見出し画像

作ったら友達なくしそうな(なくした?)アニメ|アニメ『未来少年コナン』

日本文学を学ぶ学生には「源氏物語には手を出すな」という不文律がある。

日本文学を学んでいる者は必ず源氏物語を通っており、にわか知識で語った日には猛者(=教授、助教授等)たちの餌食になるからだ。

正に、君主危うきに近寄らず。

『未来少年コナン』も同じ匂いがする。
どこを掘り起こしても何かが出てきそうな嫌な“匂い”だ。

だから、先に言っておく。「ニワカめ」と思っても、暖かい目で見ていただけるとありがたい。

宮崎駿の初監督作品、1978年にNHKにて放送していたTVアニメ『未来少年コナン』。

何かで(多分、鈴木敏夫のラジオで)、『未来少年コナン』を作った後、宮崎駿は「友達なくすからもう監督はしない。絵本作家になる」と言い出したから、「絵本作家は儲からないから、漫画描きなよ」と言って、ナウシカをアニメージュで描くことになった、というエピソードを聞いたことがある。

が、このエピソード、ナウシカは企画を持っていったところ「漫画原作のない映画は作れない」と言われたから、「じゃ、漫画描いちゃえ!」ってことで描いた、という話もあるし。

「友達なくすから」のくだりは1979年に『ルパン三世カリオストロの城』の公開を考えれば、ピンポイントで『未来少年コナン』の話ではないかもだし。

『風の谷のナウシカ』の後、って説もあったな。
トップクラフトを事実上解散させちゃってるし。
でも、お金はそれなりに入ってきたから高畑さんが『柳川堀割物語』撮ってんだしな。

それでお金使いすぎて『天空の城ラピュタ』作ってんだし。

まあ、細かいことはさておき。

『未来少年コナン』です。
傑作ですよ。傑作。

舞台は、超磁力兵器を使った最終戦争後の世界。
たくさんの人が死に、多くの都市が水没し、生き残った人々の生活は一変していた。

不時着した宇宙船の乗組員たちが住み着いた“残され島”に住んでいるのは、乗組員の生き残りである“おじい”と、島で生まれた少年・コナンだけ。

2人きりの生活をしていた、ある日。
島に少女・ラナが漂着した。

彼女はハイハーバーという街で暮らしていたが、祖父であるラオ博士の居場所を探しているインダストリアの兵士に攫われて逃げてきたところだった。

おじいの看病で元気になったラナ。
コナンとも仲良くなり、一緒に島を駆け回れるまでになった頃。

インダストリアの追っ手が、島にやってきてラナを攫ってしまう。

また、その時の傷が原因でおじいは致命傷を負ってしまった。

最後のときを悟ったおじいは、コナンに、島を出て、人がたくさんいるところへ行き、仲間を見つけるように、と伝えて息を引き取った。

1人残されたコナンは、今まで見送ってきた島民たちのお墓におじいを埋葬し、ラナを救うためにインダストリアに向かう決意をし、島を旅立った。


名スタッフ、揃い踏み

原作は、アレグザンダー・ケイの『残された人びと』。

この作品は1970年のもの。
作者のアレグザンダー・ケイはアメリカ合衆国のSFを基調とした児童文学作品を手掛けた。

『未来少年コナン』は1978年にNHKで放送された。全26話。

監督は宮崎駿。
この作品が初監督作品。
この1年後の1979年に『ルパン三世カリオストロの城』が公開されている。

脚本は中野顕彰、吉川惣司、胡桃哲。
中野顕彰は日活の映画の脚本を多く書いている。
吉川惣司は『装甲騎兵ボトムズ』や、『天才バカボン』、『あしたのジョー』等の有名どころを含む多くのアニメ作品に携わっている。

キャラクターデザイン・メカニックデザインは宮崎駿、大塚康生。
大塚康生は言うまでもなく、有名なアニメーター。

元麻薬取締官というぶっ飛んだ経歴の持ち主で、東映動画の一期生。
『白蛇伝』、『太陽の王子 ホルスの大冒険』、『ルパン三世カリオストロの城』、『パンダコパンダ』など、この作品以外にも宮崎駿や高畑勲と作品を作っている。

制作会社は世界名作劇場などを制作した日本アニメーション。

美術監督には山本二三。
『ルパン三世カリオストロの城』から多くのスタジオジブリ作品、最近では『天気の子』まで、有名作品の美術監督・背景を担当している。

原画には『ルパン三世カリオストロの城』の有名なカーチェイスシーンを描いた友永和秀や、『耳をすませば』の監督・近藤喜文の名前もある。

色指定・仕上検査はジブリ作品には必ず名前がある保田道世が担当していた。

尚、演出には高畑勲の名前もある。(9話、10話、7話絵コンテ)

あとは、絵コンテで富野由悠季が参加していた、とか、当時、押井守が新人で本作でレイアウトを学んだ、とか、摩砂雪を始めとするたくさんのアニメーターに影響を与えた、とか、続編の企画が後に『天空の城ラピュタ』、庵野秀明が総監督をした『ふしぎの海のナディア』、『七つの海のティコ』になった、等々。

https://filmarks.com/animes/1374/1825

https://filmarks.com/animes/2996/3790

声の出演は主人公コナンが小原乃梨子。
1番印象的なのは、『ドラえもん』野比のび太役。
torovさんに教えてもらった、この本も次に読む予定。

ラナ役は信澤三惠子。
『魔女の宅急便』のキキの母を演じていた。

ジムシィ役は青木和代。
声優だけでなく、役者としても活躍してる。
『ドラえもん』ジャイアンの母や『ちびまる子ちゃん』ブー太郎の声もこの方。

ダイス役は永井一郎。
……説明いるかな? 『らんま1/2』の八宝斎とか、『YAWARA!』の猪熊滋悟郎とか。
『風の谷のナウシカ』のミトとか、『天空の城ラピュタ』のモウロ将軍とか。

モンスリー役は吉田理保子。
『アルプスの少女ハイジ』のクララ、『ベルサイユのばら』のロザリー。

悪役・レプカ役は家弓家正。
『風の谷のナウシカ』のクロトワ……えっ、クロトワだったの?!

増岡弘さんの名前もある……グッチ役か。
ジャムおじさんとか、2代目亀仙人役とか……ねぇ。

ついでに、冒頭のナレーションは伊武雅刀。

……全部拾い切れたかしら。
拾い残しがあったら、すいません。
素直に謝る。
息切れしそうなほどに、有名スタッフが目白押し……


語りきれない作品

とにかく。
すごいのよ。

何がすごい、って何もかもが。

想像して。
スタジオジブリのアニメーション映画だって2時間から3時間。

でも、『未来少年コナン』はNHKだからみっちり30分。全26話で合計13時間。

しかも、恐ろしいことにストーリーに閑話的なエピソードもなく、 きっちり回収している。

後半ダレることもなく、むしろパワーアップしてる感さえある。
後半、最終兵器・ギガントの登場とか迫力がすごかった。

エピソードも、ダイスの船・バラクーダ号が集める廃棄プラスチックが燃料になる、とか、大地震、津波、と、ドキッとするエピソードも多い。

キャラクターの動きは元になっただけあって『天空の城ラピュタ』とよく似ている。
『風の谷のナウシカ』とは少し違う、緩急はあるものの、少し誇張されたコミカルな動きをしている。

笑ってしまったのは、後半のモンスリー。
ハイハーバーで昔の飼い犬のことを思い出すシーンは、今までの悪役然としていた顔が「ヒロイン顔になってるじゃん!!」と。突然ナウシカみたいになって驚いた。
転機としての演出なんだろうけど、あからさま過ぎる(笑)。

兎にも角にも、面白いし、抑えるべきアニメ作品なのは確かです。
私みたいに人生折り返し地点で抑えるんじゃなくて、もっと早く抑えられる人は抑えた方が良い。

この作品の良し悪し以前に、この後に大きく影響を与えているだけに。

そして、三鷹の森ジブリ美術館では今、『未来少年コナン』展をやっているので、それも見に行きたい。

鉄は熱いうちに打て、って言うじゃない。

あー、でも土日は結構埋まっちゃってるわね。

それにしても、事実を書き起こすだけでこんなにしんどい作品だとは。

やっぱ、安易に触れちゃいけないわね。

この記事が参加している募集

#アニメ感想文

12,480件

よろしければサポートをお願いします。