浪曲 玉川奈々福の「浪花節更紗」「悲願千人斬り」を聴く

昨夜、遠からず取り壊されて消えてしまう上野の古民家「ギャラリーしあん」で玉川奈々福さんの浪曲を聴いた。演目は正岡容「浪花節更紗」と自作の「悲願千人斬の女」でどちらも興味深く聴いた。前者は正岡容の味わいが濃密だった。後者は全四話のより抜きだったが、通しで聴きたかった。

「悲願千人斬り」の主人公で実在の松の門三艸子についても調べてみたくなった。しかし、男性が性欲に任せて千人の女性と関係を結ぶのは金と体力があればやって出来ないことでもないが、女性のそれは難しいのではないか?

吉原の女郎が回しを取るのとは訳が違う。お相手は貧富貴賎を問わずだったとは言え、風雅を心得ぬ男は相手にしなかったそうだ。上は大名から下は幇間までと言うから凄い。一日一人こなしても単純計算で三年かかる。まして女性には月の障りもあるし、この方は出産もされている。

「悲願達成」の折には「関係者」に赤飯を配ったというから粋だ。


ところで。趣味で集めている寄席演芸資料のどこかに「柳家小さん」のことを「芸者みたいな名前だ」と書いてあったのを覚えていた。

小さんの初代は「春風亭小さん(『雁の家小さん』を経て四代目『朝寝坊むらく』)」で幕末の人。小さんの名跡はごく新しいものなのだ。「芸者みたい」と言われたのは「禽語楼小さん」(二代目柳家小さん)のことだろう。芸者よりも知名度は低かった。と言うより芸者「小三」は誰でも知っていたという証だ。

来週にも母校の図書館で関連資料を当たってみよう。ちょっと調べたところでは「妲己のお百」と高杉晋作相手に争ったような節も見られた。いや、楽しみだ。

こんなことをしているのでいつまでも引越しが片付かない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?