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涙はいつも、バスの中


﹣まえがき﹣

これは、確かに私の話ですが
心配には及びません。
なので、ひとつの物語として
読んでいただければ幸いです。
誰かの心を救うきっかけになれば
嬉しいなと思って書いております。


救いの場

薬の影響だと思う。
私の心が安定しないのは。
そう思うようにしている。

自分の病気が分かってからは
普通の生活が出来ていない。
このところ、私の一番の目標は
「普通に健康な人のように振る舞う」
ことになっている。

私のことを何も知らない人は
普通に接してくれるから
一時的に、この病気を
忘れることが出来て嬉しいのだ。

だけど、薬の副作用や体調が
残酷に現実を知らせてくるから
結局、心配をかけてしまう。
恥ずかしい思いもするし
相当、迷惑をかけてしまう。


そんな私の心の置き所は
バスの中だ。

バスに乗る。
それも、人の少ない時間を狙って
1番後ろの席、左端。

景色が美しく見えるから
揺れが心地よいから
そして何より

人の目を気にせず
心のままに涙を流せるから

だから、私はその席を選ぶ。

ネガティブ期

無理をしている意識は無くて。
自分の理想や目標に忠実に生きている。

どんなに仲のいい人の前でも
いつも笑って、いつも元気で
人生楽しんでいるように見えて欲しい。
楽しい奴だって思われたい。
この人と一緒にいると楽しいと思われたい。
その為に努力する。がんばる。

それは強がりなんかじゃなくて
少しでも、弱い自分や、醜い自分を
見せてしまった後は、決まって、
何度も何度も後悔してしまうから。

何であんなこと言ってしまったんだとか
何であんな態度をとってしまったんだと
それはそれは辛く思い悩む。
その悩みは、私の心を大きく支配して
楽しいはずの事も楽しめなくなる。
信じられる仲間をも疑いはじめ、
かなり身勝手な被害妄想が広がる。


私ばっかり…
私だけが…
私のせいで…
どうして…


そしてそれは私が
「楽しそうに振る舞わなかったからだ」
「一緒にいて楽しいと思われない事をしたのだ」
と、自分の言動を責めてしまい
苦しい、辛い、もう私はダメな人間だ、
となってしまう。

そんな精神状態が危険なのは、重々承知している。
私の主治医に相談すべきだと
そう言われてしまうだろうとも思う。

だけど、もう薬はうんざり。
ただでさえ、たくさん薬を飲んでいる。
毎日、毎朝、毎晩、それが10年続く。
先日、さらに期間が伸びてしまった。
耐えられない。
増えても伸びても欲しくない。

どこかに、逃げてしまいたい。
もう、許して欲しい。
頑張ることに、疲れてしまった。


当然ながら、そんな気持ちでは何も
解決もしないし、吐き出す勇気も無く、
ただ、ジクジクと心は血に滲み
強がる方法だけ、どんどん上手くなる。
心の繕い方だけ、どんどん上達する。

人にも、自分にも、やさしく

そう、そんな私にちょうどいい、バスの中。
1人で、流れる涙に身を任せながら
景色を眺めてみる。
辛い気持ちに浸ってみる。
バスの中で泣けることが
私の、大きな大きな救いになっている。

この経験が、この悩みが
いつか誰かの心を救えるような
そんな人間になる為のものなら
甘んじて受け入れてみようと
次第に、思えるようになる。

身勝手で被害妄想で間違いでいい。
くるしいよ、つらいよ、私、可哀想だよ、と
泣いていい時間。


涙は心を救う。
泣ける場所を作って欲しい。
決して嬉しい幸せな涙で無くていい。
「可哀想な自分」を慰めるだけでいい。
例え間違っていたとしても
あなたは間違っていないよと
自分で自分を慰めて欲しい。


たまたま、私はバスだけど
どこだっていいと思う。
自分を甘やかす場所を
探してみてほしい。

今日も私は、バスに乗る。
左端の1番後ろに座って
心ゆくまで涙を流したら
降りる頃には、また
普通の人間に戻れるんだ。


ᴛʜᴀɴᴋ ʏᴏᴜ☽꙳⋆
月波イロ

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