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SS【ラーメン一家】


彼女とは三ヶ月前に知り合った。

寒さの厳しい師走のある日。

ついに、彼女の家に招待され手料理をごちそうになる。

彼女はマッチョがタイプらしい。

まさにぼくのことだ。


着くとさっそく彼女の両親に挨拶をした。

彼女の家族はみなラーメンが大好きで、毎日のように食べているようだ。

外食はあまりせず、自分たちで作って食べる。

彼女がスープや麺の材料を仕入れてお父さんが調理する。

チャーシューも作っている。


彼女の家に着き玄関を開けると、美味しそうなラーメンスープの匂いが立ちこめていた。

出来るまでの間、ぼくは彼女のお母さんに色々と質問を受けていた。

体重、体脂肪、内臓脂肪、いつもどんなものを食べているか、運動はするか、筋肉はどれくらい発達しているか。

お母さんの質問攻めが済むと、キッチンからお父さんの呼ぶ声が聞こえた。

お母さんは立ち上がり、キッチンへと消えていく。

ぼくはお母さんがメモを一枚落としていったことに気づいた。

何気に拾ったそのメモにはこう書かれていた。


(12月の出汁 蓮 )


「蓮?」

彼女の元カレの名前だ。

彼は確か、行方不明になっている。


キッチンから両親の会話が聞こえてきたので、ぼくは聞き耳を立てた。

「チャーシュー用の肉のストックが少ないな。出汁用のガラも少ない」

「蓮は痩せていたし小柄だったから仕方ないわよ。今回の子はムキムキだし良さそうね。今日の内に加工しちゃいましょ」


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