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居る日記:8日目〜10日目(北林)

豊岡演劇祭2023のレジデンスの記録です。
後日投稿となってしまいましたが、制作の記録として残します。
まとめてどうぞ。


8日目

朝、作品制作がまったく終わらない気がしながらも、海が見たかつたので竹野の海へ。

バスで浜まで行けるかと思ったけどGoogle mapの表示する時刻表とバス停のものがまったく異なっており、歩いた。
本日も暑い。燃えてしまう。
途中通った神社でお参りをした。松ぼっくりが綺麗に並べられていた。

誰が並べたんだろう


20分ほど歩いて、浜へ辿り着いた。


綺麗だった。いいちこのポスターみたいだと思った。
休日だから混んでるかなと思ったが、ほとんど人はおらず、外国の方々が数人のんびり海で泳いでいて、映画で見たことがあるような気怠くて眩しい夏の景色が目の前に広がっており、ここはどこ...?となった。


透明すぎる


奥に見えるのは猫崎半島
先端には灯台があり見に行きたかったが、山登りが思っていたよりもハードだということで断念


竹野駅


その後香美町へ移動し、青年団プロデュース公演『馬留徳三郎の一日』を見た。
人々の記憶をめぐるコメディだったが、終始ほんの少しだけ悲しくて、様々なことを忘れ記憶を塗り替えていく登場人物たちの気持ちが自分にも少し分かるような気がした。

その後一緒に観劇していた悠加さんと共に岡見公園まで歩いた。
綺麗な景色の崖っぷちにカフェがあり、チーズケーキを食べた。同じカフェに、先ほど舞台に立っていた役者の方々が勢揃いして居て、不思議な感覚になった。


イルカ退治のため、名前が同じという理由で蘇我入鹿を倒した中臣鎌足を祀っていた
カフェの席からの景色


帰り道、明日のWSについての話の流れで悠加さんと身体についての色々な話をし、面白かった。
私は自分の身体が、あまり自分のものという感じがしない。
そりゃあ、この腕も顔も足も、自分なのは確かだけれど、その存在を忘れていることが多い。自分の足よりも、自分の絵の方がよっぽど自分という感じがする。絵を描いている間は身体の存在を忘れているし(それは幸福なことなのかもしれない)、作品を作る感覚は、自分の一部をアメーバみたいに切り離して分裂させる感覚に近いから、自分だ!という感じがするのもしれない。
普段から自分の身体そのものを使って表現をされている悠加さんとお話しなければ、このようなことを考えることもなかったなあ、と思った。


9日目

『”居る”ためのワークショップ』に参加した。
私以外に参加者お二人と、雨林さんと悠加さんの5人で行った。
私はこのワークショップに参加するのは初めてだったが、自分の体が確かにそこに在る感じがして、普段はものすごい勢いで流れていく時間がびよーんと伸びていく感じが面白かった。豊岡に来た時点で、だいぶ私の時間は伸びていたような気もするが、それがよりしっかりと伸ばされた感じがし、地に足が着くような感じがした。

他人と同じ空間にいても、体も心も緩まりすぎて、親戚同士みたいに一緒に居ることができた気がする。本当の親戚同士で集まった時よりも緊張していなかった気さえする。不思議な体験だった。
参加者のお二人のお話も面白かった。
同世代ではない方々と仕事以外の場所で関わって、なんでもない話をしながら共に過ごすというのは、私にとってとても特別な時間だった。ワークショップの内容が、そうすることができる空気を自然とつくっていたのだと思う。

WS後は、夜な夜なホテルで作っていた粘土の立体や、拾ってきた石や、絵を描いた布を家の中に置いてみた。


絵に影はないけど、立体だと影があるという当たり前のことに気がついた



10日目

朝、5時半に起きて円山川へ。
いつもの日置橋の下に布を広げ、川の絵を完成させた。

どうしても川辺で川の絵を描きたかったのだが、毎日暑く日差しに体が耐えられないので、明け方に描こうと思ったのである。
予想通り、早朝は涼しかった。

朝の円山川、涼しい
川の絵


8時を過ぎてくると東から差し込んでくる日差しが強まり、帽子とアームカバーを駆使して頑張ってみたが、耐えられなくなって撤収した。自然の中で描くことは好きだが、この時期は影が全くない場所での制作は大変だ。インドネシアに居た頃、一体私はどうやって壁画制作をしていたんだ...?

その後、展示会場でもう一枚の布に絵を描き始めた。
布をレイヤーにして展示しようと思っていた。
ひとつは川と森、もうひとつはその上を縦横無尽に飛び回る様々な生き物たち。






このあたりから、完成する気がしなくて焦り始める。(焦ることすら遅い)
展示日は明日なのに、まだ真っ白だー!
呆然としていても何も完成しないので、地道にちまちま描き進めた。


夕方、ライトが届いたので並べてみた。
照明の知識に関しては皆無の私だったので不安だったが、雨林さんが良い感じに並べるのを手伝ってくださった。ちょっとした位置の違いや、紙を巻いて光量を調整したりすることで、空間の見え方が全く違うものになって、流石だ!と思った。

暗闇の中での作業、ちょうちょう


古い水筒と動物


かに


雨林さんはご自身の撮影された映像作品の部屋をものすごく素敵に仕上げていて、悠加さんは和室でご近所にお配りするDMに手書きのメッセージを書いてくれていた。私は蔵で白い粘土の生き物たちを並べていて、家の中に3人それぞれが居て、それぞれの作業が進んでいく感じが心地よかった。

夜、ご近所へのポスティング中に大雨が降ってきて、スニーカーが浸水し轟音が響き渡る中、電車の時間が間に合わない悠加さんに向かって「先に行ってください!!!!!」と叫んだのも良い思い出。(間に合ってよかった!)
豪雨の中灯りのない道を進んでいくのは、黒い川の上を歩いているみたいでなかなか怖かった。

ホテルへ着いて、少し寝て、まだ描き終わっていない布の制作を明け方まで進めた。
果たして描き終わるのでしょうか。

とにかく、良い展示になりますように。

つづく



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