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ふたつの追うべきプロジェクト - 速報 #awwwardsconf Tokyo Day1

東京・イイノホールで開催中のデジタル系カンファレンス Awwwards Conference Tokyo に参加している。初日はふたつ、強く印象に残ったセッションがあった。この出会いだけで十分元は取れた。速報的に紹介したい。

(1) Ueno.のDavid Navarro - "COWBOY"

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"Design Like a Supervillain: An Ode to Chaos and Creativity"(悪役のように思考するデザイン、混沌と創造性への歌)と題したDavidのプレゼンテーションは、マジンガーZを特集したコミカルなもの。黒シャツにスキンヘッドのDavidは見た目も「悪役感」満載だ。

安定・秩序(Order)をもたらす【スーパーヒーロー】に対して、Supervillain【ヴィラン、悪役】はChaos(混沌)そしてCreative(創造)を担う。壮大な野望。次々と繰り出す怪物。負けても負けても復活する、負けるたびに強くなる敵。

そうだ、PMは「秩序」を担うけれど、創造的であるために必要なのは、確かに「混沌」を生み出す思考だった。もちろんバランスが大事なのだけれど、ふだん「秩序」側に頭が寄っているからこそ、意識的にヴィランの思考へと寄せていくことは、価値が大きい。


持ち時間の20分間でDavidが紹介した制作事例はひとつだけ。COWBOYというコネクテッド自転車のプロダクト&サービスデザインのプロジェクトだ。オリジナルの制作事例が登場することは非常に重要だ(いかに重要なメッセージでも、一般論だけだとすごく抽象的になってしまう)。そして、紹介する事例を1つだけに絞ることによって、プレゼンテーションで伝える【原則(Principle)】は一層明瞭になり、印象的になる。Ueno.のサイトに出ているCOWBOYのケーススタディを緻密に読み込めば、復習もできる。

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- Obsession with Purpose : 目的への執着、ミッション、WHYの発見

- Chaos as Play : 遊びとしての混沌

- Tolerate Failure : 失敗を許容する、失敗のたびに成長する

- Think That You Can Win : 勝利への渇望

- Reborn : 蘇生。Design is a learning process.


マジンガーZにおける悪の天才科学者・Drヘル。象徴的なキャラクターとして彼を意識することで、ヴィラン的なマインドセットは日常に顔を出しやすくなる。そして、ひとつひとつの考え方が、デザインのディテールに落ちていくことも腑に落ちる。

最後のスライドに少しだけ出ていたメッセージもよかった。

We need order to live,
We need chaos to feel alive
(生きるためには秩序が必要、生を実感するためには混沌が必要)

コーヒーブレイクタイムにはUeno.チームのStephやVineshにも会えた。Awwwards界隈では「大御所」カンパニーのひとつであるUeno.。ひきつづきプロセスも含めてじっくり追っていきたいと思う。


(2) fantasyのPeter Smart - "Royal Caribbean"

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司会者Peter SmartのハイテンションなMCもめちゃくちゃよかったけれど、プレゼンテーションもいい。彼がFantasy Interactiveの人として話すプレゼンテーションのタイトルは、 "Creating Magic - Products for Humans not Robots"(マジックの創造:機械ではなく人間のためのプロダクト)。"Experience(経験)" =いわゆる"UX"に真っ向から切り込む王道のテーマだ。

彼も取り上げる事例はひとつだけ。Royal Caribbean というクルーズサービスのアプリだ。

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Maximize your experiences(経験価値を最大化する)。クルーズサービスのためのアプリ開発は、まさに多様な顧客接点をすべて内包する統合的なサービスデザインだった。

Peterのアプローチは、変化球というよりも「よく言われるサービスデザインの手法」を、徹底的に、愚直に、はんぱないクオリティで積み重ね続けるというもの。Spreadsheetに連なる膨大な量のユーザーストーリー(下写真)。精度を抑えた(Lo-Fi)画面モックによるプロトタイプ。シームレスな体験をドライブする「モーション」のデザイン、スクリーン単位ではなく「フロー」でつなぐ体験の遷移。ユーザーテスト。デザインシステム。

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これらの積み上げが、Royal Caribbeanの美麗すぎるアプリに結実したことを知るとき、敢えて「お調子者」的なキャラづくりをしているPeter Smartの背景に、泥臭いたくさんの努力が透けて見えるのだ。


ここでも語られるのは、明確なビジョンを掲げ続ける/追い続けることの重要性だ。旗を高く掲げること。

後半でシフトブレイン鈴木慶太郎さんも話していたように、こうした推進力は「個人」のつよいビジョンと、「チーム」で共有された構造としてのビジョンの両軸・バランスが必要になる。

今日のセッションは、比較的「上流」——こまかい制作実務やテクニカルな話というよりも、プロジェクト自体をデザインする上での着眼点に寄った話が多く、期待通りの成果を得られた。


スピーカーの背景、職種、アプローチも多彩で面白い。英語を浴び続けるのは体力を使うけれど、長いブレイクタイムも挟んで10人近くのプレゼンテーションはあっという間だ。Day2も楽しみにしている。

▼Day2はこちら


▼英語版も書きました


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