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ある夏の静かな夜。
雫石カロナと白河梨々香は行きつけの小さな喫茶店でアイスカフェオレを飲んでいた。
客はほかに誰もいなかった。
店内にはジャズが流れていたが、マスターにジャズ喫茶というほどのこだわりはなかった。
入口のベルが涼やかに鳴った。「まだやってますか?」
ひとりの女がふらふらと入ってきた。
単色のワンピースを着た、色気のある女だった。
髪が乱れ、ずいぶん酔っているようであった。
彼女は席につくなり、吐き出すように話し始めた。
昭和歌謡を思い出させる、切ない物語を。

子供の頃からずっと、カロナは出生の秘密を知りたくてしょうがなかった。でもその秘密を知ると、家族が離れ離れになってしまうような気がしていた。
タロット占いをすると、必ず吊るし人のカードが出るのだった。
意味は「自己犠牲」。
秘密を知ろうとすることをこらえれば、家族はいままでどおり幸せに暮らせるのではないか。
そう考えていた。
しかしある日、家の掃除をしていた彼女は、父の部屋で分厚い日記を発見してしまう。
自分が生まれる前に書かれた日記だった。
彼女は読みたい衝動をこらえることができなかった。
そこには出生の秘密が書かれていて…

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