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ゲームの素晴らしさと思い出のTくん

僕には小学校に親友と呼べる友達がいた。名前はTくんとでもしておこう。小学中学年くらいだろうか明るく陽気な彼は色んな人に好かれていたし僕も彼のことを好いていた。饒舌に喋る典型的な小学生のバカな男子といった彼と仲良くなるにはそう時間はかからなかった。
そしてもう一人仲の良くなった友達のYくん、僕らは自分たちのことを3人組と呼んで特にTくんとはお互いのことを”相棒”と呼んでいた。刑事ドラマやロードショウで見た貧弱な語彙だが僕たちは友情というものの最高の表現をそう感じてお互いのことを呼んだものだ。

さぁタイトルへ戻ろう。唐突だが僕の父親はゲーム関係の人間で多くの作品にかかわってきた。そんな中でよく遊んだのは父が持っていたドラゴンクエストモンスターズとスマッシュブラザーズ。無論その年の男子の典型に漏れずTくんもどうやらそれらのゲームが好きなようだった。
Yくんも好きなようで3人でモンスターを交換したり対戦して遊んだり、素晴らしい思い出だった。

だが、ある日転機が訪れた。
Tくんが父親の転勤の事情で沖縄に行くという話だった。猶予は数か月。とてもショックだったのを覚えている。彼も同じようでYくん含め僕たちは最後の思い出を何か作ろうとしていた。一番僕たちを繋いでくれたモノそれはゲームだった。

どうせなら最後に3人で集まってスマブラXのラスボスを倒すところまで行こうじゃないか!となったのだ。
Xを遊んだ人ならわかると思うが対戦が主なスマブラシリーズではかなり重厚で長いストーリーだ。特にゲームが下手糞な小学生なら特に。
絶対に1人や2人で進めない。3人でやろう。それが”相棒”達のルールだった。彼の沖縄行きが迫る中僕たちはハラハラしながらストーリーを進めた。そして、最後のボス戦につく頃には彼の沖縄行きがもうすぐにまで迫っていた。そして最後のラスボス、難しかった。何回も倒されてコントローラーが小さな手から手へ渡された。そして最後、ヒットポイントがギリギリの瞬間!僕たちは緊張しながら戦った。そして倒したのだ!僕たちは抱き合った。エンドロールが流れXをクリアした人間ならわかると思うがスタッフクレジットを撃ってスコアを出せる。笑いながらそんな遊びに興じる時間が流れる瞬間、何とも言えない哀愁が漂うのを幼心に感じた。

そのあと相棒たちは今はもう取り壊されてしまった僕の庭で写真を撮った。写真の行方はもうわからないが。
別れの瞬間はイマイチ記憶に残っていない、あっさりしたものだった気がする。次の朝遅刻して学校に行って彼がいないことを実感してとても寂しくなった。Yくんも同じ気持ちだったろう。

そして時は流れて数年。東京に彼が戻ってくるらしい!僕は緊張しながら彼と会うことにした。
久しぶりに会った彼はどうも他人行儀って感じだった。
1~2年ぶりだから無理もない、だけど道路をピリピリとした雰囲気で通り過ぎる活動家に手を振って声をかけて彼らもにこやかに挨拶をした。

そんな人を愛する純粋な彼は全く変わっていないし、僕はそんな彼を好きになったのだと思った。昔遊んだゲームの話をするうちに段々と昔の彼を思い出して懐かしい気持ちになった。この年の数年は長く感じるものだ。

その後、特に音沙汰もなく今に続き彼が何をしているのかも知らない。だけど僕は寂しいとは思わなかった。人間というのは変わっていくものだから、彼にも新しい友達ができるだろう。そんな中でたまに、本当にたまにでもいいから僕のように、僕のことをいい思い出として記憶してくれていたら、とても嬉しい。

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