見出し画像

タコ部屋 in the foot

高校を中退して勤めては辞めを繰り返し 未来の宛先も無いから目の前の歪な踊りに目を奪われる、その度僕も歪んで揺れていた。自分の姿がかすみ始め消える道が救いの道となったが、最後は母の愛情への渇望が勝った。子どものまま夜逃げして伊豆見工業に拾ってもらって二年が経った 母から手紙が届いた。内容は心配しているがあなたの考えを尊重するわと否定するものではなかったし、同級生の父親の会社だし、居場所が分かれば問題はないということだろう。口外しないように言ったが母に伝えてくれた人物に感謝している。夜逃げする前日 実家の母を尋ね「一生懸命がんばってるのに上手くいかない」と漏らし今にいたる。

二年経ち 僕は22歳  高速道路の規制のやり方も覚え一通りこなせる作業員になっていた。高速道路の安全確認の重要性は、路肩に作業車を止め 車線変更の標識を担いで 青野さんが持った一般車に作業中と警告する黄色い旗を振りながらタイミングを図り中央分離帯までダッシュしてガードレールに標識を取り付ける作業をしていれば、嫌でもわかる。視野が狭いドライバーが多いこと多いこと。

僕らは恵那山トンネルの中にいた。壁に取り付けられた劣化した板を取り外す、恵那山トンネルの下りは8489m お昼にパーキングのトイレの鏡で煤けた顔を見て、中は排気ガスが充満してるのがわかった。規制は長距離になった伊豆見工業と虹見ケミカルともう一社で取り外し作業を行う、それぞれの持場で作業に取り掛かる 恵那山トンネルは薄暗く 投光器を付け、削り機で壁を解体する 発電機を台車に載せコロコロ押しながら前へと進む 陽の光は見えない暗い筒

伊豆見工業と虹見ケミカルともう一社のY社 伊豆見工業のように専属で虹見ケミカルに来ていた会社 親族経営で伊豆見工業よりこういった仕事は浅く、手際は遅い感じがした。以前虹見ケミカルの社員が、電動工具がたびたび無くなる 最後に使ったY社を疑っていた。トンネル工事にY社が連れてきたバイト、小太りの金髪 年は僕と同じくらいで愛想は無い 高速道路の工事に経験があるのかわからなかっが、必ず工事が開始される前に新規入場とちょっとした安全講習があり何度も聞いている僕たちには当たり前の話だが慣れを正す為に必要な時間、金髪の彼もその場にいた。トンネル工事の3日目 現場が慌ただしくなった工事がストップし僕たちは現場から離脱する。詰め所に戻るとY社の金髪の彼がトンネル内で一般車と接触事故を起こしたという

次回「金髪の逃避行」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?