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過去ジャンルの玩具が出ていると聞いてホラー映画を見に行った

※一応映画『ミーガン』のネタバレを含む感想だが8割くらい爆丸の話

「最近公開されたミーガンというホラー映画に爆丸が出て来ている」

とある平日の夜、そんな話がTwitterのタイムラインに流れてきた。
『ミーガン』っていうと、あれか。
この間の金ロの美女と野獣(実写版)で花江夏樹さんがナレーションしてたCMが流れてたやつか。AIものホラーとかなんとか。その時は「あーはいはいそういうやつね」で流したやつ。

……爆丸が映画に出ている?!

話が逸れるようで恐縮だが、少しだけ私の昔のジャンル遍歴の話をしようと思う。
私のオタク自我は小学生の頃にハマった『ロックマンエグゼ』のアニメ版と中学生の頃にハマった『BLEACH』に基づいている。その2作を中心に私のオタクとしての趣味嗜好が形作られたと言っても過言ではない。
ではこの2作に狂わされてからの高校生の頃に一番ハマっていたのが何かと問われると、どう考えても『爆丸バトルブローラーズ』シリーズなのだ。他にも好きな作品はあった、あったのだが爆丸が好きすぎた。
爆丸は2006年に北米企業のスピンマスターとの共同開発でセガトイズから発売されたバトルホビーである。この時にはそこまで流行らなかったらしい。だがその後北米で激・流行りし、日本に逆輸入される形で再度日本での玩具とアニメ展開が為される形となる。
『バトルブローラーズ』は2010年から第2期『ニューヴェストロイア』が、2011年に第3期『ガンダリアンインベーダーズ』が放送されたのだが、第1期の放送は2006年。『ニューヴェストロイア』が3年ぶりの新作テレビシリーズというちょっと変わった状態だった。私は『ニューヴェストロイア』からハマったので1期はTSUTAYAのレンタルと当時存在していた子供向けのアニメ配信サービスで見た。
爆丸といえばもう一つ欠かせないのが当時コロコロコミックで連載していた漫画『爆TECH!爆丸』である。こちらはアニメとは全く違う世界観と登場人物なのだがこちらも非常に面白い漫画だったのでのめりこんだ。
ともかくドはまりした高校生の私はpixivを見たし当時斜陽になり始めていた個人サイトも見に行ったし自分でも二次創作をしてpixivに投稿したし、少ないお小遣いで爆丸のおもちゃも買った。推しは風見駿とフェニックスだった。『バトルブローラーズ』の4期が日本未放送のまま日本での放送が終わった時は結構本気で荒れた。

私の推し爆丸、ストーム・フェニックス。

『バトルブローラーズ』も『爆テク』も大好きだっただけに、日本での爆丸の玩具展開が『爆テク』シリーズに1本化された時は流石に複雑な気持ちになった。当時はどこでも言わなかった(うっかりネットで言ったら良からぬものを引き付けそうだったので)がもう時効だと思うし自分でもとっくに割り切れているので言う。なお4期は未だに幻のままである。あれから10年も経ってみると4期を諦めたくないのに諦めている自分がいることを自覚してしまいとても寂しい。
最近の爆丸はと言うと、2019年頃には完全新規シリーズとしてタカラトミーを日本パートナーに『バトルプラネット』が玩具・アニメ展開され、最初は追おうとしていた(おもちゃショーの展示やステージイベントに行ったし玩具も買った)のだが私は結局ハマりきれなかった。自分は『バトルブローラーズ』が好き過ぎるのだということを思い知ってしまったのだ。玩具展開大爆死してもアニメ版シリーズがずっとネット配信されてるのは正直めちゃめちゃ羨ましい。配信サービスが充実した現代だから出来ることだ。

そんな感じで公式供給的な意味でも個人的にも苦い思い出もあるが、爆丸の二次創作をしていた人とツイッターで相互になってからそれぞれ違うジャンルになった今でもなんとなく相互でいてくださる人もいるので、爆丸は私の中で「過去ジャンルではあるけど今でも好きだし過度に過去扱いとか黒歴史扱いもしたくない」くらいのポジションにいる。
加えて最初に述べたように小学生の頃のジャンル『ロックマンエグゼ』はSwitch移植版発売に伴いアニメ版全話とコミカライズ全巻無料公開という狂気施策を実施し、中学生の頃の『BLEACH』は千年血戦篇の超絶ハイクオリティかつとてつもなく丁寧なアニメ化が進行している。
小学生の頃のジャンルと中学生の頃のジャンルが同期間に恐ろしく元気いっぱいな状態で復活して新しいグッズとかも出ちゃって、子供の頃好きだったものに社会人になってから自分の稼ぎでお金払うのたーのしー!になる度に、あるいは懐かしのホビーが令和の世に合わせた形で復活するのを見る度に、「でもバトルブローラーズは復活しないんだろうな……多分日本での版権とかわやわやになってるし……」と私は勝手になっていた。これはもう今更どうしようもないので許して欲しい。
ともかく私はこういう遍歴を辿ったオタクなので、「爆丸を映画館のスクリーンで見れる」という話に食い付いた。もうそんな機会は訪れないだろうと思っていた。実は『バトルブローラーズ』は2010年くらいにハリウッド映画化決定の話が出ていたし脚本家決定まではしていた(と記憶している)のだ、当時の爆丸のオタク以外は忘れてそうだけど。

そんなわけで、スクリーンに映る爆丸を見るために『ミーガン』を見に行った。
私はホラー映画というジャンルは割と好きな方だが映画館まで見に行くことはあまりない。
私は映画館という暗く閉ざされた空間の中でホラー映画で怖がりたいのに、ホラー映画は「ホラー」と「面白」が表裏一体すぎるからだ。特に欧米系のホラーは日本人である鑑賞者の私との文化的背景の違いもあるのか「ホラーの総量と面白の総量を比較したら最終的に面白の総量が勝つ」率が高い(個人の感想)気がしてわざわざ映画館まで見に行く気があまり起きないのだ。
なのでこの『ミーガン』も爆丸が出ているという情報がなかったらわざわざ映画館まで見に行くことはなかったと思う。
「リトルマーメイドやスパイダーバースがスクリーンの大半を占めている時期の映画館にわざわざミーガンを見に行く」という選択が正しいのかどうか全然分からないままチケットを取って、見に行った。

実際どうだったかと言うと、『ミーガン』は結構しっかり面白い映画だった。ホラーの文法を使ってSFをやっているように私には見えた。何しろAI搭載ロボットであるミーガンの言動や引き起こすホラー現象のことごとくの理屈が「設定漏れ・コーディング・自己学習の行き過ぎ」とかそんな感じなのである。AI開発で発生したクソデカインシデント。しかも今後起き得る感じなのがなんか嫌で良い。
奇をてらった演出もあるがエンタメホラーとしてしっかり面白かった。『ファイナルコースター』シリーズとか『来る。』などのエンタメホラーが好きな人は多分好きだと思う。PG12だけあってそこまで怖くはなかったしエンタメホラーではあるので、ホラーと面白の総量では面白の総量が勝ってた。

『ミーガン』劇中で爆丸は、玩具会社勤務の主人公・ジェマが自宅に置いている「収集物」(字幕ではこう言ってたが「コレクション」の方が良かったんでは……?)として登場する。
未開封新品のデカ爆丸(競技に使う通常サイズの爆丸の数倍大きい爆丸)だった。青いので水属性だ。あえてなのかたまたまなのかは分からないが火属性じゃないんだ、と思った。

ここで登場した爆丸は厳密には私がハマっていた時期の爆丸のおもちゃではなかったというかむしろバトルプラネットだからかなり新しい方のおもちゃだと思うのだが、その時期の爆丸しかも未開封品となると恐らく本当にプレミア品と化しているので撮影のために本物を出すのはちょっととなると思うのでそれは仕方ないかと感じる。
スピンマスターからの許諾も取ってるんだしやろうと思えば状態の良い中古に外装だけ付ける事も出来なくはないと思うが十年前のおもちゃの状態のいい中古ってアメリカかニュージーランドでそんな簡単に手に入るものなんだろうか、知らんけど。

以下はあくまで高校生の頃に爆丸にハマっていた日本人女オタクとしての受け止め方になるのだが、ここでコレクションの一つが爆丸という時点でジェマは私の目に「メジャージャンルにハマれず上手くメインストリームにも乗れずそれでも自分の好きなこと(仕事を含む)を優先で生きてきた女性」として映ることになった。
開発者として勤務する玩具会社も「ヒット製品は他社にパクられるしハズブロにも勝てない」くらいだったし。まあ結構な大企業だしジェマも技術者としてとんでもなく優秀なのだが。
爆丸はジェマに引き取られてジェマの家にやって来たケイディが、最初に興味を示しながらもコレクションだからと開封を止められ、後のシーンでセラピストの前でケイディに遊ばせるためにジェマがバリバリと開封してしまうおもちゃという形で登場する。
ここで登場するおもちゃがもっとメジャーな、例えばベイブレードとかだったら私は「ジェマは趣味と実益を兼ねてるタイプの人なんだなあ」くらいで済ませていたと思う。実際ジェマが趣味と実益(仕事)を兼ねているタイプであることが他の描写からも匂わされているのでそれが分かればよくはある。
だがここで登場したのが爆丸であることで、「この人もしかしてメインストリームに乗ろうと思えば乗れはするけど本当に好きなものでメインストリームに乗れたことがない……?」という引っ掛かりを私は覚えた。
高校生になってから周りのオタク友達はジャンプを読んでいるのに一人だけコロコロを読んでいるから周りとあまり話が合わないみたいな。コロコロ系の話ができてもイナズマイレブン止まりだけど本当は爆丸の話をしたい、みたいな。
どうしても多数派に合わせられずそれでも好きなものを好きでい続けることを選んだまま大人になった結果好きな物に関われる企業に入社、結果として仕事大好き仕事優先人間になった……という勝手なイメージが、後々のジェマの人物描写と爆丸を所持していた事実から形作られていった。
棚にあった他のおもちゃにもロボット系玩具が見受けられたり大学で作ったロボットを大事に取っておいているのもそうだが、ジェマは本当はもっと一般受けするマスコット系のおもちゃよりゴリゴリに最新技術使ったハイテクおもちゃとか作りたいのではないのだろうか。爆丸だって構造は対象年齢に対してかなり精巧なおもちゃだ。

そのハイテクおもちゃ作りたい欲が上司から求められていた自社おもちゃの廉価版ではなくミーガンの開発に繋がったとも考えられる。
ここまで考えたものの、私が爆丸に対して非常に重たい思い入れを持っているからこの解釈が生まれただけの可能性はある。しかも爆丸は日本国外で大ヒットしたおもちゃだからそもそも私のこの解釈が解釈以前の単なる特大誤読である可能性が否めない。私は爆丸が大ヒットした世界を体感で知らない人間なので。実際爆丸好きなオタクって海外だとどういうポジションなんだ。
10年以上前に家族とアメリカに旅行した時日本で見たことない爆丸のグッズとか買えたし、2年ぐらい前にスピンマスターが爆丸のイベント?か何かをやった時にフィギュアが発売されたので日本よりは全然人気なんだとは思うが……。

2021年に発売されたバトルブローラーズ1期のFunkoのフィギュア。個人輸入して買った。
10年以上前にアメリカに家族旅行した際購入した、ニューヴェストロイアのドッグタグ。ランダムのパックを10個くらい買った。

あのシーンに爆丸を使った理由について、私が読んだ範囲での日本語インタビューでは言及はなかった。
英語版ならどこかで言及あるのだろうか。まだ調べてないから分からない。

一応断っておきたいのは、私のジェマに対する解釈が単なる誤読だったところでそれが気にならないくらいにジェマはとても魅力的なキャラだったということである。現在の私は技術者の端くれでもあるので、作ったものに意味分からん挙動されると肝が冷える気持ちは、あそこまでの事態に遭遇したことはないにせよ分かる。
作ったものが大暴走する中で最後まで姪のために本当によく頑張ったよ……としみじみした。

『ミーガン』のあのシーンでの爆丸の意味について私の解釈が誤読だったとしても爆丸が出てくるから私は映画館まで『ミーガン』を見に行ったのだし、実際『ミーガン』を見て良かったと思っている。生成AIでパニックに近い状態になっているインターネットを肌で知っている上でAIの暴走を描いたこの映画をリアルタイムで見る価値はある。
金曜ロードショーで放送される時はめちゃめちゃ宣伝しようと思う。PG12だし全然いけるはずだ。

以上が爆丸が好きな私の『ミーガン』の感想である。
私が見に行った時はレイトショーでも小さめのスクリーンがほぼ満席といった感じだったのだがこれから夏休み映画に向けて上映回数が少なくなって来ると思うので、早めに見に行って欲しいと思う。


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