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【刑法】放火罪の知識まとめ

0 用語について
・「放火」…目的物の焼損を惹起させる行為
・「焼損」…目的物が独立して燃焼を継続し得る状態になること(独立燃焼説)
・「人」…犯人のこと
※居住者を皆殺しにした場合,居住者の放火の同意がある場合は「非現住」となる。
※建造物の一個性は,物理的一体性(構造的一体性)で見るが,これは延焼可能性を前提としているため,延焼可能性がないのであれば一個性が否定される。機能的一体性も考慮すべき(人の方から火に近づいてしまうため)。

1 現住建造物等放火罪(108条)
未遂・予備あり

2 非現住建造物等放火罪(109条)
(1)他人所有非現住建造物等放火罪(1項)未遂・予備あり

(2)自己所有非現住建造物等放火罪(2項)
公共の危険が発生しないと処罰されない

3 建造物等以外放火罪(110条)
公共の危険が発生しないと処罰されない(「よって公共の危険を生じさせた」)
(1)他人所有建造物等以外放火罪(1項)

(2)自己所有建造物等以外放火罪(2項)

4 延焼罪(111条)
自己所有非現住建造物等放火罪」または「自己所有建造物等以外放火罪」を犯し,現住建造物等(108条)または他人所有非現住建造物等(109条1項)に延焼させたとき成立。

5 未遂(112条),予備(113条)
「現住建造物等放火罪」「他人所有非現住建造物放火罪」にのみ成立する。
→「未遂・予備は条文前二つ」と覚えておく。

6 消化妨害罪(114条)
・「火災の際」に妨害しないと成立しない。
→前もって消火用の物を隠匿しても成立しない。

7 差押え等に係る自己所有物に関する特例(115条)
・自己所有非現住建造物等または自己所有建造物等以外であったとしても,それが差押え,物権負担,賃貸,配偶者居住権設定,保険に付したものであるときは,他人所有として扱う。

8 失火罪(116条)
・失火により,現住建造物等(108条)または他人所有非現住建造物等(109条1項)を焼損した場合に成立する。
・失火により,自己所有非現住建造物等(109条2項)または建造物等以外(110条)を焼損して,「よって公共の危険を生じさせたもの」も同様とする。

9 罪数
・住居侵入と放火→牽連犯
・住居者殺害後に放火→殺人と放火の併合
・保険金目的で放火後,保険金詐取→放火と詐欺の併合(判例)
・居住者殺害目的で放火→観念競(下級審)

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