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 先日、自室を掃除していた際に、ある思い出深い一冊の本が出てきました。

 『宇宙人のしゅくだい』(1981年 講談社 あおい鳥文庫)

 日本の著名なSF作家で、代表作に『日本沈没』や『首都消失』(1985年)、『復活の日』などがある小松左京氏による児童文学作品集です。

 その最初に収録されている「宇宙人のしゅくだい」という作品の中では、ある少女が宇宙船に連れていかれ、「争いをやめない人類もろとも地球を破壊してしまおうか」と宇宙人に問われます。

 その少女は彼らに

 「ちょっとまって! わたしたちがおとなになったら、きっと戦争のない星にして、地球をもっともっと、たいせつにするわ……。」

 と答え、宇宙人はその少女が大人になるまで待つことにするという内容です。

 あれから約40年が経ちました。もしその少女が再度宇宙船に連れて行かれたら

 「君が大人になるまで待ってみたが、やはり状況は変わらないな。やはり地球を破壊することにしたよ」

 と言われてしまいそうです。

  現在開催されているパリ・オリンピックにおいてSNSを通じての誹謗中傷が問題となっています。

 私たちは誰かと争うことで、自分自身を定義してきました。それは社会における「勝ち組」・「負け組」という無意味な価値基準を作り出し、その結果、様々な怒りを生み出します。

 21世紀は「人権の世紀」と呼ばれています。不必要な競争社会というシステムの中から脱却し、一人ひとりが自分らしさを持って、有意義な生活を送ること。今はまだ過渡期だからこそ、様々な問題が起こりますが、私はこの「人権」という感覚が、40年前のしゅくだいを解決するキーワードなのではないかと思っています。

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