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【漫画原作】『夢とオンナと尿道結石』【すこしふしぎ】

読切用の漫画原作です。
昔話「いぬとねことうろこ玉」をオマージュしたお話です。

複製、自作発言、無断転載、許可なき作画はNGです。


ジャンル

日常系のすこしふしぎ。ハートフルコメディ。

あらすじ

日本一のお笑い芸人になりたい青年・狗神は、音楽界のトップスターになりたい青年・ミケ、あっと驚くVRを作りたい青年・ニョロと共に、優しく世話好きの女性・爺ヶ岳が管理人を務めるシェアハウスに住んでいた。
ある日、ひょんな事から尿道結石を手に入れた爺ヶ岳は、シェアハウスの守り神として祀り、狗神達の夢が叶うようにとお願いする。誰が見ても胡散臭そうな行動だが、なんと狗神達の夢が叶ってしまう。これを機に尿道結石を巡る熾烈な争いが始まる…。

登場人物

・狗神(いぬがみ)
 主人公。二十代後半の青年。高身長、筋肉質で坊主頭。色付きのサングラス、上下スウェット、クロックスのヤンキー風な恰好。強面な外見とは裏腹に根は真面目。夢は日本一のお笑い芸人。
・爺ヶ岳(じいがたけ)
 二十代半ばの女性。小柄な体型、三つ編み。服装は、ワンピースドレスにエプロン。顔立ち・服装共に派手さは無く素朴で、のほほんとした雰囲気。シェアハウスの管理人で、狗神達三人の面倒を見ている。
・ミケ
 狗神と同い年の青年。高身長で華奢な体型。白銀の髪、碧眼、中性的な顔立ち。ゴシック系の服装(フリルが付いたブラウスや黒のスラックス等)を着用。英語訛りの喋りが特徴。音楽界のトップを取るのが夢。
・ニョロ
 
狗神と同い年の青年。本名は蛇塚たまき。黒髪のおかっぱ、そばかす、メタボ体型等、〈おたく〉的な外見。あっと驚くVRを開発し、一儲けするのが夢。
※ニョロは作中一言も話さない。頷く・顔をしかめる等、アクションや表情で感情表現する。
・番頭(ばんとう)
 
中盤から登場。狗神の後輩。黒髪、色白、華奢な体型。地味で大人しそうな印。爺ヶ岳に恋心を抱いている。

冒頭

○都内・下町の商店街(春頃)

歩行者天国の通り。
ポケットに手を入れ、キレ気味に歩く狗神。
距離を取る通行人。

狗神 「(ペッと唾を吐き)…ったく、マジで意味分かんねぇな。真剣にやってんのに、やる気が無ぇだ、魂感じねぇとか。つか、テメェらの話し方直せよ。校長の挨拶みてぇに長ぇし、ドヤ顔でネット用語使うし。全然スベッてんだが」
爺ヶ岳「狗神くーん」

少し離れた場所、買い物袋を手に微笑む女性・爺ヶ岳。
+++++

通りを歩く二人。狗神の手に買い物袋。

爺ヶ岳「どうだった? オーディション」
狗神 「オレとしちゃぁ、自信あったんだが…。やっぱ向いてねぇのかな…」

落ち込む狗神。

爺ヶ岳「大丈夫。狗神君ならなれるよ、日本一のお笑い芸人」

微笑む爺ヶ岳。

爺ヶ岳「そうだ、今夜出掛けるの。夕飯作っとくからみんなで食べて」
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トラブル発生

○シェアハウス(夕方)

古民家風の一軒家。
門に〈爺ヶ岳コーポ〉の看板、玄関に〈爺ヶ岳〉〈ヘルハウンド狗神〉〈Michael Orland〉〈蛇塚たまき〉の表札。
(狗神達三人の表札は取り外し可能なもの)。

居間。掘りごたつ式のテーブル。夕飯を食べる狗神とミケ。
電気コンロ、ぐつぐつと音を立てる具沢山のおでん鍋。炊飯器や替え玉のうどん。
大きなお椀でおでんやご飯を食べる狗神。
洋食器(皿やナイフ等)を使い、優雅に食べるミケ。

狗神 「どうだ? オメェの評判」
ミケ 「全然ノー・グッド、何処へ行っても変人扱いストレンジャー事務所オフィスから変更イメチェンも薦められてね。でも、気に入ってるんだ、この設定キャラお茶会ティー舞踏会ダンスをこよなく愛する、絢爛豪華ブリリアント貴族系演歌歌手ノーブル・エンカ・シンガー。日本音楽界の頂点トップを取るのには相応しいと思わない?」

空席に目を向ける狗神。子供っぽいお椀や箸が並ぶ。

狗神 「ニョロは研究か。さては、〈心地良い感覚〉ってヤツでも閃いたな」
ミケ 「何も思い浮かばないノー・アイディアで、気を病んでるストレスフルとか。創作界隈クリエイティヴィティって多いでしょ、繊細ガラスハートな人」
狗神 「ハハッ、ニョロに限ってそんな…」

ドンッ、と物音。
+++++

トイレ。
ドアノブに〈使用中〉の札、隙間から漏れる光。
トイレからは物音一つしない。
扉の前に立つ二人。

ミケ 「お手洗いトイレって、適してるグッド・プレイスらしいね。本体は頑丈ストロング足場になりやすいイージー・トゥ・スタンド、換気窓は引っ掻けるハングには丁度の高さベスト・ポジション。おまけに個室で邪魔されにくいノーワン・ケアズ

扉に体当たりする狗神、険しい顔付き。

狗神 「テメェ、VRで一儲けして、SF映画みてぇな研究所建てて、メイドロボと幸せに暮らすんだろ!! 夢叶えずに人生終わらせんじゃねぇ!!」

数回体当たり。金具が外れ、扉が壊れる。
*****

ケッセキ様

〇シェアハウス(翌日・昼前)

居間。
テーブルに遺影風のニョロの写真、VRゴーグル、白い小さな箱。
落ち込む爺ヶ岳。

爺ヶ岳「そっか…。ニョロちゃんが…」
狗神 「暫く入院だとよ。偏食に引き籠り、こんなモンも出来りゃ当然だな」

箱を開ける狗神。
手のひらサイズの黄色の結晶。興味深げに観察する三人。

ミケ 「凄いねオウサム、この尿道結石。どうしたらこんなビッグになるのさ」
狗神 「そりゃ、実験だって毎日何回もヤッてりゃな」
爺ヶ岳「ねぇ、折角だから飾りましょ。だって綺麗じゃない、宝石みたいで」
+++++

神棚。ハンカチで包まれた結石。嬉しそうな爺ヶ岳。

爺ヶ岳「どう? シェアハウスの守り神、ケッセキ様! ケッセキ様、ニョロちゃんが早く元気になりますように。ほら、二人も一緒に」

手を合わせる爺ヶ岳。
その後ろ、手を合わせる狗神とミケ。あまり乗り気でない様子。

爺ヶ岳「交通事故に遭いませんように。風邪を引きませんように。毎日楽しく暮らせますように」

小声で話す二人。

ミケ 「相変わらず天然マイペースだね、爺ヶ岳さん。このまま教団カルトクラブ立ち上げたりして」
狗神 「唯の尿道結石だ、有難がっても意味無ぇよ」

嬉しそうに祈り続ける爺ヶ岳。

爺ヶ岳「狗神君とミケちゃんとニョロちゃん、三人の夢が叶いますように」

意味ありげに輝く結石。
*****

夢の始まり

〇新たな日常(後日)

コンサート会場。
入場待ちの行列。やって来る一台の馬車。降
りるミケ。写真を撮ったり、手製のグッズを見せる観客達。

 サブカル系のイベント。成人向けエリアにニョロのブース。〈次世代のAdultVirtual(アダルトバーチャル)〉の看板、ブース内に体験用の個室。
体験を終えた参加者、満足そうな笑みを浮かべている。

〇シェアハウス(夜・十九時頃)

玄関。ミケとニョロの表札が外されている。

居間。テレビを見る爺ヶ岳。
バラエティ番組。〈ヘルハウンド狗神〉〈二十八歳〉〈ピン芸人〉のテロップ。真面目に答える狗神。

司会者『狗神君ってさ、何で芸人になったの? 小学校から野球やって、強豪校入って甲子園優勝して、球団からスカウトされたのに』
狗神 『みんなを笑顔にしたいんですよ。悲しい時、ツラい時、オレのお陰で元気になれた、勇気を貰った、感動したって。そう思ってくれたら嬉しいですよね』
司会者『それ、野球選手でもイイじゃん!』
客席 『ワハハハハハッ!』

帰宅する狗神、手にはボストンバッグと土産袋。

狗神 「ただいまー」
爺ヶ岳「お帰りなさい。地方ロケお疲れ様」
番頭 「こっ、こんばんは」

狗神の後ろに立つ番頭。

狗神 「この前言ってた、後輩の番頭。暫く世話になるわ」
番頭 「よっ、よろしくお願いします」
爺ヶ岳「こちらこそ。ミケちゃんとニョロちゃん、夢が叶って新しいお家に引っ越しちゃって寂しかったの。嬉しいわ、また賑やかになって。早速だけど、番頭君。お参りしましょ」
+++++

結石専用の部屋。
階段型の祭壇にガラスケースに入った結石や置物。部屋の至る所に、ミニ鳥居や賽銭箱等の縁起物。宗教性(和洋)問わず飾り付けが豪華。
圧倒される番頭。

番頭 「こっ、これですよね、飲み会で言ってたケッセキ神社。何だか御利益ありそう…」
狗神 「ないない。縁起物置いてそれっぽくしてるだけだよ」

祭壇の前に正座し、手を合わせる爺ヶ岳。後ろに座る狗神と番頭。

爺ヶ岳「交通事故に遭いませんように。風邪を引きませんように。毎日楽しく暮らせますように。番頭君の夢が叶いますように」
+++++

番頭の部屋。和室。折り畳みテーブルとイス、布団一式のシンプルな家具。

爺ヶ岳「ここが番頭君のお部屋。パソコンとか化粧品、欲しい物は何でも言って」
番頭 「はっ、はい! ありがとうございます!」
爺ヶ岳「それじゃ、お休み」
番頭 「おっ、おやすみ、なさい」

微笑む爺ヶ岳。頬を染める番頭。

意味ありげに光る結石。
*****

夢の終わり

〇シェアハウス(後日・夏頃)

玄関。ミケとニョロの表札が付いている。

居間。
音楽誌を読むミケ、ノートパソコンでネットサーフィンするニョロ。

縁側。
スマホ片手に大の字になる狗神、虚ろな顔、ぼんやりと天井を見ている。

狗神 「どうなってんだ…、急にスケジュール白紙になって…。単独ライヴは…、冠番組は…、一日警察署長は…」
ミケ 「仕方無いよ。流行ブームってのは、そう言うものだから。今は世代交代チェンジが激しい、ボクらはもう昔の人オールドワンズだ」

音楽誌の特集、ゴシック調の服装で赤ワインを手にした男性歌手、〈闇より甦る吸血鬼フォークシンガー〉の文字。
ネット記事、〈新感覚・抱(だ)っちわいふ〉の文字と抱き枕の写真。

飛び起きる狗神、スマホで連絡を取る。

狗神 「クソッ! やっと売れたってのに、このまま終われるかっ! …もしもし、今夜の生番組ですけど。トーク無しでも大丈夫です、居るだけでイイんで」
ミケ 「可憐エレガント姫君ガール二重唱デュエット、やってみたかったなぁ…」

溜息を吐き、遠い目をするミケ。
パソコンを操作するニョロ、画面に新作VR(ヘッドギア・後述)の設計図。羨ましそうに見つめる。

悔いが残る様子の三人。
お盆を手に現れる爺ヶ岳。

爺ヶ岳「お待たせ。お昼食べましょ」
+++++

テレビを見ながら昼食。
テーブルにそうめん、てんぷら、薬味。
大きなお椀で食べる狗神、洋食器でスパゲティのように食べるミケ、麺つゆに揚げ玉やネギを浸して食べるニョロ、普通に食べる爺ヶ岳。

爺ヶ岳「良かったわね、番頭君。マルチタレントになれて」
狗神 「いきなりだよな。此処来て一ヶ月もしてねぇ」

テレビ画面。昼の情報番組。金髪で逞しくイメチェンした番頭の姿。

ミケ 「ボクらもそうだったね。Mr.ニョロが退院ディスチャージしてすぐに、三人同時に売れちゃったビカム・フェイマス。今思うと、出来過ぎてるよねサムシング・ハプン
狗神 「偶然だろ。まさか、結石の御利益があったとでも…」

顔を見合わせる狗神、ミケ、ニョロ。
+++++

結石部屋。
ガラスケースの結石を真剣な様子で見つめる三人。
以前より小さくなり、色が暗くなった結石。

ミケ 「萎んフェイドだね。カラーもあの時よりくすんでるダスティ力を使い果たしたパワー・イズ・オーバー?」
狗神 「ニョロ! 出せ! もう一回! ホラ!」

ニョロに迫る狗神。
後ずさりするニョロ、祭壇に足を引っかける。ガラスケースや飾り物が落下。ケースが開き、結石が飛び出す。

狗神 「しまった! 結石が!」

片手で瞬時に掴む狗神。違和感。顔が険しくなる。
手のひらを広げ、中を確認する。

狗神 「コレ、石じゃねぇ!! 色塗ったティッシュだ!」
ミケ 「成程アイ・シー贋物フェイクなら御利益ゴッズ・ブレスが無くて当然だ。でも誰がフー? 何故ホワイ?」
狗神 「…番頭ぉ!」

険しい顔でティッシュを握りつぶす狗神。
+++++

〇テレビ局(同日)

収録終わり。
楽屋に番頭一人。うっとりした様子で、小型ケースに入った結石を眺める。

番頭 「凄いなぁ、ケッセキ様の力は。本当に夢が叶うんだから。ケッセキ様、僕の夢もっと叶えて下さい…」

番頭のスマホが鳴る。狗神から連絡(ラインやショートメール等)。
*****

ケッセキ様争奪戦

〇シェアハウス(後日・夜)

居間。
おつまみ(オードブルや一品料理)を囲む狗神、爺ヶ岳、番頭の三人。

狗神 「悪ぃな、忙しいのに宅呑み誘って」
番頭 「いえ。僕も久し振りに会いたいなって」

ちらっ、と爺ヶ岳を見る番頭。
カクテル用のシェーカーを手にした爺ヶ岳、グラスに酒を注ぐ。

爺ヶ岳「コレ、友達に教わって作ったの。飲んでみて」

酒を飲む番頭。

番頭 「美味しい!」
爺ヶ岳「おつまみもどうぞ。番頭君の為に沢山作ったから」
番頭 「はい! 頂きます!」

嬉しそうな番頭。真剣な様子の狗神。
少し開いた襖、様子を伺うミケとニョロ。
+++++

 〇深夜の出来事

番頭が使っていた部屋に似た内装(姿見や恋愛指南書等、自分磨きに関するグッズ)。中央に敷かれた布団。眠る番頭、ふと目を覚ます。
添い寝するネグリジェ姿の爺ヶ岳、胸と尻が異常に大きい。

番頭 『じっ…、爺ヶ岳、さん!? どっ、どうして!?』

頬を染め、慌てる番頭。
微笑む爺ヶ岳、番頭の頭を撫でたり、手(指)を絡ませる。

爺ヶ岳『とぼけた顔もカワイイなぁ、番頭クン。決まってるでしょ? ナニしたいか』
番頭 『…なっ、何って…』

ゴクリ、と唾をのむ番頭。震える手で爺ヶ岳の肩を抱き、顔を近づける。

番頭 『爺ヶ岳さん。初めて会った時からずっと、したいって思ってた。やっと、夢が叶う…』

舌を出し、キスしようとする番頭。
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現実。ニョロの部屋。防音壁、数台のパソコン、成人向け雑誌の本棚。

ベッドで横になる番頭。ヘッドギアを装着、両手には専用のグローブ。(※ヘッドギアはヘッドホン(音声機能)を内蔵。目元はニョロが開発したVRゴーグルで、ニオイが感知出来るように鼻も覆う改良型。グローブと共にワイヤレス。視覚、聴覚、臭覚、触覚で疑似体験を楽しむタイプがイメージ)。

番頭の隣、添い寝するミケ。ヘッドマイクを付け、爺ヶ岳のフリをして会話。右手に棒付きキャンディ、左手にセンサーが付いたマジックハンドを持ち、番頭を弄ぶ。

番頭の枕元、大きめのタブレットを操作するニョロ。
画面に番頭が見ている映像、音やニオイの数値。

キャンディにかぶりつく番頭。

番頭 「爺ヶ岳さんっ…! 爺ヶ岳さんっ…!」
ミケ 「もっと舐めて。そう、とっても上手よ、番頭クン」

廊下。扉の隙間から覗く狗神と爺ヶ岳、感心した様子。

狗神 「流石、貴族。野郎の扱い上手だな」
爺ヶ岳「凄いわね、ニョロちゃんの発明品。私が居なくても、私とえっち出来るなんて」
ミケ 「番頭クン。ワタシ、捜してるモノがあるんだ。金色で、棘があって、手のひらに乗るくらいの…」
番頭 「けっ、ケッセキ様ですねっ! それなら…」
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〇タワーマンション

番頭の部屋。ベッドに横たわる番頭、ヘッドギアとグローブを装着し、爺ヶ岳の全身がプリントされた抱き枕を抱く。枕元に起動中のタブレット、道具一式入る専用箱、分厚い取説。

番頭 「爺ヶ岳さぁぁん! これからずっと一緒だよぉぉぉ!」
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〇河川敷

静かな周辺。日が昇り始め、水面がキラキラと輝く。

橋を渡る狗神、ミケ、ニョロの三人。狗神の手に結石。

狗神 「結石は無事取り返した。これで、日本一のお笑い芸人に戻れるってワケだ!」

狗神の手から結石を取り上げるミケ。

ミケ 「憧れてたんだ、世界公演ワールドツアー北に南、海に山、馬車キャレッジで駆け巡るんだ。勿論、世話係メイドを連れてね」

ミケの手から結石を取り上げるニョロ、険しい顔で二人を威嚇する。

狗神 「コイツはオレの子供だから返せってか? キモイから捨てろっつったの誰だよ!」
ミケ 「禁止アウトだよ、独り占めオンリー・ワンは!」
狗神 「テメェこそ! 自分の為に使う気満々なクセによ!」
ミケ 「Mr.狗神、キミだって自分だけ勝ち組ウィナーになろうと」
狗神 「はァ!? オレはテメェらの事も考えて…」

取り合う三人。
宙を舞う結石、欄干を越え、橋の下へ落ちる。ポチャン、と沈む音。
呆然とする三人。
*****

夢よ再び

〇商店街(後日・秋頃)

歩行者天国の通り。ポケットに手を入れ、キレ気味に歩く狗神。
狗神にスマホを向ける通行人。

狗神 「…ったく、マジで意味分かんねぇな。全力でやってんのに、盛り上がらねぇわ、笑いの一つも起きねぇとか。つか、野球の指導してる時が一番ウケるって何だよ。バットにサイン下さいって、野球選手じゃねぇんだが」爺ヶ岳「狗神くーん」

少し離れた場所、買い物袋を手に微笑む爺ヶ岳。
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通りを歩く二人。狗神の手に買い物袋。

爺ヶ岳「どうだった? 学園祭の営業」
狗神 「オレとしちゃぁ、自信あったんだが…。やっぱ向いてねぇのかな…」

落ち込む狗神。
二人に近付く内気そうな青年。

青年 「あの、ヘルハウンド狗神さんですよね。僕、ファンなんです。〈深夜の悲喜こもごも〉に出てた時から」
狗神 「それ、五年前のテレビ番組…、オレの初めての仕事…」
青年 「僕、その時高校生で、模試で良い結果出なくて、落ち込んでて。でも狗神さんのネタ見たら、沢山笑って元気貰って、もっと頑張ろうって気持ちになって…」

黙って聞く狗神達。
嬉しそうに話す青年。

青年 「それで合格したんです、第一志望の大学! 狗神さんのお陰です。ありがとうございました! 誰がなんと言おうと、狗神さんは日本一のお笑い芸人です! 僕、これからも応援してます!」
狗神 「…日本、一…」

驚く狗神。

爺ヶ岳「夢叶ってたね、ケッセキ様が居なくても」

微笑む爺ヶ岳。
落ち込んでいた狗神の顔が、徐々に明るくなり、照れくさそうに微笑む。

狗神 「そう、だな。」
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○シェアハウス(夕方)

玄関。三人の表札が、取り外し可ではなく固定されたものに変わっている。

 居間。掘りごたつ式のテーブル。
席に着く狗神達三人(爺ヶ岳は外出して居ない)。

ご飯、味噌汁、鯛の塩焼き、サラダ。大きめの鯛を一匹丸々食べる狗神。小さめの鯛をナイフとフォークで切り分けるミケ。二人が残した頭や骨を食べるニョロ。

ミケ 「爺ヶ岳さんの仕込みプッシュだよね、ボクらが売れたのって。老舗企業フェイマスカンパニー令嬢プリンセスなら強いコネがある。それに支援者パトロネスになるのが彼女の夢。だから此処シェアハウスに居れば、いつでも人気者ポピュラーになれる」
狗神 「衣食住には困らねぇ、欲しいモンは買ってくれる、何でも世話してくれりゃ、出たくねぇよな」
ミケ 「援助サポートは必要だろ? 夢追う男ドリーマーには」
狗神 「そりゃな。だが面倒見るのは生活だけだ。夢ってのは、自分の力で叶えてこそだ!」

ガッと、鯛の身を箸でつまみ、勢いよく鯛とご飯をかき込む狗神。
呆れ気味のミケとニョロ。

ミケ 「無理だよユウ・キャント、たった一人で何が出来るのさ。それとも伝手グッドアイディアがあるとか…」

ガリッ、という金属音。目を丸めるミケとニョロ。
狗神の口、結石が歯に挟まる。

三人 「あっ…」
 

『夢とオンナと尿道結石』  終
ちなみに画像は鉱石展で購入した黄鉄鉱(Pyrite)です

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