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タコ部屋 in the foot

伊豆見工業は人夫出しの会社なので、「3人ほしい」と言われれば派遣する所長は昔から手配師で 横浜の寿町によくいたらしい。伊豆見工業は長年 静岡の清水にある虹見ケミカルという会社の人夫として現場にでていた。虹見ケミカルはライニング会社でプラントのタンクの製造や補修 高速道路の継ぎ目のセラミック補修 中央分離帯の補修 橋脚の耐震工事・高速の規制など請け負っていた

清水に初めて行ったのは小4の遠足以来 早朝 東名高速を高速道路維持作業車のステッカーと黄色いパトランプを付け 150kmでぶっ飛ばして一時間半で到着する。150km出そうが160km出そうが誰も何も言わず 朝コンビニで買った漫画ゴラクを読んでるか寝てるかである。大型トラックが煽ってきても絶対退かないたちの悪い高速道路維持作業車。

虹見ケミカルは住宅街の中にあり 1000㎡くらいの敷地に、事務所 倉庫 作業場 駐車場があり、番犬の犬が二匹いた。以前会社でBBQをやった時 自由人が故お金に縁遠い新人の家族も来て ワンワン鳴く犬に小学生の子どもが「食っちまうぞ」と言い放った。本気だとおもった。虹見ケミカルの社員は5・6人いて他は我々と同じ人夫会社の外注が3社ほどある。他の社も虹見ケミカルの社員がいなくても現場を収められる技術はあるので所々 監督が来て進行状況を確認する。電動工具や車両・重機は虹見ケミカルが用意する 僕たちは腰袋と玄能とラジェット等・ヘルメットだけが持ち物だ。訳も分からず言われたことだけやる新人の僕は、その日 橋脚の周りをかこんだ二段のビケ足場を解体する。青野さんが「ダイスケ 足場のブレス片方だけ外せ」と言ったので足場板の下にある足場の揺れを防ぐクロスしたブレスを片方外した。僕が足場から離れた事を確認して、青野さんはポンッと足場の端を蹴っ飛ばした するとドミノ倒しのようにバタバタ倒れ始めた 音はパタパタとドミノのようなものではなく、ガシャガシャガッシャーーーンと事故のような感じであったその時はこんな解体の仕方もあるのかと関心したが、今はあんなの絶対ないと分別がつく

仕事が終わり清水の作業員宿泊用のアパートに向かう そこは普通のアパートで隣は普通の家族だったり同棲してる恋人だったりがいるアパートの一室を伊豆見工業の社員の寝泊まり用に虹見ケミカルが借りている。間取りは2LDK、先発部隊の4人がいて合流するのが4人合わせて8人のおじさんの園まだ、あったことのない人もいるので不安だった。扉を開けると案の定カオス据えた匂いがお決まりの男所帯、先発の4人は一部屋に移動してくれて、もう一部屋は整頓されてたが、6畳におじさん4人は動きがとれない。先発部隊は3人しか見えず、もう一人いるはずなんだけどなと思っていたら、奥の押し入れから初老の二枚目の男性が僕に向かって「どうも ありゃ こんな若い人が」と言って顔をのぞかせた この人もサクセスストーリーから今にいたるよく若い頃の話を聞いた愛すべき久慈さんである。


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