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月今宵さみしきひとの抱くうさぎ

2022/10/12(水)NHK文化センター 俳句講座に投句した四句の中の一句。岸本先生の入選、講座参加者1名の方より選いただきました。当季雑詠、季語は「月今宵」。「名月」の傍題です。
【学びポイント】
表現したい内容に合った季語を選ぼう。
【解説】
この「うさぎ」は、ペットとして飼われているうさぎなので、季語ではありません。(狩猟の対象である「兎/野兎」は冬の季語です。食べて美味しいのが冬なので、冬の季語とされています。)
岸本先生から、「季語がしっくりはまっている句」と評していただきました。同じ意味でも「名月や」では強すぎるし、ましてや「満月や」でもない、「月今宵」という季語の風情がこの一句にピッタリである、と。
「月」は「雪」「花」と並ぶ大きな季語であり、古来あまたの詩人俳人を魅了してきました。光、色、温度、質感、などの違う「月」の季語、それこそ数限りなく存在するのではないかと思う中で、「さみしき人の抱くうさぎ」に呼応してくれる優しい月の季語はどれだろうかと、探しました。私の中でこれだと思った季語が、岸本先生にも似合っていると評をいただけたので、たいそう嬉しく思いました。
岸本先生の御句には、季重なりが多いと思います。これについて先生から「季語には大きく二つあります」というご説明がありました。「俳句専用の語」と「日常会話の中に在る語」。「普通の語」ともおっしゃいました。「月」と「花」とを一句に詠みこむのはあまりよろしくないけれども、もっと力の弱い季語を強い季語といっしょに詠むのはさほど問題がない、というお考えだそうです。今回の句会に先生が投句された中に、季語が三つ入っている一句がありましたが、その三つの中の一つが大変力の強い季語なので、季重なりでも良いのだそうです。
たしかに、先生の句集『雲は友』を拝読しても、季重なりはまったく気になりません。必要だからその語が詠まれている、という感覚です。ここでもやはりバランスが重要なのだということでしょう。十七音に配して違和感のないバランスでの季重なり。その境地に至るまでにはまだまだ道が遠そうです。

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