韓国の市民団体「正しいメディア市民行動」と、ファクトチェックメディア『トゥルースガーディアン』

こんな記事を読みました。

韓国国民がもう信じていないフェイクニュース、1位は「セウォル号は政府が故意に沈没させた」73%-Chosun online 朝鮮日報 https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/03/17/2023031780135.html

面白そうな調査だなと読み始めたけど、途中から調査対象の「フェイクニュース」の偏りに疑問符が付くように。
「『所得主導成長は二極化緩和に役立つ』(うそ50%・事実24%)」。
これとかどこが「フェイク」なのか意味が分からない。韓国事情に疎いせいかとググってみたら、前政権の文在寅前大統領が掲げてた政策みたいで、おそらく最低賃金大幅引き上げみたいな政策のことを指すのかなと。でも政治家の政策のことを「フェイクニュース」とは普通言わないですよね。アベノミクス批判が活発な昨今でも「アベノミクスは失敗した」と叫ぶ人がいても、「アベノミクスはフェイクニュースだった」と言ってる人はいないし、文章としておかしい。世論調査で「アベノミクスは成功したか、失敗したか」とは聞いても「嘘か事実か」なんて質問はしない。
韓国の「フェイク」の定義がおかしいのか、伝える媒体がおかしいのか(朝鮮日報は保守系新聞)。それとも調査したところがおかしいのか。

 今回の調査はトゥルースガーディアンが韓国世論評判研究所(KOPRA)に依頼し、6日から8日までの3日間、全国18歳以上の成人男女1003人を対象に実施した。

Chosun online 朝鮮日報

質問を作ったのは「トゥルースガーディアン」という団体だそうで。何か名前がそのまま過ぎて逆に怪しく感じてしまう。日本語で調べても何の情報も出ないので、韓国語で調べてみます。

トゥルースガーディアンをハングルにすると、「트루스 가디언」。この言葉でググると情報が出てきますが、どれも今年に入っての最近のものばかり。どうやら最近できた組織のようです。自動翻訳ページではやたら「正しいメディア」という文字とセットになっていて、〈これもしかして「右派メディア」(Right media)の誤訳か?〉とも思ったのですが(英語の自動翻訳では政治右派を意味する「Right」を「正しい」と翻訳する誤訳がままある)、韓国語の翻訳でそれはないよな、とか考えているうちに、「正しいメディア」は「トゥルースガーディアン」を発行する市民団体の名前だとわかりました。『トゥルースガーディアン』は団体名じゃなくて市民団体「正しいメディア」の機関媒体の名前だったようです。

さっきから「正しいメディア」と書いてますが、韓国語の正式名称は「바른언론시민행동」と言うもので、日本語訳は「正しいメディア市民行動」、略して「正しいメディア(바른언론)」になります。さっきから「正しいメディア」とばかり書いてますが、自動翻訳されたものをそのまま使っているだけで正確な日本語翻訳名は分かりません。自動翻訳では「正しいメディア」の他に「正しいマスコミ市民行動」「正しい報道市民行動」「正しい言論市民行動」といった翻訳が混在します。

正しいメディア市民行動とは

正しいメディア市民行動(韓国語:바른언론시민행동)とは、2023年2月24日に結成された、「『偽ニュース』を除外し、誤った情報を正し、健全なマスコミ環境と世論形成を図るための新しい市民社会団体」。初代代表はオ・ジョングン元高麗大学校経済学科教授とキム・ヒョンチョル元イーデイリー代表取締役が共同で務める(イデイリーは2000年設立の韓国の新興メディアで、日本にWowコリアという媒体で翻訳ニュースを提供してるところです。オ・ジョングン氏もコラムが日本語翻訳されてます)。韓国で初めてAIを使ったフェイクニュースアーカイブを導入するとされている。(以上ソース:“AI로 ‘가짜뉴스’ 잡아낸다”...바른언론시민행동 출범 | 서울신문 https://www.seoul.co.kr/news/newsView.php?id=20230221500019)

トゥルースガーディアンとは

トゥルースガーディアン(韓国語:트루스 가디언)とは、市民団体「正しいメディア市民行動」が作ったファクトチェックメディアである。2023年3月15日に立ち上げられた。代表編集者は、元韓国日報記者で2015年に韓国国会の広報企画官(韓国語:국회 홍보기획관)を務めたホン・ユンホ(韓国語:홍윤오)(ホン・ユンホ氏のプロフィール。2015年は朴槿恵政権の時代です。任命した韓国国会議長も保守系政党の方。)。(以上ソース:가짜뉴스 잡는 시민단체 바른언론시민행동 22일 출범 | 한국경제 https://www.hankyung.com/society/article/202302209502Y)(『トゥルースガーディアン』のサイトは見つけられず、Webメディアなのか、紙のメディアなのか、調査結果をプレスリリースするだけなのかはよく分かりませんでした。)

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これから日本のメディアでも、この「トゥルースガーディアン」というメディアに基づくニュースが頻繁に聞かれるようになると思います。今はまだ韓国語版のWikipediaやnamuwikiにも解説ページができていない組織やメディアですが、今後尹錫悦政権の下で、かなりの存在感を発揮していきそうな予感がします。

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