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【Event】立ち上がれ!天を衝く巨大戦艦 みかさロボ 猿島ワールドアップデート


2024年2月9日、オンラインVRSNSであるVRChat上にて、横須賀市が公開する「SARUSHIMA ISLAND」に大きなアップデートが加わりそれが公開される事となった。
該当ワールドの島の方はアップデートされた様子が見えないだろうが、今回は島ではないコンテンツが追加されたのである。
ワールドを入って島の反対側を向けば、それがなんであるかすぐに分かるだろう。
宙に浮かぶ巨大な人の形をした鉄の塊。
よく見れば船と思わしきパーツが各所にあしらわれている。
吹き出す蒸気、そして胴体中央に見える「みかさ」の文字。

これこそが今回大きなアップデート項目である、戦艦三笠がロボとなった姿の「みかさロボ」である。



戦艦三笠とみかさロボの接点

 2月10日より横須賀美術館で開催されている「日本の巨大ロボット群像」展にてイラストが展示されているこのみかさロボ、最初はイラストから始まった企画であったという。
戦艦三笠をロボットの様に立たせてみたらどうなるのか?というラフ画から始まり、そこから色々と話が詰められていったとの事である。
今回の企画で一番苦戦したのが、何を隠そう「戦艦をそのまま変形させる場合に構造上嘘をつかない」という点であったとは関係者の弁である。

 実際の所、ロボットアニメなどで機体が変形する際にその構造をどれだけ維持したまま変形させるのかというのは、演出や実際の構造と照らし合わせて大なり小なり誇張や足し引きが行われる事が多いのだという。
例えばロボットアニメであるトランスフォーマーシリーズでは、パーツが伸びたり飛び出たり、あるいは構造上不要とされるパーツが捌けたり内部構造と分離したり、とだいぶ現実目線から考えれば無茶な構造をしたりしている。
そこで今回のみかさロボについては、実際に戦艦をどの様に分割すれば現実的なロボットが構築出来るのかという事できちんと分割後の構造をシミュレート。
配管部分等を背中に回し、ボイラーを腰に、船体やや前方をコアとなる胴体とする形で形状を落ち着かせたとの事であった。

 なお今回の造形にあたり、デザインを起こした宮武一貴氏と3D造形モデリング担当者との間でかなり熱い会話が交わされたとの事で、イラストを3Dモデルとして起こすにあたり非常にスムーズかつ現実的な造形でも出来る限り「嘘をつかない」構造として完成させる事が出来たのだという。
戦艦三笠の保存会である「公益財団法人三笠保存会」にもこの話を持っていった所、快く許諾頂いたというのもまた驚きである。


文字通りの巨体と迫力の凄さ

 このみかさロボは全長(高さ)がなんと72.8mという巨大さである。
日本の巨大ロボット群像で展示されているRX-78-2 ガンダムは全長18mであるので、大まかに言えばガンダムを縦に4機積んだ高さである。
機動戦士ガンダムシリーズ内で出てくる大型モビルアーマー「サイコガンダム」が40mほど、機動戦士ガンダムSEEDシリーズに出てくる「デストロイガンダム」ですら56m前後なのでこれらよりもまだまだ頭抜けて大きいサイズである事が分かる。
この巨大なロボットが、SARUSHIMA ISLANDに堂々の実物大スケールで実装されたというのだ。


 ワールド内では飛行可能なユニットを操って、直接足元から操縦桿部分まで上がる事も出来るほかワープボタンやジャンプギミックを駆使して操縦桿の搭載された船首まで上がる事が出来る。
ジャンプギミックを使う際には少々コツがいるものの、慣れれば巨大なみかさロボを眺めながら目的地に到達する事も可能だという。
隠された要素として、操縦桿のある船首に向かうジャンプギミックのある岩場を降りた、一段下の岩場にもジャンプギミックが設置されている。
こちらはみかさロボの心臓部であるボイラーへと直接ジャンプ出来る仕掛けとなっているのだ。


 みかさロボの拘りのポイントの一つとして、ボイラーの駆動音の間隔が挙げられる。
戦艦三笠自体が高齢な事もあり、浮上したVRChat上の猿島に観光客を運ぶために一肌脱いで変形したという格好良さの裏側として、かなり老体に無理をしているという設定が込められている。
そのためボイラーから出てくる蒸気を吐き出す駆動音の間隔は一定しておらず、早まる事もあれば通常のゆったりとした間隔で音と蒸気が発生するのである。
みかさロボ自体は腰にある青く光る未知のエネルギーで浮上しているとのことだが、それでも老骨に鞭打つ勢いで頑張り抜くひたむきさをボイラーの音と煙から感じずにはいられない。

みかさロボ駆動!混沌の猿島サバイバル

 今回の2月9日のお披露目会にはメディア関係者を含め多くの人々が呼ばれる事となり、実際にみかさロボを自由に動かしながら様々なアングルで写真が撮られる事となった。
その巨大さは遠くにあるよりもむしろ近くにあると強く感じられるものであるが、ここまで大きいといくら仮想空間のVR表現といえど「大きすぎて感覚が狂う」バグのような状況となる。
そして猿島展望台広場に接近するみかさロボはあまりに巨大であり、そこに立つ多くの参加者を載せたり突っ込んだりしたのである。
見間違いかと思った読者の皆様の目は正常である。PC版では主要な各所にコライダーの当たり判定が存在するため、胴体や腕部に接触すると文字通り「押し出される」勢いで吹き飛ばされるのだ。
展望台に立っているユーザーも、海岸線に居るユーザーも、ひとえに巨体に押し出され、場合によっては島から落下しリスポーンするという事態となった。

 さて、すでに以前の記事を読まれた人ならば分かるだろうがこの猿島ワールドにはシューティングギミックが存在している。
その上で巨大な当たり判定を持つみかさロボは、特に制限はなく島内を自由に飛ぶことが出来る。
これが合わさるとどういった状況となるのか、改めて賢明な読者諸氏に問いかけ無くとも分かるだろう。
硬派なサバイバルシューティングが一転、巨大で予測が難しい壁がところ狭しと迫ってくるドタバタ系イベントに早変わりである。
実際に取材チームは飛行ギミックを活かした上空からの攻撃方法、またみかさロボに弾き出される各チームなど非常にユニークな状況を見る事が出来た。


 今回のみかさロボについては、先述した「日本の巨大ロボット群像」展とのコラボレーション企画ではあるのだが「出来るだけ長期間ワールドに置いておきたい」とは担当者の弁である。
仮想空間ならではの折角の表現であるならば、できる限り多くの人々に見てもらった上でその価値を定着させるのが一番であろう。
天を衝く巨大ロボットを見上げ、周囲を見て回り、乗り回すという誰もが抱いた「夢」は、VRChatの世界で形となったのだから。

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