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SS【欠点の塔】372字


他人のアラ探しばかりする男がいた。男は天寿をまっとうすると天国の案内人に導かれ、雲にも届きそうな高い塔へとやってきた。

そこは不思議な塔だった。

階層ごとに男が生前、アラ探しをしていた人の姿が部屋の中心に浮かび上がる。

案内人の話では、その浮かび上がった人の欠点を一つ言えば、次の階層への階段が現れると言う。

他人のアラ探しが得意な男は、あっという間に頂上へと辿り着いた。

そこは冷たく乾いた風の吹く、一見何も無いように見える場所だった。

案内人はこう言った。


「あなたはここに他の誰よりも早く到達しました。しかし、もし相手の良い所を言わなければ進めなかったとしたらどうでしたか? おそらく困難を極めたことでしょう」


男は何か思う所があったのかうなだれた。

そして塔の頂上に一輪の白い花が咲いていることに気づくと呟いた。


「俺は今まで何も見ようとしてこなかった」

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