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”自分”を消し続けなきゃいけなかった話。


前回の記事の続きから。

母からよく父の悪口を聞くようになった。

もちろんそんな話聞きたいわけがないのが本心。でもきっと母は傷ついてしまって自分にしか愚痴れないんだ。自分が受け止めてあげなきゃ。子どもながらにそう思っていた。とても優しい子どもやな…

夜な夜な母は泣くことが多かった。時々父が帰ってきて泣いている母の背中をさすっているのを寝たフリをしながら見ていたりもした。兄と姉が知らない修羅場ばっか見ているのはなんでだろうか?笑

当時僕はかわいそうなことに寝るところが安定していなかった。子ども3人部屋には二段ベットがあるが兄と姉が寝ていて入れてと言ってもヤダの返答しか来ない。クソが。だからいつもリビングか母の布団で寝るしかなかった。よくリビングで寝ていたのでそういう光景を目にすることは多かった。過去にも親のセックスも目撃してしまうくらい。 え?

まあそれは置いといてとにかくこの頃から母の携帯をチェックするようにもなった。僕は知らないことをそのままにしたくない性格なので。キリッ 案の定母は父に死んでやるとか許さないとか書いていた。そのほかにも浮気相手が母に父を渡してくださいとか、忘れたけど他にも色々を毎日のように電話してきていたことも知った。それもあり泣いていたのだろう。

その頃から子どもの僕は母から守られる側ではなく守る側になった。精神的にね!実際なんもしてないけどとにかく味方でいてあげるしかなかったね。あー俺かっこいいー(棒)

チェックしたりしなかったりの日々が続いたある日衝撃的事実が飛び込む。

浮気相手が自殺したというのだ。

状況がよく分かっていなかったせいもあってか突然で心臓がバックバクになった。直接的なことは書かれていなかったが葬式とかその他ちょこちょこ書かれていて推測した。ものすごく不思議な気持ちだった。浮気相手だし、家族を壊した張本人だし憎むべき相手だけど、やはり誰かが死ぬのは悲しかった。そして相手も被害者だったのではないかと。誰を憎めばいいかわからなかったし憎むべきかもわからなかった。

全てしょうがないと思っていた。父の浮気も男だからまあしょうがないもんなのかなとか好きになったらしょうがないもんか、とか思ってたし母の愚痴もしょうがないの延長線上だったし、浮気相手はむしろかわいそうだった。普通だったら父に矛先が向けられるはずだけど僕はそれももかわいそうと思っていた。自分たちのために働いてくれた事実もあったし逆に普段自分たちが父に雑な対応をしてたんじゃないかとも思っていた。だから母の味方をしつつ父の味方でもあった。つまりスパイだ。今思えば自ら茨の道を進んでしまった感もあるが。

父は昔から仕事が忙しくいつも夜は遅かった。でも休みの日はアウトドアな旅行に連れて行ってくれたり、一緒に釣りしたり遊園地に行ったり。僕は多分父のことは好きだった、そう思う。でも母からの愚痴を聞けば聞くほど自分も父が嫌いと思い込むようになった、というか思わなきゃいけなかった。父を見る目を普通以上の感情でいることを母はよしとしなかった。つまり嫌いじゃないとダメだった。だからなるべく一緒に愚痴った。

今書いた感情のこと全ては表(本心を覆うもの)の感情。当時から裏(本心)の感情は出してはいけないし出したくないと思っていた。ややこしいけど父への本心を少ししゃべる。

父へ。

なんで家族いんのに浮気してんねん。子どもが一番可愛いんちゃうんか? 浮気相手の方が好きになったんか?え?俺は愛されてなかったんか?もう愛されないのか。なんでなん。俺は楽しかったのに、貧乏な方やし欲しいもの全てが手に入ってたわけじゃないけどそれでも全然よかったねん。ただ家族全員で餃子パーティーとか地元のお祭りとか釣りとかキャンプとか楽しかったやん。それじゃ満足できんかったんか。俺なんかどうでもよかったんか。なら勝手に出てっても文句ないわ、一生恨んだるからな、人生ぶっ壊したこと絶対許さんからな。

これが当時の僕の中にある奥の奥の本心。醜いような、むしろ子どもっぽくていいような。本来表に出すようなことを僕は奥にしまい込んだ。昔は無意識にそうしていた。表に出すということはリスクがあることを知っていた。

自分の本当の感情は消す(裏にしまう)

つまり自分を消さなきゃいけなかった。もっと子どもっぽく全部さらけ出しちゃえばよかったのにって思うかもしれないがそうはできなかったのだ。

そんな”自分”を消し続けなきゃいけなかった話の1つ。


つづく。

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