irOdoriメンバーインタビュー:千倉よしのさん 後編
こんにちは、irOdori〜彩り×踊り〜(イロドリ)彩夏です🌈
ジェンダー問わず自己実現できる世界を目指すirOdoriは、性的マイノリティ当事者やその支援者(アライ)のリアルな声を発信しています📣
今回は前回に引き続き、irOdoriメンバーで、東京レインボープライド(TRP)2023のirOdoriブース企画にも運営メンバーとして参画いただいた、ノンバイナリー・千倉(ちくら)よしのさんのインタビュー記事です。
ノンバイナリー(nonbinary)とは、ジェンダー・アイデンティティや性表現が男性・女性どちらか一方に当てはまらないセクシャリティのこと。7月10日からの一週間はノンバイナリー啓発週間でした。
よしのさんは、irOdori的にはアイコニックな存在だと思っていて、他の人からもirOdoriのSNSに写るよしのさんを指して「この人よく見るよね」と言われます。
irOdoriからはできるだけ多くの人の声を発信したいと思っているのと、irOdoriに関わってからよしのさんにポジティブな変化もあるようにも見えていたので、詳しく伺いました。
後編はよしのさんがirOdoriと関わって以降のお話です💜
前編はこちら
周りへのカミングアウト
よしの:ノンバイナリーの私をしっかり受け止めてくれたのは、irOdoriが初めてだったかな。
彩夏:本当ですか!?irOdoriとの出会いはよしのさんにとってどういうタイミングでしたか?
千倉よしのって名前を自分で付けて、いろんなところに出るようになってから、「名前は何ですか?」「よしのです」って言うと、どこに行っても、自分が安心していられるし、相手も安心しているみたいで。自分の本名がすごく嫌なわけじゃないんだけど、千倉よしのとしていること、千倉よしのと呼ばれることが、自分の精神的にすごく安定感を作っている。そういう、人とのつながりがちょうどいい感じで増えているところに、吉田彩夏さん登場みたいな感じだったんです。
よしのさんには元パートナーさんとの間に生まれた息子さんがいらっしゃいますよね。最近息子さんと同居を始めたそうですが、息子さんにはよしのさんがノンバイナリーであることを伝えているのですか?
はい、19歳の息子がいます。
息子の前で化粧したりしています。朝、化粧しているときに部屋に来るから、来て、そのまま話したり。「今、メイクしてて手離せないけどいい?」って言うと、「うん、いい、いい」って。
息子と同居する生活になったときに、こんなんだけどいい?って言ったんです。たまたまそのときメイクしてたり、髪も整えたりしていたので、
「こんな感じでいるけどいい?たまにワンピースとか着たりするけどいい?」
「うん、別に」
「ふーん。ありがとう」
って。しばらくしてから、「なんであんな簡単に、うんって言ったの?」って、すごく気になったので聞いたんです。
「だって、お父さんはお父さんで変わりないから」って。
思わず「どこでそんなの覚えた?」って聞き返したんです。そうしたら息子は「いや、どこでってことはないけど」と言うだけで。それも、今の支えになっていると思う。
本当ですね。
あと、同じ頃に妹にも言ったんですよ。年も年だから、いつどこで死ぬか分からないし。死ななくても救急車で運ばれて、誰か、親戚か家族か呼べみたいになったときに、妹が行ったときに、「え?これお兄ちゃん?」みたいなことにならないようにっていうことでね。
「実は女性の格好で暮らしてるよ」
「ああ、いいんじゃない?もう年だから、やりたいことをやっとかないとね。いつ死ぬか分からないし」って。
周りの人の受け入れがすごくいいですね。
でも同じマンションの人は、私よりずっと年上だろうけど、私の元パートナーに、「あんたの前の旦那さんは最近変よ。ひらひらしたのばっかり着てさ」って。そういうふうに見てるやつがいるんだって思いました。「誰やそれ」とか思ったけど、構うことなく今もひらひらしたのを着ています。ひらひらしてるほうが、夏涼しくていいし。もうほんとにこの格好で近くのコンビニもスーパーも行っています。
皆さんがドキドキする小さい子どもも平気。今日もバスに乗る前に小さい男の子がバス停で、バスが見えたらすごく喜んでて、バスを見た後で私の顔を見て、にこってするんですよ。めちゃくちゃかわいくて。バス来たねみたいな感じで、何回も繰り返して。全然怪しまれないというか。「もう私は私で、これでいいんだ」って思って日々過ごしています。
法律が変な方向に行ってるのがすごく気になるけど、だからって、やめられないし、やめたらまた、自分はどういう人だっけ?みたいなところに戻っちゃうから。せっかく自分のアイデンティティーがはっきりしたから、このまま死ぬまで突っ走りたいです。
突っ走ってください。いい話で嬉しくてにこにこしちゃいます。
irOdori有志でメジャーな観光地へ
irOdoriの中で思い入れ深いエピソードはありますか?
箱根に行ったこと。あれはすごく大きかった。
何が大きかったんですか?
全体から見たらマイノリティーの自分たちが、とてもメジャーな観光地に行った。そこで何一つトラブルがなかった。
個々に楽しいことはありましたよ。あれとか、あれとか、あれとか。
irOdori夏休み企画の話があったときに、最初、ちょっとマイナーな所がいいかなって自分でも思っていたんです。「箱根にします」って連絡が来たときに、「え?箱根?何かいろいろやばくね?」って思ったんだけど、そんなことはなくて、むしろ終わってみたら、箱根だったからよかったんだって思いました。
緊張せず気負いなく人と話せるようになった
irOdoriに関わるようになって変化はありましたか?
偶然にも最近感じたことがあって、先月、秋田と岩手のプライドマーチに参加したんですけど、緊張せず気負いなく人と話ができるようになった。
それは、私がしゃべる機会や行動する機会を彩夏さんがメニューとして出してくれたからかなって。「やりなさい」じゃなくて「こんなのありますけど、いかがですか?」「じゃあ、これで」みたいな。「いや、今日はいいです」とも言える。
すごい!想像以上で面白いです。そういうふうに映っているんですね。
今までの自分の身のまわりにはなかったか、「やりなさい」とか「自分で探して」とか、両極端なのが多くて。「こういうのがあるよ。どれ?どこでもいいよ」っていうのが、すごく楽でストレスがない。
そのメニューに対して、安心してチャレンジができるところもあるんですね。
あと、いつも思うんだけど、この吉田彩夏っていう人は、なんで私らみたいな国民の0.0何パーセントっていう人たちと飽きもせず付き合ってくれるのか……。こっちからしたら感謝しかない。
なんでって言われても、そうしたいから。よしのさんが、単純に私が付き合いやすい人間だから。なのに社会はそうじゃない見方をするのが私は意味がわからないから、より自分としては接したい人っていう感じかなと思います。こちらこそ、よしのさんがirOdoriに関わってくださって、すごく嬉しいし、感謝しかありません。
TRP irOdoriブース運営を経験して
TRPのirOdoriブースの運営メンバーをやってっていう話があったとき、どう思いましたか?
嬉しかった。ありがちな言葉だけど、自分の存在が認められている……。存在なのかな、よく分からないけど。irOdoriで何をしたっていうわけでもなく、ただイベントにちょこっと顔を出しているっていう感じだったので。でも、自分の存在が、彩夏さんの中でOK印が出たんだろうなって。それでこういうスタッフっていう仕事を任される、選ばれるっていうのはすごく嬉しかった。
「よしのさん含めた皆が安心できる環境を整えることを中心に動きたい」と序盤から思っていました。だから、よしのさんの基準をすごく大事にしていました。
私、言っちゃうんです。今まで、修学旅行とかで、後になってから、ああすればよかった、こうすればよかったっていうやつ、いっぱいいるんです。「それ先に言えば何とかなったんじゃない?」っていうことばかりで。そういうのがあったから、気が付いたことがあったら言っちゃう。場の空気とか関係なく、っていうか、「場の空気、何それ?」って。ただ、言うタイミングを逃して言わないことはありますけどね。
言ってくれるのは、私としてはすごく価値があることだと思っています。
前の年のTRPで、アクサ損害保険への抗議活動があったから、irOdori直接でないにしても、お隣とかお向かいさんでそういうのが起きたらどうしようっていう心配はしていました。
実際、運営をやってみてどうでしたか?
大変だった〜!
大変でしたね〜!
大変だったけど、楽しかった。なかなかできることじゃなかったから。
よかった、そう言ってもらえて。irOdoriとしてもみんなで作り上げたことって初めてだったと思うんです。私も新しい経験ができました。
私たちは生身の人間です
今、LGBTQ+の法律などのニュースで、アンチコメントや、あまり人のことを思ってないようなコメントも散見されます。最後に、何か訴えたいことがあれば教えてください。
私たちは生身の人間です。生身の人間だから、悪口を言われればカチンとくるし、ないことにされればふてくされるし。でも、普通に接してくれれば普通にこちらも返します。社会生活を営む上では普通に配慮してます。それをやらないのは元からの犯罪者です。私たちはあくまでも生身の人間です。
本当にインタビューできてよかったです。ありがとうございました。
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