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君は、実は宇宙人なんだよ


と、その人は言った。
わたしは眠い目を擦りながら
「ふうん、それで?」とぶっきらぼうに言った。

「地球を守ってもらわなければならない」
と、その人は言った。
よく見るととてもきれいな男の人だ。
20歳にも、40歳にも見えるような
不思議な雰囲気を持っていた。

「あいにくですが、わたしは
地球を守れるような人間じゃありません。
30年も生きているのに、まだこれっぽっちも
生きるコツが掴めてないんです。
なんの取り柄もなく、
この先70歳か80歳くらいまで
退屈な人生を送る予定なんです。
さあもう帰ってくださいな」

現実でもこれくらいはっきりと
話せたらいいのに。
夢の中でわたしは強気だ。

きれいな男の人は少し困ったような
哀れむような笑顔をわたしに向けていた。
「さぞかし生きづらかっただろう。
だってあなたはこの星の生まれでは
ないんだからね。つまり宇宙人なんだよ。
まあ見方を変えてみれば地球人も
宇宙人ということになるけどね。
とにかく、君は地球目線で言うと
宇宙人なのです」

「じゃあわたしは一体どこの誰なわけ?」

「地球から比較的近い30光年ほど先にある
ツナード星だ。君はツナード星人なんだよ。」

30光年が近いのかどうかピンとこなかったけど
わたしは自分がツナード星人だという事実を
受け入れることにした。
だってわたしは地球にうんざりしていたから。
街はうるさいし、馬鹿な人間ばかりが権力を
持っている。みんな口を開けば愚痴ばかり。
わたしはいつも息苦しかった。
いや、生き苦しかった。
仕方ないから生きてきたけれど。
地球人じゃないというなら納得だ。
この星はわたしの肌に合わない。

「そ。じゃあわたしを故郷の星に
連れてってよ」
もうこんな星に未練はないんだから。

「それはもう少しあとになるでしょう。
君は地球を守らねばならない」
きれいな男の人はそう言って微笑んだ。



朝になる。
「またこの夢か、、、、」

何度も何度もこの夢を見る。
わたしは宇宙人で、地球を守らなければ
ならないという、この夢を。

朝起きれば、退屈で平凡な地球人のわたしが
ここにいる。


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