「ポリアモリー」と「誠実」

　「ポリアモリー」と「誠実」の関係についていろんな意見が流れてきたのを興味深く拝見し、自分の考えを整理したくなった。

　モノアモラス(一人としか恋愛関係にならない性質という意味)でノンモノガミー(モノガミー規範に縛られないという意味)である私がポリアモラス(複数と同時に恋愛関係になる性質という意味)な人とお付き合いするにあたって求める誠実さというのは、「自分が複数の人と付き合う人間であるということを隠さない(そのことについて噓をつかない・交際相手を騙さない)」ということに尽きると思っている。

　もちろん、人の誠実さはそれ以外にも様々な場面で問われるものだし、それですべてオッケーって話ではなく、関係における誠実は日々積み上げていくものだ。でも、自分が複数の人間を好きになる(あるいは既に誰かと付き合っているとか既婚であるとか)ということを隠したり、その点について嘘をついたり相手を騙したり(意図的でなくても)するのは明らかに「不誠実」だと思う。逆に、たとえば誰かから「交際している人(恋人)はいますか？」みたいに尋ねられた時に躊躇せず「三人いますよ」とか答えられる人は、少なくとも最も基本となるところでは「誠実」であると私は感じる。

　人間関係を円滑にするための罪なき嘘には寛容な方がいいと私は考えているけれど、最低限そこは嘘をつかないというのはそんなに難しい話じゃないし、そこだけは絶対嘘ついたらダメなところだろう。
　「ポリアモリー」が誠実かどうかというのはその先にある話だ。
　
　自分が複数愛者であるという点について、交際相手(交際しようと思う相手)に嘘をつかないことが、個人と個人が出会って関係が構築されていく中で実践される「ポリアモリー」と「浮気・不倫」を分ける絶対条件であり、決定的な違いとなる。

　前提として、複数愛者であることを伝えて、相手方もそれに同意した上で関係を始めるならば、同意するかしないかは本人の選択であり、自らの選択から生じる結果は自分で引き受けるべきものなので、そこにはそもそも浮気や不倫といった言葉は当てはまるはずもなく、そして最低限それさえできていれば、実践の中でうまくいかないことがあっても、その関係の中に幸せじゃない人がいたとしても「ポリアモリー」と呼んで差し支えないし、「誠実」と言っていいんじゃないかというのが私の考え。
　
　だから私は「ポリアモリーと浮気・不倫は違う」という説を支持する。
　また、ポリアモリーが複数恋愛に対する同意を前提とした関係である以上、ポリアモリーは私が考える「基本的な誠実」があった上ではじめて成り立つものであるので、「ポリアモリー」と「誠実」は、私の中ではイコールで結ばれる。
　
　だからといって「ポリアモリーの本質は誠実であること」とか言われると私にはちょっと違和感があるし、「誠実を掲げることはポリアモラスな人々の為にならないのでは？」「いや、誠実でなければポリアモリーが社会に受け入れられないのでは？」というような議論を見ると、(どっちも一理あるねぇ)、というのが感想であり、もうちょっと正直に言えば(どっちでもよくない？)と思っている。