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SS【傷ついた鳥たち】597字


「お・・・・・・おう、久しぶり。どうだい? 一人暮らしは?」


「ああ、奥さんが出ていって自分に足りないものがよく分かったよ」


「暇さえあれば絵ばっかり描いてた奥さんが君に何を気付かせてくれたんだい?」


「彼女は今まで沢山の絵を描いて、その一部を残していった」


「へえーー、君へのプレゼントかな?」


「まあ、ある意味そうとも言えるかもしれない」


「と言うと?」


「彼女は風景画を描くこともあったけど、残していったのは一見よく分からない変な絵ばかりだったんだ」


「たとえば?」


「古びた井戸から勢いよく噴き出す炎。最初に描いた変な絵だよ」


「井戸から炎? ハハ、変だな。じゃあ中にあるのは水じゃなくて油かい? 他には?」


「翼の片方しかない鳥が、部屋の窓から射し込む光に向かって目を見開いている様子」


「飛べない鳥か。最後に描いた絵は?」


「翼の片方しかない二羽の鳥が、身体を寄せ合い、まるで一羽の鳥のように羽ばたいて空を飛ぶ様子が描かれている。意味不明だろ?」


「つまりこういうことか? ずっと平静を装っていたけど、奥さんの心には不満という名の火柱が立っていた。でも離婚の先にあるのは経済的不安と孤独。そんな時、出会いがあった。彼は離婚していて孤独だった。彼はいつでも奥さんの心の隙間を埋める努力をした。そして二人で力を合わせて飛ぼうと言ってくれた。そんな彼を信じて奥さんは飛び去った」




「そうだよ・・・・・・お前とな!!」


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