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Column_s#6 学校だより④通知表


#学校だより  シリーズも今回でラストです。
今回ご紹介する巻頭言は、私が教師を退職する年にまわってきた仕事です。「たくさん書いてきた巻頭言も、今回が最後になるのだなあ」と私自身は分かっていたので、気合いを入れて書きました。どうしても文章が長くなってしまうのは、伝えたいことが溢れてくるからなのです。その点はご了承願います…!


成長を見守る大人たちのまなざし ~30年前の通知表を読む~

 我が家の長男は、今年の4月から小学一年生になりました。そんな長男は、家で3歳年下の妹とよく喧嘩をします。ちょっとしたことでも妹と張り合い、勝負を挑んでは「勝った勝った!」と一人喜ぶわけですから、下の子は当然面白くありません。自分自身は勝ち負けにさほどこだわる方ではないと思っているので、「どうしてそこまで勝ち負けに…」「学校で友達と仲良く遊べているのだろうか」「担任の先生を困らせていないだろうか」と気掛かりにもなってきます。

 ところが先日、用事で私の実家に寄った際に、自分が小学生だった時の通知表を見付けたので読んでみると、小学4年生の時のものには次のように書かれていました。

「どんなことにも積極的・意欲的に取り組みました。けれども、勝ち負けにこだわりすぎるところがあります。もっと違った意味で楽しめるようになるとよいですね。」

 30年前の通知表を読み、今教師の立場から、小学4年生だった「佐藤少年」の担任の先生がどのような気持ちでこの通知表を書いたのかを考えてみました。課題点をはっきり書くことについて悩んだかもしれません。それでも、教室で毎日一緒に生活をする中で「佐藤少年」を見て感じ取り、指導を重ね、通知表に書いてでも保護者に伝えたいと担任は考えたのでしょう。
 そういった、これまで出会った多くの先生たちの関わりによって今の自分があるのだと想像するとなかなかに感慨深いものがあります。私自身にも妹がいますが、家でも「佐藤少年」は「勝った勝った!」といつも喧嘩をし、それを両親が見守っていたであろうこともおぼろげながら思い出されてきました。
 
 本校では、今年度、我々教職員の授業力を高めるため、いろいろな学級の授業の様子をお互いに見合う校内研修を、例年以上に活発に行うようにしています。そして実際に見て学んだことやその学級のよさを書いたメモを貯めていきます。この取組を実際に行うと、それぞれの授業者の持ち味や子どもたちに対する効果的な関わりの仕方が見えてくるようになりました。また、自分が担任していない学年の子どもたちのよさも、いろいろと見えてくるのです。どのようなメモが貯まってきたか、一部を紹介します。

●「2年2組では、筆算の説明をノートに書くとき、『参考にするのは前に書いた足し算のノートだね』と先生が声を掛けていました。子どもたちもすらすら書いていました。算数日記も素敵です。」(記入者:1年1組担任)
●「あおぞら学級では校外学習に向けて、『透明なリュック』を使うことで、何を持っていくか子どもたちが考えるきっかけになっていました。『~さんはどう?』など楽しく話をして学んでいました。」(記入者:3年1組担任)

 本校では運動会や参観懇談後の保護者アンケートで、子どもたちや先生の関わりのよさを、たくさんの保護者の皆様が見付け、提出してくださいます。たくさんの大人の温かなまなざしが、その子にも、周りの子にも広がり、小学校に通う子どもたちを更に大きく成長させていくことに、本当にありがたさを感じます。今後とも「大人たち」の共通理解のもと、子どもたちの成長を見守っていきたいと考えます。
 
 先日、我が家の息子から「平仮名最後の『ふ』が終わったよ!」との報告を受けました。入学前よりずいぶん整った『ふ』が書かれたプリントを見て、担任の先生がやはり一生懸命指導してくださったことに感謝の気持ちが湧いてきました。
 「勝ち負けにこだわる」我が子は、きっとこの先、先生や友達との学習や遊びを通し、何度も負けて悔しい思いをすることでしょう。集団の中でそんな経験をたくさんし、いつか「勝ち負けを超えた楽しさ」に気付くよう成長していってほしいものです。そのための土台として、家での妹との喧嘩を地道に見守っていこうと、一保護者として決意を新たにしました。9月末に渡される通知表にどのようなことが書かれているか、それもまた楽しみにしながら…。


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