寿司屋でフライドポテトを食べた話
飲食店で「それ頼む!?」という商品を注文するのは、どこか背徳的な気分で楽しい。
食べたい欲求が振り払えなくなる時ってありますよね。最近のそれは回転寿司でした。
日程を色々と考え、名案なスケジュールを組めたため久々に行ってきました。
今回は目標があります。テーマ「小さい頃食べられなかった品を選ぶ」。
回転寿司とはいえ寿司屋。私が新勢力の魚でない握りを欲しがろうものなら「せっかくだから魚にしなさいよ」。言われたような気がしますし、言われなくても言外に表されていました。子どもって案外 雰囲気を察するものですからね。
それが染み付いて、自力でお寿司を食べに行く時も少し変わった感じのメニューは頼めずにいました。
マグロだって、イカだって、そりゃあキラキラ美味しそうです。でも、ハンバーグ握りだって美味しそう。ソースの照りと憧れトッピングで余計輝いているくらいです。ハンバーグを口に頬張ったあとに白米を追加してもいいのに、なぜここでは許されないのか。ああ気になる。
なんとなく羞恥で手が出せずにいました。笑われてしまう恐怖心のような。けれど、本当は何食べたって良いんですよね。それこそ売ってるし。染み付いていたせせら笑いは多分一番私が私に向けていたものです。
回転寿司ひとつで固定観念のもと、忘れ去りつつもでもどこか年単位で悶々としていました。が、一念発起!比較的新しいタイプの寿司を楽しみに行こう!
ドキドキうきうきお店へ出向きました。
最近は寿司が流れてないんですね。食品ロスに配慮していていいことです。反面、お寿司を手に取りやすいよう徹底的に計算されているあの文化がなくなってしまうのは少し寂しいです。何より色んなネタの寿司が目の前にやってくるのは、見ていて飽きないから。ぼんやり見ながら選んでいるといつまでも皿を取らず笑われていました。
メニューを見て逡巡します。記念すべき一皿目はどれがいいかな?やっぱりここは!キミに決めた!という訳で、ちょっと待ってからやって来たのは、ハンバーグ握り。チーズも乗っています。傍目をやたら気にする恥ずかしさは拭いきれませんが、うっきうきです。いただきます。ネタの味が濃い目でしたが、うん、想像通りの味。うれしい。
その後も、鴨だの何だのと海鮮には縁遠いお寿司を注文していました。
お腹も満ちてはいるけれど、なんとなく品物ページをめくってた時でした。目についてしまったサイドメニュー。フライドポテトが!どうしよう!じゃがいも料理は境なく好き。目を引かない訳がない。でも今、席を立っても十分なお腹具合。
悩みました。けれど、回転寿司に次回来るのは一体いつか。今年どころか来年だって訪れるか分かりません。がんばって来たんだ。後悔するより進んでしまおう。
ということで、到着したのはのりしおフライドポテトです。のりしおは付属でお皿の縁に乗っていました。海苔をつけたり、そのままでも。
寿司屋で場違いなものを頼んでいる背徳感も合わさって相乗的に美味しいです。全然悪いことしてないのに、なんでかニヤリとしてしまいます。イタズラした気分に近いかも。
そんなこんなで、お腹も気持ちも満ちた食事になりました。ご飯を食べに行ったと同時にささやかなエンターテイメントでした。幸せ。念願叶うと嬉しいですね。
妙な羞恥心はまだ残っています。次回、ハンバーグ握りを頼むとしても、小さな勇気がきっと必要です。けれど、些細でも自分の固定観念を壊し、やりたいことが出来て良かったと思います。何より楽しいご飯になりました。
気にしなくてもいい見栄が日々に満ちています。そんなのもっと減らしていきたいなと、奥の席へ流れていったタコ焼きとミルクレープに励まされた記憶を思い出しながら書いています。
今度はあぶりチーズ卵握りと、タコ焼きにしようか。