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鵜ノ巣断崖撫で上げ山瀬吹き募る

一句一遊『やませ』第2週金曜日、天そば!で読まれました。季語は「やませ」山瀬風、山背風、などとも言われる「夏に北海道から東北地方に吹く冷たい北東風」のことです。親潮の上を吹き渡ってくるため、海霧を伴う冷たい風となり、日照不足と低温が農作物の生育不良をもたらします。
このお題が出た時、夏の東北地方や北海道に行ったことのない私は、WEB検索し、動画視聴、気象情報や地形、東北・北海道の産業への影響を調べる、など、できる限りの手段で「やませ」を実感しようとしました。その過程で岩手県下閉伊郡田野畑村に鵜の巣断崖という景勝地があることを知りました。
ものすごい断崖絶壁です。崖の中腹には鵜が営巣するとか。画像で見ても切り立った崖の上から海を見下ろすと、恐ろしいであろうことが想像されます。この崖の向こうの海から、真っ白な海霧を伴う冷たい風が吹いてくるのです。崖を吹きあがってくるのです。
やませの動画を見ていると、風速はさほど速くない気がしました。ゆっくりゆっくり田畑や家々を白い霧が包み始めて、ゆっくりゆっくりあたりに満ちていく、これが「やませ」だと思いました。とにかく長期に渡って吹くのだ、と。ヴァーチャル吟行ではありますが、私なりの実感を言葉に変換したい・・・。
一般に、一句に動詞を複数入れて詠むことは推奨されません。なんなら用言(形容詞、形容動詞、動詞)がない方がいい、とまで言われるくらいです。しかし、この句においては崖を吹きあがってくるやませが長期に渡って吹き続けることを伝えたいと私は思っていました。だから「撫で上げる」「吹き募る」と複合動詞を二つも使いました。しかも擬人化ともとれる「撫で上げる」これがいいかどうか、かなり迷いましたが・・・。えいっと投句した結果は金曜日!
固有名詞(地名)を使ったこと、複合動詞を二つ入れたこと、一物仕立ての句にしたこと、今回の私の挑戦は、成功した、ということで。
それにしても、一句一遊の金曜日に読まれる句のすばらしいこと!麦のパパさん↓が聞き書きしてくださってます。何度も読み返したいですね。
https://note.com/muginopapa/

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