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アイドルのヒエラルキー

「9月8日、何とは言えないのですが空けておいてください!」

ある日、とある女の子のインスタストーリーにそう書いてあった。ひとまず自分のカレンダーに「9月8日 イベント」とだけ入れておく。
彼女とは会ったことがない。
だけども、見たことはあり、ある程度会話も交わしたことがある。
会話というかチャットというか。向こうはぼくの声を知らない。

彼女を知ったのは友人の女の子から、「以前アイドルの研究生をやっていた子が某グループのオーディション受けてて、最終審査まで行っているので配信を見てほしい」と言われたことがきっかけ。

そう、彼女はトップアイドルを目指している女の子。でも残念ながらそのオーディションでは夢はかなわなかった。だから今は普通の女の子。

その子が「何とは言えない」が「予定を空けておいて」といえば「何らかの理由で表舞台に立つ」という意味であることはアイドルが好きでなくてもわかる。ただ、何の舞台かはわからない。なので、「イベント」と入れた。

当日が近くなり、彼女から出演するイベントの内容がいくつか明かされる。イベント自体は朝10時からと、アイドルのイベントとしてはかなり時間が早い。別のアイドルが誕生日ということで、そのイベントに請われて出演することになったようだ。

しかし朝10時は早い・・・

そして検索してもロクに情報がない・・・怪しい・・・
「怪しい」というのは騙される、とかではなくて「ヤバい」に近い感覚。
「ほとんど観客がいない」なのではないか、という「怪しさ」である。

坂道を登った乃木坂46

アイドルが好きな人でなくても、今の日本ではいろんなところでいろんなアイドルが存在していることは知っていると思う。
数年前は「総選挙」でAKB48が日本を席巻していたように、今日本のアイドル業界でトップに立つのは同じ秋元康プロデュースの「乃木坂46」である。

「アイドル」はぼくの趣味の一つなのだけど、それは乃木坂46から始まった。2013年に彼女たちがデビューする寸前でたまたまその存在を知り、その中のメンバーの一人に惹かれて追っかけて行くようになった。

今はトップにいる乃木坂46も、ぼくが追いかけ始めたころはまだまだ知られていないアイドルだった。今しか知らない乃木坂ファンからすれば信じられないだろうけど、山中湖でラジオの公開録音イベントをやって集まったのが数百人とかそんな時代があった。ライブもZepp Tokyoとかでやっていたのだ。まあ、一瞬だったけど。

それが年を追うごとに神宮球場だったり、さいたまスーパーアリーナだったり、東京ドームまで会場が大きくなり、各地のZeppで行われたライブツアーも各地のドーム球場で行われるようになった。

まさにアイドルというヒエラルキーの坂を登ったのだった。
下から上まで登った

そんな乃木坂にはすでに興味がなく、別のアイドルを応援しているのだけれど、やっぱりぼくの中で乃木坂の上り方を無意識に参考にしているところがあって、「このスピードで大丈夫かなあ」と思うところがあった。まだまだヒエラルキーの下のほうにいるというイメージだった。

実は5合目だった立ち位置

そして9月8日が来た。
彼女はお昼前ぐらいに出るらしく、10時にはいかなくて済んだ。

会場はめちゃめちゃ小さいライブハウスだった。
友人の女の子と待ち合わせて中に入ると、目の前にこのような光景が繰り広げられた。

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ほぼほぼ両手で数えられる人数の観客、写真の右端に移っているのは別のアイドルが動画を撮影している。舞台上の子たちに頼まれているのだろう。

いわゆる「ド地下アイドル」の現場だった。ルックスもパフォーマンスもアイドルに達していないアイドルがいっぱいいた。

その後、お目当ての彼女が出てきたが彼女はやはりレベルが違った。請われて今日この日の舞台に立ったけど彼女が立つべき舞台ではなかった。彼女はいずれトップアイドルとして表舞台に出てくるだろう。

そして乃木坂も、ぼくが今応援しているアイドルも、スタートは5合目だったなと感じた時間だった。

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