寄席についてのお勉強(その2)

「後悔先に立たず」とはよく言うが、私の場合は「後悔後を絶たず」かもしれない。「幸福の青い鳥」が籠に入って軒先にぶら下がっているのに気がつかない。

一生それに気付かないのであれば、それはそれで幸福なのだが、手遅れになってそれに気付くと落ち込む。気付いた時には青い鳥は焼き鳥になっていたりする。元の姿とは似ても似つかない。食えば美味いのかも知れないが既に焼き鳥を食うだけの食欲が残って居ないことが多い。

ずっと「鶯春亭梅橋」という落語家が気になっていた。古今亭志ん生門下で前座「志ん治」、師匠が満州から帰って来ないので修業にもならず、やむなく正岡容の口利きで古今亭今輔の世話になり「桃源亭花輔」、桂米丸と共に1949年四月に真打に昇進して梅橋になり1955年に結核で死んだ。享年二十九。

興味を持ったきっかけは推理作家の都筑道夫の実兄だったからだ。都筑道夫には高校二年生の頃にはまった。蔵書の中で筒井康隆に次いで量が多い。著書の中で梅橋を知り気に掛けていた。初めて眼鏡を掛けて高座に上がった落語家と言われ、今も演り手がいる新作落語『幽霊タクシー』の作家でもある。

国立国会図書館の蔵書の一部がネットで見られるようになったのは2002年からで私も十年近く利用しているが、これにはインターネット接続環境があれば誰でも閲覧できるものの他に「図書館向けデジタル化資料送信サービス」という指定図書館に足を運べば、言い換えれば国会図書館まで行かずには済むが、近隣の図書館までは足を運べば閲覧できるものもある。もちろん、国会図書館まで行かないと閲覧できない膨大な蔵書もある。

通いやすいところに指定図書館がなかったが、小田原に転居し、昨年十二月に「小田原駅東口図書館」が出来、便利に利用できるようになった。運動のためにもできる限り一日一回通って利用するようになった。

それによりこれまで触れることが出来なかった資料を閲覧できるようになった。ありがたいことではあるが残された時間との兼ね合いでは悩ましい状態でもある。

梅橋を調べてみたら「富士」という雑誌に「この師この弟子」という記事があり「古今亭今輔師と鶯春亭梅橋師」が取上げられていた。

これをきっかけに調べてみると、雑誌「ミステリーマガジン」1980年12月号に「推理作家の出来るまで(56)桃源亭花輔 / 都筑道夫/p148~151」があることが分かった。これは国会図書館まで足を運ばないと閲覧が出来ない資料だ。

だが、都筑道夫の「推理作家の出来るまで」は後に単行本になって、私も持っている。持っていると書いたのは読んでいないからだ。言い訳をすると、この「推理作家の出来るまで」は上下二巻でそれぞれ六百頁近い大部なのだ。

で、上下巻の目次を見たら、関連ありそうな表題が幾つかある。さらに、そうでないものの中にも直感的に「ありそう」なものも少なくない。結局、全部読む必要性を痛感した。少なくとも全部「ちゃんと読む」には二ヶ月はかかるだろう。

初版の2000年に読んでおけば……。後悔が後を絶たない日々を送っている。

実は同時に、同じく興味深い「春風亭笑橋」という女性落語家についても手がかりが出て来てしまい、途方に暮れている。この方、初代「柳亭小痴楽」で知られている春風亭「梅橋」さんと結婚して引退された元「東京あんみつ娘」のメンバーだったんだよな。なんか因縁を感じる。この人についても五、六年ほど前に瀧川鯉昇さんから「ご存命のはずですよ。橘ノ圓が消息をし知っているはず」と伺ったが直後に亡くなられてしまった。「後悔」じゃ済まない私の人生……。

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