「美術展」ヴァロットン展と佐伯祐三展を観に行った感想。
三菱一号館美術館のヴァロットン黒と白と東京ステーションギャラリーの自画像としての風景・佐伯祐三の2つの展覧会が近くで開催されていたので同日に観覧。ヴァロットン展は、奥さんが行きたかった展示で、佐伯祐三展は、僕が行きたかった展示。ヴァロットンは、19世紀のパリでの社会運動を写真の様な手法で版画で表現。印象派の作家やロートレックみたいに街の人々のスナップを版画で記録していた。それもすごくセンスの良い線で白黒で表現していた。観る側が楽しめる仕掛けが至る所に散りばめられていて、観覧者を飽きさせない見せ方だった。佐伯祐三の絵も、同じ時期のパリを油絵で描いたもの。街のポスターに魅せられて、ポスターの前を通り過ぎる急ぎ足の女性など動きが秀逸。エドワードマネが描いたパリの街を彷彿とさせる。家族で渡仏し、パリで作品を描いている最中に、結核を患い、亡くなった事で、命をかけて描いたと紹介されていたが、展示を観て感じたのは、とにかく好きな建物や寺院などのモチーフに出会うと、他の事は忘れて、何枚も何枚も納得いくまで描く人だったのだろう。自分自身、ロンドンの街で写真を撮り始めて1年が経った頃に佐伯祐三のパリの絵に出会った。僕もモチーフで少し朽ちた美しい造形のモノに惹かれるので、時間を超えて話せたら、盛り上がるだろうなと勝手に想像した。ヴァロットンの観る側を飽きさせない展示と比べると、作品の持つ魅力は、とても大きいのに、チラシからは、佐伯祐三を知らない人にはこの凄さが届かないし、展示のキャプションの言葉が説明に終始し、魅力を伝えるまでには至っていなかった。
姉の家で捨てられていた蟹をゴミから拾い30分で描きあげた「蟹」のキャプションは良かった。蟹の文章を思い出して、もう一度絵を見に行くほどでした。
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