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SS【祈り】
最近どうも体調が優れない。
不治の病など昔話で、街を歩けばあちこちに人と見分けのつかないロボットが歩き回る。中には自宅でロボットを操作しリアルタイムで旅を体感する人もいる。
そんな文明の発達した今でも、心の病というやうだけは簡単には解決しない。
特に理由もなく気持ちが沈み、身体も重く感じる時がある。
睡眠はそれなりにとれているのに、まるで寝不足のように目は充血している。
彼女にそれを打ち明けると、彼女はデバイスで何か調べ始めた。
それからぼくを四方八方から眺めて首をかしげた。
ある日、彼女と散歩中に目の前が真っ暗になり意識を失った。
意識が戻り始めると彼女と誰かの会話が聞こえてきた。
「夜はずっと充電して朝には満タンになっているんですけど、一時間もしないうちに電池残量が半分くらいに減っているんです。今日だって朝に二十分ほど散歩しただけなんですけどね。それになんか元気ないんですよ」
「わかりました。とりあえず電池交換と、念のため思考回路に問題が発生していないか調べてみます」
数日後、彼女がぼくにこう言った。
「人間になりたかったんだね。その気持ちが強くなってエラー起こしたんでしょうって言われた。でもね、私は人間が嫌いだからあなたと付き合っているの。あなたが人間になったとしたら私は・・・・・・別れるわ」
ぼくは今日も体調が優れないが、彼女に付き合い神社まで歩いてきた。
ぼくは彼女の機嫌を損ねないようにふるまっている。
回収され廃棄処分なんてまっぴらごめんだからだ。
鈴を鳴らして何かを祈る彼女の横で、ぼくも神様に祈った。
「次こそは人間に生まれ変われますように!!」
終
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