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弁当屋、弾丸引越しの裏側

引越しの効果は絶大

あっという間に、キッチンの引越しから1ヶ月が経ちました。結論から言うと、

めっちゃ順調。

『広いってだけでこんなに違うのか』と、ちょっと驚いています。実は今回の引越しにあたって設備の追加はフライヤーと瞬間冷凍機が一機ずつだけ。しかもサブとして使うだけの小型の物。

before とにかく狭い…
after 駐車場も広い!

スタッフも1人増えましたが、常時の稼働人数はあまり変わってません。でも体感としては倍以上早い!

今まで昼11時までかかってギリ配達だったのが、10時前に余裕で終わる。おかげで夜まで常に溜まっていた洗い場もパートさんの勤務時間内に片付けられ明日の準備まで出来る。明らかにケアレスミスも激減しました。むしろ何故今までやれてたのか不思議…。

分かってはいたけど、弁当製造においての『スペース』の重要性を改めて感じています。

弁当製造と飲食店の大きな違いは『作ってすぐ提供しない』という事。

【飲食の場合】
①調理、盛り付け
②客席に提供
③食べ終わったら片付け

【弁当屋の場合】
①調理
②バットに広げて冷却
③数十食毎に並べて盛り込み
④梱包し一旦保管
⑤配達時間順に出荷

冷却、盛り付、そして配達するにも、とにかく場所をとる。盛り付け1つにしても今までは100食なら、30食ずつ盛り付けては片付けを繰り返すかなり非効率な作業をしてました。今は1回で並べられる!泣ける。

なんで急遽引越し?

旧キッチンを作ってから7年。段々受注が増えて、いづれは移転か予約制限かという話はずっと出ていました。

では、何故それが急遽移転を決行する事になったのか。それは予約注文の『急激な』増加。予定ではジワジワと伸ばしてタイミング良く手を打つつもりだったんです。

でも昨年6月あたりから、コロナの期間はほぼゼロだった土日の大量注文が戻り出した。10食以内だった会議弁当も30食になり、コロナ前の需要が戻ってる!?慌ててコロナ使用になっていた作業を見直しながら1年。

やっと混乱が改善し始めた頃、80〜100単位だった注文が200、300単位に。月に1回だった会社さんが月3回30食ずつ頼んでくれる。何なら来月分まで予約。みるみる埋まる予約表。あっという間に無くなる食材、資材の在庫。発注が間に合わない。

え、何か怖い…。コロナ前ってこんなだった?

毎年、計画に沿って伸ばしている年間売り上げの伸び率も1.5倍のスピード。3年間、細くつないできた顧客や撒いてきた種が一気に育った感じ。

あまりに急遽で正直、予約を精査・判断する余裕も無かった。このままでは大きなミスがおこる。今、話題にもなっていますが弁当業は一度のミスが命とり。気をつけていても余裕の無さが温度や鮮度の管理ミスに繋がる。明日は我が身です。

決断しないといけない。普通に考えたら予約制限が妥当。ただ、それだと採算的にも毎日限界まで受注した状況を続ける事になる。カツカツまで詰め込んだら融通が効かない。

今、メインになっている企業や団体、公共施設等の予約において弁当に求められるのは『機能』。栄養的な意味ではなく、利便性の意味で。大人数になる程人数の増減はギリギリまである。好みもバラバラ。予算は決まっててそれより安くても高くても困る。めっちゃ美味しい事よりも、そういう都合に対応してくれ、とにかく注文から配達までスムーズに済んで皆んなが食べられる内容が良い。毎日の注文を聞いていると

・当日雨天キャンセルは出来る?
・当日朝10個追加、又は10個減るがあるかも
・急に明日100個必要!

こういった対応が出来る店が必要とされている。企業や団体では10個しか必要ない日も100個いる日もある。そのどちらの日にも嫌な顔せず対応するには設備の余白と予約の増減を吸収できる販売ルートを確保する必要がある(無人販売、産直など委託販売)。販売ルートを確保し続けるには常に納品し続けないといけない。移転前は予約でスペースや時間がカツカツで納品が止まりがちでした。

どんなに美味しくても融通の効かない店は利用頻度が下がる。つまり先細る。

さらに自分達の感覚としては個人向けの消費はしばらく厳しい。コロナの経験後、消費者はお金にも時間にもシビアになった気がする。食事にかける予算も例外はない。そんな中で同じお金と時間を使うなら弁当より飲食店。しかもクオリティの高い店を厳選して特別な日に。物価高騰の影響もあり中食にしろ外食にしろ日常にかけるコストは必要最小限。だとすると、飲食も弁当も中間層はチョイスされない。

残るは社会的需要。会社や団体での社会活動の中で目的を持って集まるシーンの舞台装置としての弁当。とはいえ、どんなに頑張っても企業弁当のベースは数万食規模の大手弁当屋。融通の効く機能性が無くては『例年通り』と『付き合い』がものを言う企業、団体案件には食い込めない。多分うちが今の弁当業で残るには旧キッチンなら5年。しかも細りながら。その段階になったら次の手も打てない。

怖っ!まだ40代前なのに。

なら延命の為には移転しかない!しかも一発アウトのミスが起こる前に!というわけで今回の決行となりました。社会の変化は早く、まだまだ経験も浅い自分達。この選択が正解かも分からない。分からないなりに『状況が変われば急いで合わせる』を繰り返して行くしか無い。

新キッチンが快適で安心しちゃいそうになるけどまだまだ採算は未知数。気を引き締めないと。

何とか切り抜けたいなぁ。



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