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【Event】バーチャル北海道旅行「BATTLE OF HOKKAIDO」イベントレポート 北海道と東北地方という名のよく分からない悪夢の世界

 2024年1月18日と19日、VRSNSであるVRChatにてVR蕎麦屋元タナベ氏の手掛けるワールド「BATTLE OF HOKKAIDO」の完成披露旅行イベントが開催された。
同ワールドは先日タナベ氏が訪れた青森と北海道の旅行の様子を再現したものという触れ込みである。
本記事ではこのワールドに対して出来るだけ公正公平な内容で18日のイベントをレビューしていく。
なおこの記事は後半に行けば行くほど、正気を失う様な内容が続く事になるかもしれない。
だが筆者は正気であるという前提で、是非読み進めて頂きたい。


東京駅から安普請の新幹線で青森へ

 ワールドに降り立つとまず東京駅らしき場所のホームに降り立つ事になる。
駅舎内には旅行客と思われる人々の姿もちらほら見え、ホームには新幹線も止まっている。
アナウンスによるとこれから東北地方に向かうとの話であるが、止まっている新幹線は恐らく見た目からして東海道山陽新幹線である。
東北地方に向かう車両とは見た目が違う上に、なんとドアが「取れてしまう」のである。
タナベ氏曰くドアの開閉アニメーションを設定するのが面倒くさいとの事であったので、無重力状態であるかの様にドアは放り投げる事が可能なシステムとなっている。

 新幹線に乗車した所で乗客が無事に青森に着けるかといえばそうではない。
ホームからの発車と駅への停車に掛かる十数秒間は文字通り殺人的な加速が乗客を襲う。
ここで下手に動いてしまうと取り残されてしまう危険がある為、何とか耐えるしかないのである。
窓の外はおおよそ時速300km以上はゆうに出ているという状態だ。
18日のイベントでは参加者の一人が乗り遅れながらも必死に車両に追いつこうと追跡劇を繰り広げていた。

 そして乗車する事4分、無事に青森駅に到着。
現実では直線距離580kmとされており、ざっと分速170kmの電車に乗車した事になる。
青森駅の階段を登り改札口へ降りると、りんごのオブジェやフォトグラメトリされたねぷたが展示されている。
こういったオブジェクトには説明が添えられており、見た目の迫力もさることながら観光の為の予備知識も得る事ができる。
なおイベント中は青森の名産であるりんごをテーマとしたオリジナルの歌がタナベ氏より流されたが、そのクオリティに参加者一同沈黙は金という諺に徹する事となった。

 改札を出ると目の前にバスが停まっており、参加者はそのバスの背後にある食堂へと案内された。
しかしこの食堂、目で見てわかる大きさで「定休日」という看板が出ていた。
旅行時にしっかりと下調べをした上でタナベ氏が現地を訪れたものの、定休日という事でお店はクローズしていたのである。
だがここで、参加者に実装されている拡張メニューから美味しそうな海鮮丼を呼び出すようアナウンスが行われた。
このホタテといくらの海鮮丼は、別のお店で食べたものをデータとして取り込んでおり、大変美味であったため参加者にも「目で味わってもらいたい」という粋なはからいから生まれたものであるとの事だ。
なお当の参加者からは「夕食をまだ食べていないのにこれを見せられるのは拷問」といった声が挙がっていた。


 その後バスに乗車し一行はフェリーへ乗車する為港に向かう。
その途上で青森方言で「どんず」とは何を意味する言葉かというクイズが出され、そのクイズの回答を予想しバス内の左右列それぞれに乗客は座りなおす事となった。
そこからしばらくして通りすがりの剣士にバスは一刀両断され、不正解の方は哀れフェリー乗り場の駐車場を飛び越す形で海の藻屑となった。
もちろん参加者は無事にフェリー乗り場へとワープ出来る仕組みである。
青函フュリー(実在企業への配慮)の停泊する乗り場では船舶料金の案内も行われており、乗船時間は3時間半程、個室を希望する場合は6,500円と割とリーズナブルな値段で利用可能という説明も行われた。
実際の料金については、企業の公式サイトをご参照頂きたい。


 フェリーに乗り込むと個室や船内の写真が目に飛び込んでくる。
個室に関しては実際に撮影された写真をそれこそホテルの一室の様な豪華さであり、実際に撮影された写真に参加者は驚きの声をあげていた。
後部甲板からは雄大な景色やイルカショーらしき何かを楽しむ事が出来た。
後部甲板からの景色は実際の写真を8K解像度で落とし込んだものとの事で、その迫力はかなりの物である。
その後手違いで格安の大部屋しか予約出来なかったとの事で大部屋でくつろいでいると、フェリーの進行方向に波があり船が揺れる為気をつけて欲しいとのアナウンスが行われた。
その直後、なんとフェリーが「回りだした」のである。それも天地逆になる形の360度一周である。
何を書いているのかわからないと思われる読者の方は安心して頂きたいが、筆者もありのままをお伝えさせて頂くとなぜ船が回るのかがわからないままに参加者は芋洗い状態となった。
しっかり回転した所で船は止まり、無事かどうかはわからないまま函館に到着した。



函館から洞爺湖への大体合ってそうで合ってなさそうな旅

 函館到着後に一行を出迎えたのは、港町というにはあまりに貧相な市街の姿である。
もちろん実際の函館港は栄えているのだが、何故かこちらの函館はバラック小屋の様な建物が並び、参加者は深々と雪が降り積もる道を一直線に通る事になった。
その途上にあるのは、函館のソウルフードとして知られる「ラッキーピエロ」というハンバーガー店の紹介だ。
なんでも函館に大手ハンバーガーチェーン店として知られるマクドナルドが上陸したが、ラッキーピエロのネームバリューと人気の高さにより撤退を余儀なくされたという逸話を持つ店なのだという。
ここでまた謎のアピールソングがタナベ氏から披露されたが、今回はノリの良いラップ調という事もあって参加者からは一定の理解を得られていた。
なお参加者の中にVRChatなどの仮想空間を中心に活動するアーティストもいたというのは、また別の話である。


 ラッキーピエロの背後に建っているのが函館ロープウェイの建物であり、そこからロープウェイに乗って山頂を目指す事となる。
このロープウェイ、構造上の欠陥なのかは不明だが乗り込んだユーザーが上下どちらかを向くと自然に視点が回りだすという天然酔い潰れ製造機となっている。
そしてこのロープウェイは結構な加速度で山頂を目指すという事で、発車後もれなく周囲の参加者も含めその揺れ具合に悲鳴をあげる事になる。
ロープウェイの背後には見事な函館の夜景が見えているのだが、乗っている側としてはそれどころではない。

 そんな強烈なGと吐き気に耐えながら山頂に到着すると、雪降りしきる展望台から夜景を眺める事が出来る。
今回、現地で観光をしたタナベ氏いわく「非常に寒い」との事であった為、ここでしばらく立っていると視界が暗く狭まってくる。
この状態になったら屋内に退避しないとダメージを受けるというなんとも不意打ちなサイバイバル仕様となっており、屋内に入ればこの異常からは回復する事が出来る。

 その後展望台から函館市街に帰るのだが、その帰り方が独特極まりなく展望台からジップラインを滑走しタイミングよくジャンプしながら、最終的にラーメンスープの中にダイビングするというよく分からないものである。
更にそこから入った先にはバウンドする寿司とバスケットゴールを備えたイカがそびえ立つフィールドが展開されており、寿司をゴールに入れるともれなく派手なエフェクトと効果音が出てくるという本当によく分からない場所となっている。
そろそろ読者の皆様方の正気は大丈夫か疑わしくなるが、体感している参加者も一様に混乱するという集団幻覚の様な光景であった事は言うまでもないだろう。

 フィールドを後にすると次は函館駅から洞爺湖へと向かう事になる。
函館駅の作りは割と普通に思えるのだが、そこに停まっている車両が牽引しているのはなんと寿司である。
この寿司の様ななにかに乗って移動するらしく、座った参加者を待ち受けていたのはまさかの函館駅出発直後のワープ空間である。
強烈な加速とまばゆい光にしばらく耐えた後に到着したのは、やけに大きな狐が出迎える洞爺湖温泉とそこに鎮座する「旅館 そば湯の里」であった。

龍の伝説と笑ってはいけない洞爺湖温泉宴会

 旅館 そば湯の里は3階建ての施設となっており、2階には露天風呂付きの客室が設けられ、外の絶景を見渡す事が出来る。
1階には和傘の飾られた回廊と、その奥に露天風呂が鎮座している。
ここから見える景色もカメラ撮影されたものらしいが、洞爺湖の霞がかった景色は温泉の旅情を思い起こさせるのにぴったりの解像度となっている。
温泉の壁には洞爺湖にまつわる伝説も記載されており、洞爺湖の守り神である龍神についての知識を深める事も出来る。
ワールド内でも龍神を見れるという話であったが、私含め数名はバグのためかその姿を拝む事は出来なかった。
なおイベント当日は「タナベ氏が食べた夕食はなんであったか」というクイズが出され、不正解であった参加者達は見事温泉から射出され洞爺湖に華麗な満点のダイビングを決める事となる。

 旅館の3階は宴会場となっており、窓の外からは変わらぬ絶景を眺める事が出来る他食事や就寝といったイベントも楽しめる作りとなっている。
そんな中で話題を攫ったのは「笑ってはいけない洞爺湖温泉宴会」とでも第すべきギミックである。
これはスイッチを押した際に正面に立つ一定範囲のユーザーをターゲットとするギミックで、アバターの頭や手の位置を基準とし、一定以上の距離をVRChat上で移動した際に即座に失格となるというシステムだ。
通常は能動的に動かさない限り、そこまで手や頭を大きく動かす事はない。
ただし唯一の例外があるとすれば、それはお笑いなどのネタを見て笑わせられた時である。
そんな訳で次々と舞台上でVRChatによくあるネタが繰り広げられ、またアバターギミックを用いた一発芸も行われた。
リアクションに耐えられなかったユーザーも次々と別室へ脱落させられていく上に、ネタが終わった休憩中にも一切の容赦が無く出演者がスイッチをオンにする等混沌の坩堝と化していた。


 なおその後、就寝の為布団が敷かれたものの消灯スイッチが作動せず、加えて旅館を出た先でも札幌へ移動する為のギミックが働かなかったというおまけが付く事となった。

すすきのと焼肉パーティーと遊覧「屁」行

 この地獄のトンチキ旅行も後少し、北海道グルメといえば皆様は何を思い浮かべられるであろうか。
海鮮丼にお寿司、乳製品にルタオのチーズケーキなども良いだろう。
しかし何と言っても外せないものとして、ジンギスカンを挙げる方もいるのではないだろうか。
そんなジンギスカンを味わえるのがこのワールドの札幌・すすきのエリアである。

 道のど真ん中に4人がけのテーブルが設営され、テーブルの上にはジンギスカンのセットも一式用意されている。
そしてなんとこのジンギスカン、肉を摘んで載せて焼けるのである。
当然焼きすぎるとボソボソと焦げた真っ黒い塊になってしまうので、同行者を生贄に食べさせるもよし、自分で責任を取って食べるもよしである。
更に噴水の出る回転寿司レーンが出る上に、またもやAIを使った自動作曲による割とトンチキな歌、最後には両手足を前に出した上で「屁で空を飛ぶ」ギミックが発動されるなど事ここに至ってもはや常識というものを彼方に投げ捨てる要素が数多く展開された。
これには流石の参加者も正気を失ったのか、屁で飛べば東京まで帰れるというタナベ氏の妄言を真に受けて実際に2分間近く空を飛んで限界を突破しようとするユーザーも現れる始末であった。
筆者もその一人であった事は言うまでもない。既に正気ではなかったのである。

全世界待望のPublic化

 さてこういった混沌がBATTLE OF HOKKAIDOの全てである。
イベント参加中はバグもあったためその全てを見る事は出来なかったが、タナベ氏によって2024年1月21日に無事パブリック化され、案内用のギミックボードも持ち運び可能かつスイッチが整理される形で実装された。
筆者は先程追走してきたが、現状ギミックを稼働させる上でデスクトップ操作だとやや厳しい部分が存在する事以外は問題なく稼働する事が確認出来た。

 ここまで読まれた方は否が応でもこの混沌とした旅程を見てみたくなっただろう。
是非お誘い合わせの上、このカオティックな旅を楽しむ一助としてこの記事をご覧いただきたい。 


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