アイラブユー
「2人で夜空を見上げてね、
隣にいる人が言うの
『月がきれいですね』って。」
「ほう。そしたら君はなんて言うの?」
「そしたらわたしは
『月は、ずっときれいでしたよ』
って言うの。月は、のあとは
3秒くらい時間をあけるの」
「なるほどね。でもそれじゃあ、
以前から好きだったわけじゃない
相手ならどうする?」
「それは考えてなかったな。
困った、なんて言おう」
「『あなたと一緒に見ているから』なんて
どうかな」
「それじゃあ、ありきたりだよ。
そう、たとえば『手を伸ばせば届きそうですね』というのは?」
「ああそれはいい。手を伸ばしてほしい気持ちを
奥ゆかしく伝えられる」
「でしょ。でもやっぱり
前から好きだった人の方がいいね。
月の重みが違うよ」
「それじゃあ断るときはどうするの?」
「そんなの想定してないよ。月は好きな人と見るものでしょう?まあいいや、お断りしないといけないなら、そうだなぁ、、『手が届かないから綺麗なんでしょうね』なんてのはどうかな」
「うーん、なんだか急に偉そうだよ。
だって自分のことを手が届かない存在だって
言っちゃってるんだから」
「たしかにそうだね。わかった、それなら
『わたしには、よく見えません』だ」
「シンプルだけど伝わるね」
「でももしお断りしなきゃならないような
相手なら、きっとわたしは
月が綺麗だという発言を、
言葉通りに受け取ると思うな」
「気づかないふりか、それなら
相手も傷つかないかもね。
君は本当に他人を傷つけるのが苦手なんだ」
「そうよ。他人を傷つけるとわたしも傷つくの。
持ち手のないナイフみたいにね。
あ、ほら、見て、月がとても綺麗よ」
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