note: そしての言い換え

「そして」は接続関係が曖昧なので、論文では使わない方がいいと言われた。ではどうするのか。自分の文章にあった「そして」を眺めてみて、どう言い換えられそうかを書き出してみた。

*言い換えのレパートリー

消す

順接的に文章が並ぶのでなくてもいいが、何かあったほうが柔らかいから入っているだけの「そして」は消すことができる。
例「女性の教育や就職の機会が少なく、女性一人で家計を支えられるような職業に就くのは困難である。そして、法制度も女性を支援してくれない。」

「加えて」「更に」「また」

同じようなものを並べている 「A, B, そしてC」みたいなのは、加えての気持ちのことが多い。なくてもいい。
例「この問題は、まず適応的選好についての議論が共有した適応的選好の典型例を他の選好と区別できるかという問題であり、そして問題がある適応的選好の中でもその問題性の程度や質を区別できるかという問題である。」→「加えて」
例「アンは自律的な行為者である。そして、アンは才能があり働き者の科学者である。」→「アンは自律的な行為者である。また、アンは才能があり働き者の科学者である。」

「その後」「その次に」「最終的に」

時間的な継続性を示しているときや、それを少し強調しているとき。「次に」っぽいけど、「まず」と対応させるよりも、「引き続き」の感じが強いとき。
例「以上で、関係的自律の議論が局所的自律と全般的自律を区別してきたこととその動機を説明し、射程軸と時間軸を区別することでこの区別をより明確にした。そして、適応的選好の議論とこの区別の関連を示した上で、本稿の射程を単一の自律性に限定することを説明、正当化した。」→「関係的自律の議論が局所的自律と全般的自律を区別してきたこととその動機を説明し、射程軸と時間軸を分けることでこの区別をより明確にした。その上で、局所的自律と全般的自律の区別と適応的選好の議論の関連を示し、本稿の射程を単一の自律性に限定することを説明、正当化した」に変更。実質的には、一文の改変を行ったという類型に近い。

「次に」

上の類型だが「まず、〜〜。そして、〜〜。」という文章を書いている部分がままにあった。これは「まず」と対応させる。

「この〜」「このように」

前の内容を受けて続ける場合には、「この」のような近接する指示語を用いることもできる。自分の文章を見てみると「そして、この〜」というフレーズも多いので、これは「そして」を消す。また、時間や空間の継続を表す「そして」も「この状況において」「このとき」などに言い換えられる。
例「関係的自律論では、自律的な態度や主体の形成過程に構成的にせよ因果的にせよ関係的条件が自律性に重要な仕方で影響すると考える。そして、関係的条件は、行為者内在的な条件というよりも行為者外在的な条件である。」→「この関係的条件は……」
例「そして、関係的自律論は、この点について、見解を分かつことができる。」→「この対比点について、関係的自律論はいずれの見解も採り得る。」

「よって」「それゆえ」「それによって」

順接で、もう少し論理展開がある場合には、それを明確にするような言葉にする。

「つまり」

あまりやっていないが、まとめ的な文章の頭においているときには、言い換えやまとめの語句に言い換える。

「対して」「しかしながら」

自分でも驚いたが、対比の場面でも「そして」を用いていることがあった。大きい説明の中ではひとまとまりで、その中の小さい説明の中での対比のときにやりがちだと気がついた。(文学的な文章だと、「そして」で対比をする新鮮さもある気がするが、論文ではやめようと思った。)
例「つまり、ある心的態度が自律的であるには、その態度について他の人から説明の要求や問い直しを受けたときにそれに応えることができなければならない。そして、深く従属的な行為者は、このような問い直しに直面すると自分の理由を応答できない。」

*言い換えが難しい「そして」

ちょっとした強調

強く強調するほどではないが、ちょっと強調したいときに使う「そして」は言い換えが難しいと感じた。勇気を持って消すか。勇気を持って「特に」や「重要なのは、〜〜〜ということだ。」などで明確に強調するか。
例「要は、個人がどのような選択肢を持つのかは、その人が置かれた社会や時代、人間関係などの影響を受ける。そして、できないことを望むよりも、できることに甘んじるようになる。」
例「他の何ものでもなく、まさに自分のものである意思に自らが従うということが真正性であり、これは自律の重要なモチーフの一つである。そして、他者からの介入や侵害を自律という観点から批判する理論的資源の一つにもなっている。」→「特に他者からの…….」に変更。

言い換えよりも、改変

単に「そして」の言い換えや削除ではうまくいかないときは、「そして」が必要ないように一文や段落の改変を行うと、明確になる。

「ただし」

前文の延長線上の内容だが、一段劣ったり、補足的だったりする情報を続けている場合がある。「ただし」に言い換えた方がいいかもと思う文章は、文章ごと消すか、注送りにすることを検討してもいい。

主語の継続

二つの文章で主語が継続する場面で、「そして」を入れがち。これは、文章は長くなるが、一文にすべきなのか?
例「特に、女性や子ども、認知的な障害を持つ人や、差別を受ける人々は、伝統的な自律性の条件を満たさず、自律的ではないとされてきた。そして、それゆえにプライバシーへの保護を奪われてパターナリスティックな介入を受けたり、自身の意思表明を有効なものとして尊重されなかったりするという扱いを受けてきた。」→「自律的ではないとされ、それゆえにプライバシーへの保護を奪われてパターナリスティックな介入を受けたり」と一文にした。








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