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プログラミングについて英語で話すコツ ー ドットインストールのサンプルビデオを例に「ミニマム英語」の話し方を解説

本noteのマガジン、『英語でプログラミング学習』では、英語で解説されたJavaScriptチュートリアルを使ってプログラミング英語の紹介をしていきました。

今回のnoteでは逆に、日本語で解説されたプログラミングのチュートリアルを使って、プログラミングの文脈での英語表現方法を解説していきます。

サンプルはドットインストールで無料公開されているチュートリアルを利用してみます。皆さんが講師になって同じような内容を英語で解説するとしたらどうしますか?というシミュレーションを考えてみてください。

翻訳ではなくあくまで”説明”してください

方法としては、

ステップ1:まずはざっとビデオを見る
    ✓ 全体の内容がどのようなものかを把握する
ステップ2:先頭に戻って一文づつ聞く
   ✓ ここで自分なりに英語でどう言うかを考える
   ✓ 書き起こし(有料です)の文章を見ながら考える
   ✓ 考える時間は10秒以内。その後すぐにしゃべり始める
   ✓ できれば書き出してみる

ここで最も重要なのは、日本語をうまく翻訳することではなく、日本語が伝えたい内容が視聴者に伝わるかどうかです。例えば、

ここにJavaScriptのコードを書くには、SCRIPT要素が必要となってきます。

とある場合、英語に詰まってしまう方はこんなことを頭の中で考えているのではないでしょうか。

「えーと、「書く」はwriteでしょ。でも「~するために」ってtoを使うんだっけ? 「必要」はneed、でも「なってきます」ってどうするの?come? でも全体的にどう文章を始めたらいいのかな…」

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これがいわゆる”翻訳作業”です。一度にドバっと英語にしようとするのはとても難しいことです。それよりもこう考えてください。

聞き手が「SCRIPTタグを入れて、そこにコードを書くのね」と理解できればいいのだな。

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そのために伝えるポイントは2つ。

① SCRIPT要素を入れてね
② そこにコードを書く

だとしたら簡単にこう言えばよいはずです。

「SCRIPT要素を入れて、そこにコードを書いてください」

今回の英語のトレーニングでは、話のポイントを伝えるのが第一目的です。日本語の細かい表現をすべて英語にするようなことは避けます。考える時間が10秒しかないので、詳細な翻訳作業をしているような時間はないはずです。

翻訳の表現:In order to write JavaScript code here, you need a SCRIP element.

ミニマムの表現:You put a SCRIPT element and write JavaScript code there.
(SCRIPT要素を入れて、そこにJavaScriptコードを書きます)

なぜ「ミニマム英語」が必要か

ITの現場で働く方の中で、普段から英語を一生懸命勉強されている人はたくさんいると思います。実際に電話やテレビ会議、あるいは出張や海外駐在で実践的に英語を使う方も多いでしょう。でも皆さんが一様に感じるのは、いざ英語を話そうとするとうまく話せないということではないでしょうか。例えTOEICで900点以上取って海外で仕事を始めた方でも、現地に行くととんでもなく英語ができない人間に成り下がってしまうという話はしょっちゅう耳にします。

これはいくつも理由がありますが、最も重要なポイントはスピードなのです。TOEIC900点取る人は、じっくり英作文をやらせるととてもうまくできるのでしょう。でも現場ではその「じっくり」という時間は一切ありません。メールでもチャットでも会議でも、ものすごいスピードでコミュニケーションが進みます。一瞬の間に自分の考えを整えて話す力がない限り、全くそのスピードにはついていけません。「とんでもなく英語ができない人間」になるのはそのためです。

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自分の現在の英語力で話せる「ミニマム英語」を把握しよう

今回日本語のチュートリアルビデオを使って皆さんに理解してほしいのは、現在の英語力でどの程度対応できるかです。

まず固有名詞ですが、これは知っていないとどうにもならないケースが多いので、一応皆さんプログラミングには興味をお持ちだという前提で、例えば「要素」をelementと言うというような基礎用語は理解しているという前提とします。

その上で、特にポイントの絞り方と動詞の使い方に絞って「ミニマム英語力」を高める方法を解説していきます。ビデオでの各日本語表現に対して、どうやって頭の中の日本語を簡単にすれば「自分が話せる英語」を思いつくかというコツを理解していきます。

それでは「プロフィールサイトを作ってみよう」というサンプルビデオを使って解説を始めていきます。このビデオは「文字起こし」のデータも公開されているコンテンツです。内容的にはあまりコーディングに直結する内容とはなっていませんが、「ミニマム英語」の解説に重点を当てて各文章をどうやったら「話せる英語」にできるかを説明していきます。

ポイント1:全部伝えようとするから英語が話せない!

まずは冒頭の文章です。

「このレッスンでは、こうしたポートフォリオサイトを作りながら HTML という言語について学んでいきましょう。」

まず重要なのは、この日本語をどう英語にするかを考えないことです。英語を勉強しているとどうしても単語やフレーズ、慣用句などに気を取られがちですが、それが英語がなかなかうまく話せない阻害要因になっていることに気が付いてください。

まずは、言いたいことが伝わればそれで十分だという考えに切り替えてください。そのために話のポイントをまずは理解します。つまり「どう話すか」ではなく「何を話すか」です

【ミニマムポイント】
① ここではHTML言語について学ぶ
② やり方はポートフォリオサイトを作っていくこと

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まず①のポイントは、「このレッスンでは、ビデオを見ている人はHTMLについて学習する」ということです。「~しましょう」という言い回しを見てすぐにLet'sに飛びつくかもしれません。

In this lesson, let's learn HTML.

でも、みなさんが「講師」、聞いている人が「生徒」という関係を考えると、「生徒であるあなたは~することになります」としてYouを使う表現も考えてみてください。

In this lesson, you'll learn (you will learn) HTML. 

ここで「HTMLTという言語について」という表現を英語にしようとすると詰まります。「~という」って英語でどう言う?などと考えているとどんどんとスピードが遅くなってきます。先ほど説明した2つのポイントさえ言えればそれで十分だと考えると、余計な枝葉を落とすことができます。

ポイント2:「ミニマム英語」は小学生相手に話すつもりで言うと浮かんでくる!

そこで2つ目のポイント「 やり方はポートフォリオサイトを作っていくこと」です。ここも「…サイトを作りながら」の”ながら”に詰まりそうです。でもポイントそのものは「HTMLを学ぶんだけど、そのためにポートフォリオサイトを作ります」ということ。想像してみてください。生徒がみな小学生だとしたら先生はどんな言い方しますか?ちょっと荒っぽいですが、こんな言い方もありますよね。

「はい、いいですか?これからHTMLを勉強するよ。ポートフォリオサイトを作っていくからね!」

もちろん固有名詞は小学生には伝わりませんが、言い方としてこんな風に「短く、短く話す」スタイルですよね。それで十分なんです。

であればストレートにこう言えばよいのではないですか?

【ミニマム英語】
In this lesson, you'll learn HTML and create a portfolio site like this. 
このレッスンでは、HTMLを学習し、このようなポートフォリオサイトを作っていきます。

これだったらなんとか英語で言える気がしませんか?

日本語を英語に翻訳しようと考えていたらこんな英語表現にはなりませんが、日本語で伝えようとしていることだけを英語で言ってみるとしたらこれで十分です。本来なら「作りながら」をthrough(~を通して)を使って次のように言うと日本語の意味がストレートに表現できると思います。

In this lesson, you'll learn HTML through creating a portfolio site like this. 
このレッスンでは、このようなポートフォリオサイトの作成を通してHTMLを学習していきます。

ただ、これを捻り出すのに時間がかかるくらいなら、ミニマム英語をさらっと言ったほうが英語のコミュニケーションとしてはずっとスムーズなのです。

「英語がうまくしゃべれない」と悩んでいる方、まずは頭の中に”はびこる”複雑でこなれた日本語から離れることがとても重要だということに気づいてください。

機械翻訳には注意が必要!

ところでこの日本語を機械翻訳はどう処理するのでしょうか。

In this lesson, let's learn about the language HTML while creating these portfolio sites. [Google]

In this lesson, you'll learn about the language of HTML while creating these portfolio sites. [Bing]

Goggle翻訳もBing翻訳も「~しながら」をwhile creatingとしています。whileは「~している間」という意味ですが、次のような時に使います。

パスタをゆでながら玉ねぎを切るよ。
I'll cut onions while boiling pasta.

この「ながら」というのは「同時並行で」という意味ですよね。でも先の文章は「サイトを作ると同時にHTMLを学ぶ」ではなく、「サイトを作ることを通してHTMLを学ぶ」ということです。機械翻訳は深層学習によって飛躍的に文脈を考慮した高度な訳出をするようになったといっても、ここまで細かく文脈を理解するわけではありません。「ながら」をwhileで訳す確率が高い限り、ほぼ毎回同じ訳出をします。英語表現を学習する上で機械翻訳は便利なツールですが、こういった点には注意して使ってみて下さい。

ポイント3:情報さえ抜けていなければ通じる!

では次の文章です。

アイコンと名前があって、作品紹介に続いてフッターがあるようなシンプルなサイトですね。

これを見て多くの方はこんな感じで英語を考えたと思います。

「アイコンと名前があって…」はThere is an icon and a name...か? あれ? 二つあるから Trhere are かな。「続いて」ってどう言うんだろう? 「ような」はlike? ... 😒

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日本語に惑わされるとこうなります。先ほどのポイントで説明した通り、まずは「ミニマムポイント」が何かを考えます

【ミニマムポイント】
① サイトがシンプルなものだ
② アイコンと名前、次いで作品紹介、その下にフッターがある。

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まずはサイトがシンプルであることを言います。

It's a simple site. 
シンプルなサイトです。

あとはそのサイトにどんな要素があるかをwithを使って続けます。

It's a simple site with an icon and a name...
アイコンと名前があるシンプルなサイトです。

 そこで問題の「作品紹介に続いて」ですが、サイトの冒頭にアイコンと名前があって、その下に作品紹介の部分があるということを言いたいわけですが、そもそもビデオでサイトのイメージが紹介されているので、ここも詳しく説明する必要はありません。ただ単に「作品」あるいは「作品情報」と列挙するだけで十分です。

【ミニマム英語】
It's a simple site with an icon, a name, work information and a footer. 
アイコンと名前、作品情報、フッターがあるシンプルなサイトです。

アイコン、名前、作品情報、フッターという要素さえ列挙できれば、その位置関係などは重要なポイントではありません。この文章はit's a simple siteと言うだけでほぼ完了です。極端に言えば、It's a simple site like this! と言っただけでも十分伝わります。

機械翻訳を見てみましょう。

It's a simple site with an icon and a name, followed by a work introduction and a footer.[Google]

例の「続いて」をfollowed byと忠実に表現しています。

ポイント4:基本動詞で表現する

この次の文章は長い言い回しになっています。

なお、このようなサイトをインターネット上に公開するには、また別の勉強が必要になるのですが、今回のレッスンではまずはこうした画面を作れるようになるところまでを扱っていきたいと思います。

これをドバっと一気に英語にしようとすると頭がパンクします。こういう時こそ「ミニマムポイント」を考えることが有効です。

【ミニマムポイント】
① インターネットにサイトを置くのは難しい
② ここではサイトを作ることまでやる。

最初のポイントは文章の前半の部分です。まずここでひっかかりそうなのが「公開する」という動詞。どういいますか? Openですか?それって動詞でしたっけ? 「開ける」という意味はあるけど「公開」という意味はある?

「公開する」というのはインターネットに自分が作ったサイトを「置く」ということです。サイトがあればネットではだれもが閲覧することができるようになります。つまりそれが「公開する」の意味です。

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If you want to put the site on the Internet, you'll need to learn a lot more. 
サイトをインターネットに置くにはもっといろんなことを学ぶ必要があります。

難しい動詞が出てきたら、まずは基本動詞で表現できるか考えてみて下さい。基本動詞には、do, get, give, take, have, make, put, go, see, lookなど頻出するものがあり、「公開する」のような特定の意味であっても簡単に言い換えられるケースがかなりあります。拙著『ITエンジニアが覚えておきたい英語動詞30』では基本動詞だけで様々な表現ができることを詳しく解説していますので是非参考にしてみてください。

さて、動詞は簡単なputで表現していますが、文章自体は長いです。さらっと話せる人はよいのですが、もっとミニマムな言い方を考えてみましょう。「いろんなことを勉強しないといけない」ということは一言で言うと「難しい」ということ。ならばこれで通用します。

【ミニマム英語】
It's very hard to put your site on the Internet.
サイトをインターネットに置くのは結構難しい。

これを使えばこういえます。

It's very hard to put your site on the Internet. In this lessen, you'll just create a site like this. 
皆さんのサイトをインターネットに置くのは結構難しいことです。このレッスンでは、このようなサイトを作成することだけをやってみます。

では機械翻訳の結果をみてみましょう。

In order to publish such a site on the Internet, another study is required, but in this lesson, I would like to begin by covering the areas where you can create such a screen. [Google]

In order to publish such a site on the Internet, it will be necessary to study another, in this lesson I would like to deal with the point where you can make such a screen first. [Bing]

「公開する」はpublishです。実際話すときにも、この動詞が分かっていればそのまま使えばよいです。ただ、後半のところで「勉強する」はそのままstudy、画面はscreenとなっているのは仕方ないかもしれません。実際には「勉強する」はlearn、「画面」というのは「このようなサイトのデザイン」という意味で使っている言葉なので、単純にsiteとすればよいでしょう。

あえて長い英語で言えばこんな表現が考えられます。

If you want to publish your site on the Internet, you'll need to learn so many thing. But in this lessen, you'll just learn how to create a site like this. 
作ったサイトをインターネットで公開するには多くのことを勉強しないといけません。でもこのレッスンでは、このようなサイトを作る方法を学ぶにとどめておきます。

まとめ

解説が長くなりましたが、「ミニマム英語」のアプローチについては別の拙著『ITエンジニアの英語術』でさらに詳しく解説しています。

皆さんの現在の英語力でももっと話すことができるようになるノウハウが詰まっているので是非とも参考にしてください。


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