲリオン』は完結するんだなと思わせるものでした。

別れの寂しい気持ちはありますが、本作のような素晴らしい形で『エヴァンゲリオン』に「さよなら」をすることができたのは僥倖でした。
そして、「ありがとう、全てのエヴァンゲリオン」──映画を観た後はそんな気持ちで一杯になりました。


…3時間ということもあり、流石にお尻は痛かったですが。



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