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名前について

「ともこ」は、昭和に生まれた日本人女性によくある名前である。さらに、私の苗字も、よくあるもので、私には同姓同名がたくさんいる。中には有名な人もいて、かなり成功したアーティストの方がいる。そのアーティストと私は、苗字と名前の「ともこ」は同じでも、漢字が違うのだけれど、呼んだだけや、アルファベットで書けば、全く同じである。ずいぶん前アメリカで知り合った人が、私の名前を検索したらしく、その有名アーティストなのかと、後日聞かれたことがあった。また、大阪でも、どこかに電話して名乗ったときに、相手が私がそのアーティストだと思ったらしく、慇懃に挨拶されたりした。

ついでにいえば、私は、よくある顔でもあるらしく、知らない人から、手を振られることは、日常茶飯だ。「ロスアンゼルスに住んでませんでしたか。」とか「ゼロックスで、働いていませんでしたか。」などと聞かれたりする。私は、ロスアンゼルスに住んだり、ゼロックスで働いたりしとことはないので、こう言うことを聞かれれば、「いいえ」と応える。昔のことなので、記憶がはっきりしないけれど、確か、ロスアンゼルスに住んでいた、私に顔が似ている女性は、名前も「ともこ」さんで、あるということだった。

名前も顔も、よくあるというのは、別に良いことでも悪いことでもないし、他の人と、取り違えられるにも、慣れているので、だいたい、何とも思わない。「またか」と言う感じである。

それでも、アメリカに住んで、絵を描くようになり、他のアーティストで「ともこ」さんと言う名前の人と、時々間違われて、とってもいない賞について「おめでとう」とメールが来るようになったとき、流石に「めんどくさいなぁ」と思った。この場合、同じ学校の生徒の「ともこ」さんで、苗字は違うのだが、日本人以外の人は、「ともこ」と言う名前が、英語で言えば「ジェーン」程度の頻度だと知らないから、ファーストネーム(名前を英語で書くと、苗字が後からくる)を見ただけで、私だと思ってしまうらしい。

さらに、『アーティストのためのマーケティング』専門家と無料で話せると言うので、話したことがあったが、そのときにも、同姓同名(アルファベット表記の場合)の成功しているアーティストがいるのは、検索などで上に行くのが難しいので、「問題ですよねー」と言われたりした。

対策として、制作する際の名前を変えるという方法があるけれど、私は、子供のころから、自分の平凡な名前がいやだったのが、やっといつ頃からか、愛着を持てるようになったということがあり、せっかくだから、本名を使いたいと思っている。そういうわけで、ホームページを作ったときにも、自分の名前の入ったドメインを取った。

ところが、このあいだ、また名前について考えさせられる出来事があった。ホームページの、コンタクト欄を通じて、私のことを本で紹介したいというオーストラリア人の作家から、メールが届いたのだ。非常に嬉しいメールではあったけれど、私は、全く無名の駆け出しアーティストなので、どこで私のことを知ったのかが気にかかった。私と同名の、アーティストと間違っているのではないかとメールで返信したところ、やはり、であった。

メールの返信で謝罪されたまでは、よかったけれど、私と同名アーティストに「どうやったら連絡が取れるか知っているか」と聞かれたので、驚いた。私は、そのような質問に答える必要はないと思うので、「有名な人なので、検索してください」と言ったところ、「探したけれど、みつからない。」と言ってきた。

私の名前を、ローマ字で書いてグーグル検索すれば、上がってる来るのは彼女のホームページや紹介である。なぜ、この作家が、国内外で知られたアーティストの連絡先を見つけられないのか、疑問であるが、それは、私の問題ではない。人の時間を無駄にする失礼な人だと思ったので、最後のメールには返事しなかった。

その夜、こういう面倒くさいことが起こるのを避けるため、やっぱり、「名前、変えた方がよいかなー」と少し考えてみた。

思ったのは、名前というのは、私についたラベルであるということ。そして、私が、作品を作って人に見せる場合、作品が主役で、私自身や、まして私についているラベルなど、あまり重要ではない。誰が作ったかと言うのは、家族や親しい友人にとっては、意味があるかもしれないが、それ以外の人には、それほど意味はないはずだ、ということ。

もちろん、アーティストの名前をブランドとする向きはある。けれど、私は自分というブランドを作ろうとしているのか、作品を作ろうとしているのか、問おてみれば、こたえは「作品を作っている」となる。

自分の名前と言うのは、私が選んだものではない、気がついたら、自分についていたラベルである。そのラベルと、色々あっても、50年以上歩いて来た。自分と同じ名前の人がいて、間違われるからと言う理由で、制作するときに違う名前を使うと言うのは、ちょっと嫌だなと思った。だから、「さわだともこ」で、これからも行こうとなった。

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