愛知県教育委員公開パワハラ発言に対する抗議文


 2022年7月5日、IRIS代表名で、愛知県の飯田靖教育長宛に次の抗議文を提出しました。

<以下本文>

 今年3月28日、私たちが愛知県教育委員会に提出した請願の審査が定例会において行われました。その請願についての口頭陳述を行うため、定例会の場に私がIRISを代表して出席しました。

 口頭陳述の冒頭、請願提出に至った経緯を説明するため、私と部活動との関わりについて述べる箇所がありました。その中で私は、不本意ながら部活動に従事させられた経験を取り上げた上で、「初任者としての、社会人としての大切なスタートの時間を奪われた」「人生の10年間を部活によって奪われた」と述べました。

 これに対し委員の一人が、次のように発言しました。

「請願者の「自分の10年を奪われた」という言葉にショックを受けた。子供たちが教師からそのような言葉を投げつけられたときに何を思うのか。」

 「10年間を部活によって奪われた」というのは、私自身が人生を振り返ったときに出てきた率直な思いです。評価をする前に、まず、受け止めていただきたかったです。教育委員の方々を信頼してありのままを話したのに、頭から否定されたことにショックを受けました。

 誓って申し上げますが、これまで受け持ってきた児童生徒に対し、部活動のマイナス面を強調するような発言をしたり、自分が部活動の被害者だなどと語ったりしたことはありません。自分の思いと、教員としての言動との間には明確な線引きをしています。それは教員としての専門職性の一部であり矜持だと考えています。

 今回の発言も、口頭陳述者として、教育委員の前だからこそ行ったものです。それなのに、子どもの前でも同じように発言する人物であるかのようにみなされたことは心外です。とりわけ、「投げつける」という表現を使われたことがショックでした。

 規則により、傍聴者は委員の発言に抗議したり質問したりすることはできません。そのように、こちらからの反論が封じられた中で、教育委員が一方的に陳述者の発言を非難することは、一種の公開パワハラです。会場には、教育委員以外にも県の幹部や他の傍聴者など数十名がいました。貴職をはじめ、看過した他の教育委員の責任も問われます。

 市民が勇気を出して公の場に立ち、自分の思いを語っているのに、請願の中身ではなく市民の考えについて批判的に論評する行為。たしかに教育委員会の場では自由闊達な議論が認められるべきですが、このような行為が横行すると、市民としては、口頭陳述をすることにためらいを感じてしまいます。ひいては、請願の提出そのものに及び腰になってしまうおそれがあります。教育委員に自由闊達な議論が認められるのであれば、市民にもまた、人格を傷つけられることなく自由に思いを語る権利が保障されるべきです。

 この件に関し、IRISでは貴職および当該教育委員との面談を求めましたが、「会議における委員の発言について個別に面談の場を設定することは考えていない」との理由で、面談を断るという決定を事務局から伝えられました。

 教育委員には、請願の内容について自由に発言する権利があります。請願の内容に関する発言であれば、たとえ私たちの考えとは大きく異なるものであっても、面談を求めることまではしません。しかし、請願者の人格を傷つけ、教員を侮辱するような発言を行う自由は教育委員にもありません。そのような発言は、教育委員としての職責の範囲外で行われた行為であり、教育委員個人として、被害者と真摯に向き合う責任があります。もし教育委員の立場で行った発言であるならばなおさら、公人として、被害者に面と向き合い、撤回と謝罪をすべきです。

 本日私たちは、組合員のほか、私たちの呼びかけに応じてくれた有志参加者とともに、西庁舎南側路上にて横断幕を掲げながら、拡声器を使ってこの抗議文と同様の内容を読み上げました。ちょうど教育委員会室で定例会が行われていた時間帯ですが、貴職に私たちの声が届いたでしょうか。

 この抗議活動を行うにあたり、私たちは全国の教員から、部活動に苦しめられてきた経験談を募りました。「#部活に人生を奪われた」というハッシュタグでツイッターに投稿された声の中には、「部活動のせいで4月頭から7月末まで120連勤で死にたいと思ったことがある」とか、「抑鬱状態と診断された翌日に保護者会と称した顧問糾弾会を、夜9時まで開かれた。弱っていた私は何も言い返せずにただ謝るしか無かった。終わってからトイレで吐いた。」といった、悲痛な叫びが多数ありました。

 学校教育は子どものために行われるものですが、担い手である教員がいなければ成立しません。子どもの視点に立っていないからという理由で、教員の訴えには耳を傾けず、ただ子どものことだけを考えるよう教員に求める姿勢では、教育を本当によくすることはできません。教員が自分の人生を犠牲にしなければ成り立たないような学校教育は間違っています。それを正すのはあなたたち教育委員の責任です。県知事に対し、全国最低レベルの愛知県の教育予算を大幅に増額するよう要求してください。子どもの思い、教員の思い、その両方を受け止めて、教育予算増額を県知事に要求してください。今、教育に必要なのはお金です。やりがいも、熱意も、もう十分です。足りないのはお金です。日本有数の財政力を誇る愛知県の教育予算が全国最低レベルだと子どもたちが知ったら、子どもたちはどう思うでしょうか。私に子どもの思いを問うのではなく、あなたたちこそ子どもの思いを想像し、あなたたちがなすべきことを行ってください。

 最後に、次のことを強く訴えたいと思います。

  • 愛知県教育委員会は、教員の思いに耳を傾けろ!

  • 愛知県教育委員会は、請願者の人格を傷つけるな!

  • 公開パワハラを行った教育委員は、発言を撤回し謝罪しろ!

  • 愛知県教育委員会は、顧問をやらない権利を全教員に保障し、部活動で苦しむ教員をなくせ!

  • 愛知県教育委員会は、愛知の財政力に見合った教育予算の大幅な増額を県知事に要求しろ!

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