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2024年05月26日の日記 問い/水中の哲学者たち

木下龍也の詩の中で一番好きな詩。

生きてみることが答えになるような問いを抱えて生きていこうね

問いを自分の生に接続させる大胆さと、末尾の「ね」が醸し出すどことなく緩い感じ。このアンバランスさが好きだ。とにかく存在していることを無条件に肯定するでもなく、問いが介入することで積極的に生を肯定しているような感じがする。

生きることが答えとは一体なんだろう?生きることによって何かが達成されるのか。しかし、達成は答えではない感じがする。

それ自体を考えることこそが生きていくことに他ならないということなのかもしれない。考えることは生きていなければ達成できず、難解な問いに答えを導き出すためには考えて考えて、とにかく生きまくらなければならない。

永井玲衣『水中の哲学者たち』を読み終えた。

以前日記で哲学対話のことを書いたけれど、それを実践し続けているのが著者の永井さんという哲学者だ。

本書は著者のエッセイ集となっている。哲学対話のことなどが書いてあるが、著者自身もとにかく問いをとにかく抱えていることが記される。

わかる、はわからない。
わからないことはわからない。わかることもわからない。わかろうとしてわからなくて、どうしたらいいのかもわからない。
社会のしくみがわからない。他者がわからない。親も、友だちも、先生も、何なのかよくわからない。言葉もわからないし、世界がよくわからない。自分もよくわからない。
とにかく生まれて、とにかく言葉を覚えて、とにかく働いている。たまに考えたり、話したり、聞いたりして、そして混乱している。

52p

実際、哲学対話に行ったときも彼女は自身を「わからない」として名乗っていた。ニックネームとして。スマホの背面には「わからない」と書かれた文字があった。

しかし、わからなさに絶望して蓋をすることはせず、考えることをやめない。

だから、たとえ問いに打ちひしがれても、それでも問いとともに生きつづけることを、わたしは哲学と呼びたい。哲学は、慣れ親しんでいる世界を粉砕し、驚きをあたえ、生を不安にさせて役目を終えるのではない。息切れをして、地上に倒れてもいい。心細くなって、頭を抱えてもいい。それでも、ひとびとと、問いとともに生きることをやめないことだ。

116p

自分と他者との間には絶対的な隔絶がある。誰一人としてあなたのことを完全にわかることはできない。それでも、わかろうと努めることはできる。永遠に辿り着けないとわかっていても、答えのような、つながりのようなものが水面に反射する眩い光のようにときどき見え隠れする。

誰も「わかる」とは言わない。わたしたちは互いに誰一人わかりあうことはできない。そのことを、誰もがわかっている。その事実が、わたしたちをやわらかくつなぐ。
わたしはあなたの苦しみを理解しない。あなたのかなしみを永遠に理解しない。だから、共に考えることができる。彼女の涙が、しんしんと降り注いで、気がつけばわたしたちは水中にいる。共に息を止めて、深く潜って、集中する。

わたしたちはバラバラで、同じ海の中でつながっている。

60p

考えることは、同様に考えている人と同じ意味の海に沈潜することだ。そして自由で、変容をもたらす、揺らぎのような何かだ。

だから、考え続けよう。いつか答えが出ることを信じて、生き続けるしかない。

…ということで、かなり内容としては面白く読めた。だれでもおすすめできる本。

神保町に行き、また本を買いまくった。

果たして読めるのか⁉️という感じだけど…。頑張っていくしかないわね。
また軽く紹介しちゃうね。

R・ハルワニ『愛・セックス・結婚の哲学』

愛・セックス・結婚、大事すぎるゥ〜と思って買った。
こちらページ数にして500頁越え、かつ、本文が二段組みということでめちゃくちゃ重厚な本になっている。

重厚なわりには語り口はやさしい感じで、ですます調で構成されている。バチェロレッテの新シーズンが始まるので、それまでには読んでおきたい。

現代思想「特集 〈友情〉の現在」

友情って大事だよなァ〜!と思って買った。

ユリイカ「特集 わたしたちの散歩」

安定のユリイカ。表紙がめっちゃいい。
一介のフラヌールとして散歩にまつわる本はできるだけ買うことにしている。けっこう内容はよさそう。

散歩がテーマの本となると、散歩の価値を現状追認するだけのつまらないものがあったりするが(散歩が思索に良いとか、知っとんねんこっちは)、ユリイカには新しい散歩の価値みたいなものを提示してくれることを期待している。

サラ・ベイクウェル『実存主義者のカフェにて』

永井玲衣さんサルトル好き&この本に帯文を書いているということで、『水中の哲学者』に続く一冊として購入した。面白かったらいいな。

(2024/05/26)

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