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SS【エラー】


地方の田舎町で清掃の仕事をしながら一人で暮らすサトシ。

生活のために長年身体を酷使してきた。

それもあと五年もすれば解放される。

最近では人型ロボットが階段やトイレまでも掃除するようになった。

ここ数年で多くの仲間が解雇され、代わりに人型掃除ロボットが一体採用された。


ロボットは毎日とてもよく働いた。

不満や愚痴をこぼすこともない。

一服することも仮眠を取ることもない。


そんな誰よりも勤勉なロボットが壊れた。

ある日の昼下がり、ビルの最上階から飛び降りた。


いつもほとんど手を休めることないロボットが、窓拭きをやめて窓の外をずっと眺めていた。

夏の陽射しが照りつける空を眺めていた。

異変を感じたサトシがその様子を見ていると、突然、窓を開けて身を乗り出したのだ。

十四階の高さからコンクリートに叩きつけられたロボットは、修理もできないほどに無惨に壊れた。


最初はみんな悪意のある誰かの犯行を疑ったが、監視カメラの映像に犯人の姿は無く、ロボットに何かしらのエラーが発生したという結論にいたる。


まだ保証期間ということもあり、しばらくして二体目のロボットがやってきた。

ロボットはエラーが発生した時に緊急停止する。

自己修復して再起動するようになっている。

一台目にもその機能は備わっていたはずだが、なぜか機能しなかった。


最上階から飛び降りたロボットの行動を、最初から最後まで見ていたサトシにはこうも思えた。

ロボットが空を眺めていたように見えた時は、何かしらのエラーが発生していて、再起動後にロボットは人間になろうとしたのではないかと。

その方法として、死んで生まれ変わるという選択をしたのかもしれないと。


サトシは一体目のロボットが落下した場所に、小さなアオツメクサの花を一輪供えた。

それから空を眺め、ロボットが身を乗り出した窓の方を見た。


誰かがこちらを見ている。

最近やって来た二体目のロボットだ。


ロボットが窓から身を乗り出すのが見えた。

「やめろーー!」

サトシの声が響き渡る。


ズドーン!! という大きな音とともにロボットの身体はコンクリートへ叩きつけられ砕け散った。

サトシが供えた小さなアオツメクサの花が宙へ舞い上がり、ロボットの胸の上へそっと落ちた。

生きる意味を見失うのは、人間だけではないのかもしれない。

サトシはたった今、厚い雲に隠れた太陽を見ながらそう思った。















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