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ペット信託®について思うこと

「ペット信託®」とは

その名の通り 信託を組成して ペットを守るしくみを構築することです。

愛情信託(家族信託とも、民事信託ともいう)の一種であって、銀行など金融機関の商品(商事信託)ではありません。

 ちなみに、「ペット信託®」「家族信託®」は登録商標です。
 私は商標権者の方から許可をいただいております。
 「愛情信託®」「LOVINGTRUST®}は私の登録商標です。

例えば、高齢になった「おひとりさま」のペットの飼い主さんが、「ペット信託」を組成しておけば、自分が亡くなったり、認知症などで施設に入所することになったりしたとしても、その後のペットの世話や看取りのことを心配しなくても良く、安心してペットと暮らせる、ペットを守れる、という仕組みです。

「ペット信託」を組成しておけば、高齢者でも気兼ねなく、子猫や子犬を飼い始めることもできるのですから、飼い主さんより先に今飼っているペットが亡くなって、ペットロスになってしまったらどうしよう、というようなことに怯える必要もないわけです。

これまでペットに癒やされていた高齢者にとって、ペットロスは、寂しさが増幅するだけでなく、それが原因(直接か間接的かは問わず)で認知症に罹患したり、軽い認知症が一気に進んでしまうかもしれないというリスクさえも潜んでいます。
「歳をとったのだから新たにペットが飼えないのは仕方がないこと、あきらめるべきこと」では、人生100年時代の今、済まされない問題だと言えるでしょう。

さて、「ペット信託」はペットの飼い主にとって、そんなに効能があるのならば、ぜひネットで調べて、自分で「ペット信託」とやらを組成してみようじゃないか!
そう考えた方もおられるかもしれませんが、法律の専門家、ベテランの士業の先生でも、信託はよくわからない、信託法を学んでみようと少し齧ってみたけれど、難しくてお手上げだと言われる方が数多くおられます。

ネットに「ペット信託の契約書の雛形」として掲載しておられる、●●書士の先生のページを拝見したことがあります。失礼ながら、これをそのまま真似して、信託契約書を作成してしまうと、危ういこと、この上ないというような内容で、よくまあこのような契約書をアップしているなあと驚いたことがあります。

その上、弁護士法違反、行政書士法違反とならないのかしらと 心配になったりもします。

私は士業向けに愛情信託の講義をこれまで数多く行なってきました。
その中で、LOVINGTRUSTマスターコースという愛情信託を体系的かつ実務的に学習できるコースを開設しているのですが、そのカリキュラムの中で、受講生である、士業の先生方に、このネットで掲載されている(今も掲載されつづけておられるのかどうかは不明です)信託契約書を題材として、何がどのように危ういのかを改正信託法の条文とともに解説させていただいたことがあります。

つまり、これまで一生懸命法律を学んでこられた士業の先生でさえも、こんな間違えた解釈をしがちである、それによるリスクは、こういうところにある、というような反面教師としての題材にさせていただいた訳です。

ペット信託に限らず、愛情信託(民事信託、家族信託)の根拠法となる改正信託法は会社法などとともに英米法的な考え方に則っています
よって、大陸法的考え方である 民法を一生懸命学んだ、まじめで勤勉な専門家ほどその考え方に縛られてしまい、自由で裁量的な、もちろんそれは自己責任を伴うのですが、改正信託法の理解を困難にしているのではないかと思います。

さらに、ネット上の信託契約書を安易にひな形にする ということ自体、個々のご事情に沿った裁量的判断力・考察力を要する信託スキームの設計や信託契約書の作成において 極めて危ういと言わざるを得ません。

話は変わりますが、以前「私はペットを専門にしている士業です」という先生からお話を伺ったことがあります。

「ペット信託を使わずにどのようにして、上述のお客様にご提案をされるのですが?」
「簡単なことです。負担付き遺贈の遺言書の作成をオススメすればいいのです」

私はこの安易な回答に唖然として、重ねて次のように質問しました。

1)遺言書は作成された方(遺言者)が亡くならないと効力が出ない以上、飼い主さんが存命中は何の効力もありません。
  飼い主さんが認知症になり、施設に入所することになった場合に、ペットはどうなるのですか?

2)例えば、飼い主さんが「300万円をAさんにあげるから、遺されたペットのことをお願いね」という趣旨の約束をAさんと存命中にした上で、遺言書にその旨を記して作成したとしましょう。
この場合、飼い主さんが亡くなると、一括で300万円をAさんに渡すことになります。ということはAさんがペットの世話をないがしろにして、ペットにお金をなるべく使わないようにすることができてしまいます。Aさんにしてみれば、既にいただいた300万円です。ペットが早く亡くなってくれれば、残されたお金はAさんのものになるのですから、その時のAさんの経済状況によっては、いただいたお金はなるべく使いたくない、そう考えてしまうこともありえるのではないですか?

その先生は
1)遺言者が死なないと遺言書の効力がでないことは当然のことです。
  存命中のことが気になるのでしたら、任意後見契約で代理権を設定すればいいじゃないですか
 ⇒代理権を設定してペットを飼える という意味合いではないですね。
  ペットの世話をお願いしたいのですから

2)そもそも飼い主さんがAさんを信じるしかないですね
  もし、Aさんが使い込みとかしているのでしたら、親族等が訴訟すればいいじゃないですか。

 ⇒ 訴訟して判決が出るまで相当な時間を要しますが、その間大切なペットはどうなるのでしょう?

ペット信託だと、飼い主さんが存命中に、飼い主さん自身がペットの世話を見れなくなっても、その代わりを務めてくれる仕組みを予め作っておくものです。
そして、その変わりを務めてくれる人(Aさん)には、ペットを世話をするために必要な食費や医療費、美容費等の費用とその方への毎月の報酬を渡すことができます。

もし、Aさんが、ペットの世話を当初お願いした通りに行なってくれない場合は、Aさんとの契約は終了させて、別のBさんにお願いすることもできます。

これは、飼い主さんが存命中でも、亡くなった後でも同様です。
そう、負担付き遺贈のように、飼い主さんが亡くなって、遺言書により大金を一括してAさんに渡し切りにする必要がないのです。

この仕組みだけでも、ペットを愛し、ペットのことを心配する飼い主さんにとって、実に安全なシステムだと言えますね。

ペット信託は、この一例を見るだけでも、ペットのことをとても愛している方にとって心強いかということが、おわかりいただけたかと思います。

しかし、
見様見真似で、ペット信託の契約書がネット上に掲載されているからといって、その内容を十分に検証することもせずに、雛形と信じ切って 模倣することはオススメしません。

ぜひ、ペット信託に精通した専門家にご相談して下さい。
それは、飼い主さんのためにも、愛するペットのためにも 大切なことだと思うからです。

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