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用途地域指定・土地区画整理事業計画決定の処分性

1 「処分」の定義
 公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの(ごみ焼却所設置事件,百選Ⅱ148)
①公権力性
 ②外部性,個別具体性,法効果性
 +α 権利救済の実効性(土地区画整理事業計画事件,百選Ⅱ152)

2 用途地域指定の処分性(百選Ⅱ153)

 都市計画区域内において工業地域を指定する決定は,「当該地域内の土地所有者等に建築基準法新たな制約を課し,その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できない」。しかし,その効果は,
「あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけるのと同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず,このような効果を生ずることだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして,これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。」→処分性を否定

・個別具体性,法効果性が問題となった。
・原則として,地域指定は「一般的抽象的」な行為であって,その対象は「不特定多数の者」である。
・用途地域指定の後に続く手続(後続手続)がなく,指定のみで完結する。

3 土地区画整理事業計画決定の処分性(百選Ⅱ152)

 土地区画整理事業計画の決定の公告があると,換地処分の公告日まで土地形質の変更等にあたって都道府県知事の許可が必要となり,これに反したら原状回復命令ができ,この命令に反したら刑罰が科される。
 「施行地区域内の宅地所有者等」は,当該事業計画の決定によって「前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされる」。つまり,「法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり」,「法的効果が一般的,抽象的なものにすぎないということはできない」。→個別具体性,法効果性を肯定

 換地処分を対象とした取消訴訟を提起できるが,換地処分がされた段階では工事も進んでおり,換地計画も具体的に定められているなどしており,「その時点で事業計画の違法を理由に当該換地処分を取り消した場合には,事業全体に著しい混乱をもたらすことになりかねない」ため,「事情判決(行政事件訴訟法31条1項)がされる可能性が相当程度あるのであり,換地処分等がされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても」「権利侵害に対する救済が十分に果たされるとは言い難い」。「実効的な権利救済を図るためには」,事業計画決定の段階で「これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性がある」。→実効的な権利救済を重視
→処分性を肯定

・青写真判決(事業計画は整理事業の青写真にすぎない,換地処分段階で取消訴訟を提起すればよい)を変更した。
・非完結型であることが用途地域指定事件と異なる。「計画決定」→「換地処分」という流れがある。後続手続との密接性が強いのが特徴。
・実効的な権利救済を重視。先行行為の段階(計画決定段階)で個別具体性(紛争の成熟性)が認められるとした。

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