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SS【帰らずの森】547文字


「一度踏みこんだら二度と抜け出せないって聞いてたけど、やはりただの迷信だよな」


「どうしてそう思うの?」


「だって、道なき道をあんなに深くまで進んだのに、簡単に入り口近くまで戻ってこれたじゃないか。うっそうとした不気味な雰囲気と変な噂にびびって損したよ」


「噂って? どんな?」


「大鎌を持った悪い妖精が、森の奥深くまで進入した者の首をハネてしまうっていう噂さ」


「ああ、それね。私も聞いたことあるわ。一度でも立ち止まったら後ろからつけてきた妖精に背後から首をハネられるって噂でしょ?」


「ああ。おれは何度も後ろを確認したけど誰も居なかったぞ。ずっとおれと君だけだった」


「ねえ、よく考えてみて。あなたは彼女と一緒に森に入ってきたけど、こんな危険な場所なのに、ゆっくり歩く彼女をおいて先に進んだ」


「え? いや、でも君はおれの目の届く距離にいたじゃないか。そんなに離れていないだろ?」


「あなたはずっと立ち止まらなかった。でも彼女はあなたの速いペースについていけなくなり立ち止まってしまった」


「そりゃあ小休憩くらいするだろ。ていうか今日は言動が変だぞ」


「私はあなたの彼女ではないわ。私は殺した相手の姿になれるの。首をハネて入れ替わったのよ」


「え?」


「あっ・・・・・・立ち止まるから思わず首ハネちゃったじゃない」


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