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バロンてふ黒猫の守(も)る薔薇の園

2013年4月に愛媛新聞カルチャースクール俳句講座(講師:夏井いつき)で投句した作の推敲句です。元句は
 バロンてふ黒猫衛(まも)る春の園

当時はまだ初級者クラスにいて、そこに大先輩俳人・Dさんがゲスト的に参加され、この句の動詞について言及してくださいました。Dさんは元句の「衛(まも)る」は他動詞である、だから「バロンという名前の黒猫『を』春の園が護っている」という意味になる、と教えてくださったんです。
作者としては、園が黒猫を護るのではなく、黒猫が園を護っている意味で詠んだつもりでした。

早速推敲。主格の助詞「の」を補って、動詞を「守(も)る」に変更しました。護(まも)るだと、中八になってしまうので。
 バロンてふ黒猫の守(も)る薔薇の園
この句に【特選】いただきました。

実景・・・近所のバラ園にいつも黒猫・バロンが居て、園を護っているように思えたんですよね。きりっとしたイケメンならぬイケにゃん・バロン。これは彼へのご挨拶句でした。動詞の問題をD先輩にご指摘いただくことで、自身の意図通りの句意に直せました。先輩のご指摘・ご助言、ありがたし。

句会において、私は文法とか語の意味とか、細かいことに言及することが多い方だと思います。それはなぜかと言うと、この体験があったから、なんですよ。他動詞というご指摘をいただかなかったら、自身では気づけなかったと思います。

俳句という表現の精度を上げて行こうと思った時、文法や語の用法は大変重要なのですけれども、句会でそういうのを嫌う方は案外多いみたいです。最初に「文法等の誤り指摘はご法度」と釘を刺される句会もあります。場の空気が悪くなる、というご判断でしょうか。そういうスタンスで俳句を楽しんでおられることに異を唱えるつもりはありません。

俳句の楽しみ方は人それぞれです。私のスタンスは厳格過ぎると考える方もおられるでしょう。それはそれでかまいません。他者の意見や指摘を聞き入れる耳と心を持ち合わせているかどうか、そこに向上のヒントがあると思うんですがね。

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