「目にした、耳にした芸談あれこれ」パイロット版

前座の頃、一度だけ談志師匠との接点があった。突然楽屋に入ってきて、当然のように座り込んだ。当時、お茶淹れを担当していたので、用意をしなければと思ったが、楽屋入りしている師匠方のお世話で精一杯だった。

正直「なんや、アホ!淹れる暇なんかないんじゃ」と思いながらもお茶を淹れてお出しした。すると談志は「何が入っているか分からないからな」と言って茶を口にしなかった。

思わず「何も入れてません」と言ってしまった。すると暫しの間があって談志が「スマン」と言った。当分の間「談志を謝らせた男」と呼ばれた。

今思うと談志は幹部席が空いていたにも拘わらず、若手真打ちが座る席を選んで座っていた。ちゃんと気を使っていたのだと思う。また、攻めには強いが、攻められると意外に弱いのだなぁとも思った。(笑福亭里光。2011年12月25日「らくごの芽」打ち上げで)

まぁ、芸協の楽屋なので遠慮もあったろう。というか協会の楽屋に入らない辺りに小心さが垣間見られる。落語協会の楽屋や客席にも潜入していたのではあるが。

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