「アジェンダを一人歩きさせる」非同期な打合せのしかた

すっかりリモートワークの毎日になって、連日ZoomとHangoutで打合せを重ねていると、対面・同期・対話型のこれまでの打合せがどれだけ「楽をしていたか」を思い知らされる。山ほどの非言語情報を知覚し、手描きの図なんかを見せながら、複数人が食い気味のリズムで議論を行き交わせる……。

それでも今週はけっこううまくいっているのだ。

月曜のヒアリング。先週木曜に送っておいたGoogleDocs版のアジェンダ(質問リスト)に対して、ヒアリング相手のマネージャーさんが、金曜日の段階で6000字も回答を埋めて返してくれていた。この情報量には、感動した。プロジェクト初期段階なので山ほど聞きたいことがあったけれど、この6000字で打合せ前からだいたいのことがクリアになっていて、あいまいなところ/悩むところ/相談が必要なところに絞って議論をすれば済んだ。(それでも90分みっちり議論して答えが出きらないのが序盤の難しさだけれど)

水曜、システム系部署を交えた3部署10人の合同MTG。これも前々日に提示したアジェンダを、先方担当者が前日には投げ返してくれた。こちらは、どの議題も「未定、状況次第」というような回答だったけれど、「どうすれば決定できますか」という点に絞って議論ができ、60分でちゃんと全部結論が出た。(1:1じゃなく三方面以上の協議になると、オンラインMTGの進行難易度は飛躍的に上がる)


冷静に考えると「打合せに際して、事前にアジェンダを送る」なんて当然の話は、リモートであろうがなかろうがやればいいのだ。リモートになると、その威力が倍加するというだけ。特に、送っておくだけ(片道)ではなく、
①送付する
②回答をもらう
③回答を読み込んで論点を絞り込む
という1.5往復のやりとりをしておくと、打合せはめちゃくちゃ捗る。むしろ「会議要らない」みたいな話になる。別プロジェクトのキックオフでも、基本Backlogのやりとりで、混み合う部分は電話すればいいから、基本会議はいらないよねという結論に落ち着いた。


リモートの制約下では、対面での力技に頼れない分、文字と視覚情報による緻密なコミュニケーションの力が、結果を左右する。うちのボスの一人である棚橋弘季さんは『同期型と非同期型』に始まる一連のnoteで、非同期中心の場では《テクストによる言語化スキルが問われる》と説いている。完全に同意だし、これマジで鍛えないときつい仲間が少なからずいるので応援したい。

・同じ場所でではなく、別々の場所で
・同じこと時間にいっしょにではなく、別々の時間に
・ミーティング中心から、ドキュメント中心へ
・会話(話し言葉)ではなく、文字(書き言葉)で
・聞くことから、読むことへ
・意見も判断も、集中ではなく、分散へ
・人が一箇所に集まるのではなく、情報を一箇所に集める
・教習ではなく、学習へ
・同じ1つのプロセスに従うのではなく、同じ目的を達成するのに複数のプロセスから選択できるように
創作物をみずからのアバターとして、バラバラ別々の時空間における非同期のコラボレーションのための媒介として機能させた方が有益

だとすると、たたき台をつくる力とか、わかりやすく書く力とか、読み手の立場に立って配慮する気配りとかが違いを生み出す力になる。まあそれは一朝一夕に身につくものじゃないから、日々の蓄積が必要だと思うのだけれど。

この状況に適応しながら当面過ごすと、その後「対面で普通に話せる環境」に戻っても、コミュニケーションの密度と効率は、高どまりするはずだ。いまはそのための、修行期間ともいえる。

まずは、きっちり数日前にアジェンダを出す(そのためには、さらに早くアジェンダの中身を考えないといけない)、共有スペースに書き込めるスペースを置く、双方が非同期で書き込める環境を用意してその運用ルールを定める、といったところからスタートしてみてはどうか。

アジェンダが一人歩きしてプロジェクトがどんどん前進していくのが、当たり前になっていったらいい。


そして貴重な「同期」の場であるビデオ会議のモデレーションの工夫についても追って書きたいと思います。

🍻