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舞台sweetpool(スプステ)感想

sweetpoolが舞台化するというのをTwitterで見たとき、正直「正気か?」と思った。ドラマダやラキドの舞台化は分からんでもない、というか想像はついたのだが、スイプはまじで想像ができなかった。同じブランド作品なら、咎狗やLamentoのほうがアクションもあって世界観やキャラクター造形的にもやりやすそうだとも思った。悩んだ末に1公演だけチケットを取った。2.5次元舞台はここ2年程まったく観賞しておらず、不安を抱えつつに久々に銀河劇場に向かうのであった。という訳で以下通常公演、哲雄√を観劇した感想。

舞台が始まり音楽が流れ、プールの波音が聴こえた瞬間、銀河劇場は駒波学園になったようだった。スイプの音楽は静かで美しいのだが、ぞっとするような不協和音が混じるのがたまらなく好き。日常に浸食していく非日常。あの徐々に不穏さが混じる光景に懐かしさを覚えた。

蓉司はゲームではテキストで読んでいた部分も声に出す必要があるので、寡黙な印象のゲームよりもかなり感情が表に出ており男子高校生らしい。色白で儚くて美しかった。ゲームの蓉司は当時のオニツカさんの絵柄もあり筋肉質なので、圭登くんの蓉司はある意味でリアリティのある蓉司ではないかと思う。Vitaや小説版のビジュアルに近い。

睦は立ち姿がほぼゲームの立ち絵と一緒。語尾も空乃さんに似せていて、再現度高い。明るい普通の男子高校生が段々狂っていく演技に圧巻。哲雄√で蓉司が睦とは最後になる病院でのシーンで交わされる約束は、どのEDでも果たされることはない。つかの間の平和で陽だまりの中にいるような光景は、だからこそ残酷に映った。

善弥はエネルギーを一番使う大変な役どころだったと思うが、道化を演じるときの狂人さと、どうしようもない感情が爆発した際の演技の差が見事だった。姫谷とのシーンは原作もそうだったがどれも好き。ビジュアルも華やかな顔立ちと哲雄よりは細いが筋肉のある体格が、善弥らしかった。

主要キャスト陣以外も解像度高くあの世界観に没頭できる役割を果たしていたように思う。改めて見ると上屋先生が推しカプくっつけようと暗躍するのは面白いよな。目的は全然面白くないが。基本シリアスな舞台だが先生を筆頭に、楽しいアドリブには和まさせられた。

でキャスト全員良いのだが、今回自分が一番感心したのは哲雄。演者の砂川くん今回始めて知ったのだが、哲雄が実在してる…?!と思うほど舞台にいるのは哲雄だった。体格といい、雰囲気や話し方も動きも眼差しも哲雄が現実にいるよう。声はさすがに鳩マンさんほど重低音ではないのだが、息遣いまで、ゲームで聴いていた台詞たちが重なるようだった。あと蓉司を軽々と持ち上げるのもすごい。後ろから蓉司抱くと蓉司がすっぽり隠れる体格、最高。

自分18禁原作の舞台は今回始めて観劇したが、セックスシーンはかなり攻めていてドキマギした。特に蓉司は風呂場のシーンもあり、観ているこちらが動揺するほど喘ぎが色っぽかった。浴槽の水を赤に染める演出、面白い。哲雄とのシーンもダンスを取り入れつつ、直接的な演出や動きもあり大変エロかった。哲雄が強引だけど手つきが優しいのがツボ。体格差も非常に良い。そしてその様子をオペラグラスでガン見している自分、社会的に大丈夫かという思いが一瞬頭をよぎった。一瞬なので自分の欲に忠実にガン見したが。

スイプの物語や世界は一言で表すのが非常に難しく、物語上では一ヶ月にも満たない期間に限られた空間、人物たちのみで展開されるものとなっている。それだけに舞台にどう組み込むのかと不安に感じていたのだが、原作のエピソードをほぼ盛り込み、変に話をぼやかすことも改変されることもなく展開されていたと思う。日常に生きていたはずの少年たちが、たった数週間で得体の知れないものに浸食され狂わされ、人生や自身の存在を歪められ終わりに向かうさまに、初見プレイ時たくさん泣いた。あの物語が2時間半に凝縮されていた。

当初ギクシャクしていた哲雄と蓉司が共に過ごしていくにつれ、いつしか互いに唯一の存在になっていく。交わされる言葉は決して多くはないが、2人の間にあった離れがたく穏やかな空気は悲しくなるほど美しかった。それだけにエンディングの哲雄の語りは優しく響くのに、やるせない虚しさがある。カーテンコールも縋るような迷子の子供のような表情を見せる哲雄に対し、ただただ穏やかに微笑む蓉司の姿が印象的。ゲームでもキラルナイトでも流れる度に何度泣いた分からない、Miracles mayの歌声が優しく耳に残る。

13年前発売のゲームと見て、そんなに前だったのかと時の流れを感じた。とは言っても自分は発売当時は年齢制限があり実際にプレイしたのはその数年後にはなるが。当初軽い気持ちでプレイし、シナリオを進めていくうちにあの世界観の虜となり、周囲の光景が変わるような衝撃を受けた。プレイ後放心状態になり、夕方に時間が空けばキャンパスの屋上に行きぼんやりと夕陽を眺める日がしばらく続いた。そのときの激情を思い出させるような、感情を酷く揺さぶる舞台だった。久々にsweetpoolの世界観に浸ることができて非常に嬉しかった。この舞台を作り上げてくださった方々に感謝を。ありがとうございました。

P.S.
ディレイ配信が3/24(木)まで観れるようなので気になる方は是非。また哲雄視点の小説を読むと、スプステの世界に更に愛おしさが増すのでおすすめ。観劇後思わず読み返した。

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