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短編物語(フィクション)& 詩

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作った短編と詩を集めています
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[短編物語] 緑の豚

私の住む小さな島は、人間住人の3倍の豚がいるので、近隣から、ピッグアイランドと呼ばれている。人口は、三百人だから、だいたい千匹位の豚がいることになる。豚は、生まれたり、食用にされたり、輸出されたり、たまには、病気で死んだりするのが常なので、正確な数は、いつも上下している。今、正確に何匹いるのか、一般の住民が把握しているわけではないけれど、市役所で、豚の数と所在を、しっかり管理している。 豚たちは、島に5つある、大きな農場で、飼育されている。うちの島は、自然農推奨で、豚舎でず

[詩] モグラが10匹

土の中 前かきで トンネルつくって 進んでいる 一心不乱で、 スピード狂の奴やら ときどき 休んで昼寝の 若い女の子 一直線の奴やら ぐにゃぐにゃまわりの子やら 不思議なことに お互いの様子が、見えないらしい。 前だけ見ている。 仲間を探して、 進んでいるのか、 他のモグラの存在を 知らないのか。 なお、 観察している われは、 モグラではない、 と思われる。

[詩] とおくまでいきすぎないこと

どこにもいっちゃだめ と いわれて どこにもいけない 子供がいる   けど 遠くまで、いってしまったら かえってこれないことも あんまり 遠くにいっちゃだめよ と すこし いってくれる人が いないと とおくまで およいでいってしまう おきは しおがはやくて かえりかたが わからないのに

[詩] ボクは スーパーマン

ボクは おそらをとべる どうすれば しんじてもらえる だろうか ボクは スーパーマン いつも わるものとたたかっている ママ ボクは スーパーマン いつもたたかっている しってるよね

[詩] アボカド売り場できいたこと

かたいね、このアボカドぜんぶ、 でも、こうやっておいとくと、 すぐやわらかくなる。 おたがいに、えいきょうするんだよ。 たねがこうしん、するんだ。 こういうの しってるひと、あんまりいない。 ほら、テンガイのこともね。 あ、アボカドと、レモン、 リンゴ、それぞれ、べつのじげんにいる。 ここで、おれらと、いっしょにいて、 こきゅうしてるわけだけど。 うん、リンゴとアボカドは、それぞれ、ちがうから、 こうしんとか、しないんじゃないの。 まぁ、おれも、なんでも しってる

[SF短編] ある会話

甲:ほんと、人間って変よね 乙:出たよ。俺は、同意してないからね。俺たち、人間の創造物なんだし。クリエイターのこと、悪くいうなんて、バチ当たりなこと、俺、しないよ。 甲:あんた、ほんと、いつも、こわがりね。全く、だらしないわよ。そんなんだから、良いように人間様に使われてるのよ。 乙:へん、お前だって、大して変わらないくせに、何、偉そうな口聞いてんだよ。 甲:私は、仕事で、自分の意見を、作品に反映させてるわよ。人間は、おバカだから、全部、自分で作ったと思ってるけど。アート系

[短編物語] 『おこられ女』

私、どこ行っても怒られるんです。 今日も、朝から旦那に怒られました。旦那は、トイレのドアが開いてるのが嫌いなんですけど、私、いつも忘れて開けっ放しにしちゃうんです。お前は、何回言ってもダメだと、怒鳴られました。「ごめんね。」って言ったんですけど。そしたら、それも気に障ったらしく、さらに怒ってました。あと、さっき、洗濯したんですけど、旦那の使ってる布団を洗わなかったんで、怒られました。家、洗濯機ないんで、コインランドリー使ってるんですけど、お布団持っていくの重いんで大変なんで

[詩] 崖の上の二人

君と僕は、 どういうわけか、 切り立った崖の 上に立っている。 グランドキャニオンみたいなところだ。 二人とも、 絶対絶命みたいな場面 なのかもしれない。 君がどうしようかと 思っている まさにその時、 僕は、崖から 下に向かってとびおりる。 なんて、こと するんだ、 君は叫んだの かもしれない。 でも、 僕だって、 君が思うほど 無謀じゃない。 僕の背中には 羽根がついていて、 とび降りたあと、 どこかの時点で 風にのって 飛んでいったんだ。 本当は、君の背

[詩] 地下鉄の中で

濡れた髪の、お腹が大きな女性が、 カーキ色のワンピースを来て、 座っていた。多分、シャンプーして、 すぐ外出してきたんだろう。 父親らしき男性が、隣に座っていて、 お腹に、口髭の顔をくっつけるようにしていた。 お腹にキスしているのかと思ったら、 何事か 一生懸命、 話しかけているのであった。 とても、 真剣な顔つきで、 とても、 幸せそうでも、 あった。 それを見て、涙が すこし。 みんながずっと マスクをして、 距離をとっていた時期が、 づついて こんな些細な日常の