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コロナ後遺症③(軽症・8か月後)

COVID-19の後遺症を8か月まで長期にフォローアップした研究があったのでご紹介。

方法

2020年4月~5月にかけて、スウェーデンのとある病院に勤務する医療従事者を対象として研究を開始(従事者4375人のうち、2000人の参加が目標)。参加時点で「2020年1月からCOVID-19を疑う11の症状がなかったか」を調査。あった場合には、軽症か重症かも回答する。参加時点と4か月ごとに血液検査し、新型コロナウイルスのスパイク蛋白に対するIgG抗体を測定。8か月目の最終フォローアップで23個の症状の有無・持続期間(<2か月、≧2か月、≧4か月、≧8か月)・程度(軽症・中等症・重症)を調査。

除外基準:参加時点で抗体陽性だった人のうち、COVID-19の症状が重症だったと回答した人。参加時点で抗体陰性だった人のうち、フォローアップ中に抗体陽性となった人。

結果

2149人が参加に同意。393人が抗体陽性だったが、50人は重症COVID-19の症状を経験していたため除外され、20人はフォローアップ中に脱落した。1756人が抗体陰性だったが、そのうち404人がフォローアップ中に抗体陽転化して除外され、280人がフォローアップ中に脱落した。最終的に抗体陽性323人と抗体陰性1072人が解析対象となった。

中等度~重症の症状が2か月以上も続いたのは、抗体陽性者の26%、抗体陰性者の9%。中等度~重症の症状が8か月以上も続いたのは、抗体陽性者の15%、抗体陰性者の3%だった。8か月以上の症状の中でも多かったのは嗅覚障害(9.0% vs. 0.1%)、味覚障害(3.7% vs. 0.1%)、疲労(4.0% vs. 1.5%)、呼吸困難(1.9% vs. 0.3%)だった。

コメント

やや試験デザインが分かりにくいが、この研究では試験を開始した時点で抗体が陽性の人を既感染者と見立てて、8か月間のフォローアップを行いCOVID-19による長期的な症状を調べている。(補足資料によれば、なんと研究期間中は参加した医療従事者たちはPCR検査が利用できなかった)

まだワクチンが始まる前の時期において医療従事者2100人中400人近くがCOVID-19に既感染というだけでも日本とは事情が異なり驚いてしまうが、感染者数をコントロールできなかった反面、研究の場としては感染者が多いため適しているという皮肉がある。

以前のオランダのオンラインアンケートとは、同じ軽症COVID-19を対象としているにも関わらず後遺症の頻度がかなり異なる。あちらは研究デザインの問題によって症状の頻度を過大評価しやすいため、こちらの研究の方が実情をとらえている可能性がある。更に抗体によってCOVID-19感染をとらえており、フォローアップ期間も長いという長所もある。

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