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Anil Madhavapeddy et al. : Unikernels : Library Operating Systems for The Cloud

ACM ASPLOS (2013)

杉木章義(北海道大学情報基盤センター)

※本記事のPDFは情報処理学会電子図書館に掲載されており、情報処理学会会員は無料で閲覧できます。(http://id.nii.ac.jp/1001/00207243/

OS 研究の不思議

 オペレーティングシステム(OS)やシステムソフトウェアの研究者は一体何の研究をしているのだろうか? と疑問を抱かれるのではないかと思う.OS は依然として脆弱性などの問題を抱えており,アプリケーションソフトウェアから見れば,OS の設計や実装は枯れていて,特に大きく進歩しているようにも思えない.しかしながら,OS の世界では,新しいアーキテクチャの検討が進行中である.

クラウド時代のライブラリOS

 ライブラリOS は,モノリシックカーネルやマイクロカーネルに次ぐ,新しいOS 設計の模索である.その特徴は,OSをライブラリとしてアプリケーションに組み込み,単体でマシン起動可能とする点である(図-1).

図

図-1 OS 設計の比較

 ライブラリOS 自体はまったく新しい概念ではない.1990 年代のExokernel やNemesis など古くからあるアイディアである.今回紹介するUnikernelに代表される研究が画期的なのは,クラウドコンピューティングが広く普及したので,仮想化ハイパーバイザの存在を仮定する点である.クラウドの時代においては,仮想マシンの作成や破棄が容易となり,アプリケーションごとに仮想マシンを立ち上げることも簡単である.また,従来のライブラリOS の大きな弱点であったさまざまなハードウェアのサポートも,仮想マシンの中ではエミュレートされた仮想デバイスとして標準化されているため,大きな問題とはならない.

 本論文のUnikernel,そのプロトタイプ実装としてのMirageOS は,まさにクラウド時代のライブラリOS である.また,単一アドレス空間上でライブラリOS とアプリケーションをリンクし,マシン起動可能としたものにUnikernel と名付け,専門用語として広めたのも著者らの貢献であると言える.

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